ショートショート人狼2投稿作品
祝福
徒名草
「こんにちは。お久しぶりです。お義父さん、お義母さん。」
―お腹、かなり大きくなったわねぇ。
「もう臨月です…。とても元気なんですよ。」
―大丈夫なのか?母さんの時よりも、だいぶ大きいが…。
「双子だってさ。しばらく体調を崩してて、なかなかこっちに来られなかったけど、もう大丈夫だって。」
『そうそう!僕たちもお母さんが元気になるように、ちゃーんと
頑張ったんだから!』
『お前はただ暴れていただけだろ。』
『そんなことないもん!大人しくしてると、お母さん泣きそうに
なるから、大丈夫だよって励ましていたんだもん!』
『はーい。分かった分かった。』
―産まれたら、どんな子に育つか楽しみだなぁ。
―そうですねぇ。お父さんみたいに頑固にならないといいですねぇ。
「産まれたら、またしばらく来られなくなるけど、落ち着いたら、ちょくちょく顔を見せに来るよ。」
―それは楽しみだ。その時には、全員集まった家族写真を撮りたかった
なぁ。
「絶対に…絶対に、赤ちゃんの顔…、見せ来ます!ううっ…。」
「泣くな…。父さんたちが心配するだろう?きっと、父さんと母さんは、俺たちの傍で笑顔で見守ってくれているよ…。」
―そうよ。こちらは大丈夫ですからね。あなたは赤ちゃんを無事に産む
ことだけを考えないと…。でも、そうねぇ、一度だけでも赤ちゃん
を抱いてみたかったわねぇ。
「わたし……、わたし、お義母さんに、赤ちゃんを抱いてもらいたかっ
た!」
「そうだな…。母さんも本当に楽しみにしていたからな…。」
「いたっ!今、赤ちゃんがお腹を蹴ったわ。」
「赤ちゃんも、元気を出せって言っているんだろう。ほら、涙を拭いて。」
『蹴るならもうちょっと優しくやれよ。お母さん痛そうだったぞ?』
『こんな時はこのくらいやった方が良いんだって。』
「それじゃ、今日は少し肌寒いし、ここらへんで帰るよ。父さんと母さんが酔っ払いの車から庇って守ってくれた命、絶対に俺が守ってみせるから。」
若い夫は真新しい墓石の前から立ち上がり、立って拝む妻の身体を優しく抱き寄せる。互いに届かない柔らかな言葉の数々を、舞い散る桜の花びらが優しく包み込んでいった。
(終)
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ーあとがきー
若夫婦には互いの声、亡くなった老夫婦と妻のお腹の中にいる双子には若夫婦の声しか届いていません。お互いに想いあっているのに、もうその声は届かない。そんな悲しくも優しい風景を「徒名草」の別名を持つ桜の木の視点から書きました。
ー感想ー
今回のショートショート人狼のテーマ「祝」に沿って書きました。1600字以内ということだったけど、800字程度しか書いていない気がします。(汗)
でも、これくらい短い方が読む方もストレスもないのであっさりした感じに仕上げました。
内容的に私の好み全開なので、作者当ては割とわかりやすかったかなぁと思いきや、前作のショートショートのせい(?)で意外と当てられていませんでした。私も他の作品の作者当ては4つしか当たりませんでしたが……。
普段、小説を書くようなことはほとんどしない方なので、この「ショートショート人狼」で創作の機会を与えてくれたぷんさんに感謝します!
また、「パンドラの人狼」や「マーダーミステリー」作りもですが、あまりハードルを上げすぎることなく、気軽に創作できて、仲間から気軽に感想やアドバイスを言い合える大分のみんなに感謝です!!
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