ミントの葉

 暖かくなったので、ミントを育て始めた。

 母からもらった苗と、ネットショッピングで買った種を育てている。
 初めての栽培。まだ数日しか共に過ごしていないが、植物の強さには驚かされる。室内に置いておくと、窓の方へひょろひょろと茎を伸ばしていく。少しの水しかないのに、頼りないながらも着実に背を伸ばす様子に、健気と言うより少し不気味な心地がしたのは、私の生きる力が弱まっているからだろうか。

 考えてみれば、自然界とはかくも厳しいものなのだろう。育たねば、死ぬ。彼らの懸命な成長の裏には、そのような文字通り決死の覚悟がある。
 のほほんと生きている私たちに、自然は時に激烈な喝を入れる。自然は我々の想定を超えて生命を危機に晒す。

 それでも小さな鉢に植えられた、小さな緑に、ほんわりと心が癒される。不思議なものである。緑は目に優しく、すくすくと育つ姿は愛おしい。外に出してみると、一層青々と葉っぱを広げて帰ってくる。凄いなあ、可愛いなあ、なんて、甥っ子姪っ子の成長を見守る叔母さんのような気持ちになる。
 自然を慈しみ、自然と共に生きる、そんな生き方が好きだ。

 大きく育ったら、夏にはジントニックに入れて飲みたい。自然の恵みを楽しみに待つ私は、縄文の時代から変わらないのかもしれない。

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