艶歌から見る光輝族③ ~Winter Tri-Angels編~

※この記事は、作成者の独断と偏見に基づく解釈・考察であり、公式とは一切関係ありません。

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★Tri-Angel▽Signal

 これまで蘭丸とチルカの艶歌について考察をしてきたのでシメはウィントラです。
 Fairy蘭丸の最終話放送の2日後、私は数名のフォロワーとチルカと蘭丸について、熱の冷めぬうちにあれやこれやと語り合い、謎や可能性の多いまま物語を終えたこの二人について考察をしました。
 その際に、Tri-Angel▽Signalについても考察したのですが、皆様お気づきでしょうか。この歌の歌詞は、シリウスが歌っている部分は白百合に向けて、ベテルギウスが歌っている部分はシリウスに向けて、二人が歌っている部分は互いに互いの想い人に向けて、歌っていることを。

愛は蜃気楼 掴めないオーロラ
なのに何故どうして 僕に幻想(ゆめ)を魅せるの

Tri-Angel▽Signal 作詞:hotaru

 こちらはシリウスのソロパートです。幻想(ゆめ)とはなにか。「たった一人を心の底から愛し、愛されたい」と言っていたシリウスの願いですね。でもその願いは叶わなかった。だから愛は蜃気楼で、掴めないオーロラです。信じさせて期待させたのに何故どうして、と歌う、とても切なく感じます。

君も蜃気楼 移ろいゆく心
なのに何故どうして 思い出を刻んだの

Tri-Angel▽Signal 作詞:hotaru

 対するこちらはベテルギウスのソロパートです。まるで前述のシリウスパートに被せるかのように「君も蜃気楼」と歌っています。移ろいゆく心とは、最初は三人で仲良くやっていた、あるいは、自分のことを相棒として特別に思っていてくれたのに一人の女性に心を奪われたシリウスのことを示しているのでしょうか。心変わりし、永遠の愛はくれないのに、どうして思い出を刻んだの、と。こちらも非常に切ない。「思い出」は、本編では描かれていない部分の二人の時間のことかと思います。愛憎SAGAの歌詞解釈からも察するに、二人の間にもまた特別な絆があったのだと推測できます。

寒い夜に 熱いメロディー
瞬く僕を 見つけてよ

Tri-Angel▽Signal 作詞:hotaru

だからDancin' dancin' all the nights
今宵宇宙を切り裂き
君だけに放つよ トライアングルのシグナル
Lovin' Lovin' forever
銀河の彼方だって
この光届けよう 誓うよ Winter night

Tri-Angel▽Signal 作詞:hotaru

 サビは二人の歌唱です。「瞬く僕」のあたりは二人の名前が星の名であることと関連しているのでしょう。宇宙というのもまさに夜空に輝く二人を示しているよう。しかし「君だけに放つよ」はおそらく二人とも違う「君」に向けています。哀しいことに互いに双方向には向けていない。だから結べば、文字通り三角形になります。
 改めて歌詞を読んでも、冬の大三角形を示すユニット名の通り、星・宇宙・銀河といったワードが散りばめられ、非常に壮大でロマンティックな歌詞ですね。当時のウィントラのファンはこの歌詞をどう捉えていたのでしょうか。何も事情を知らないファンから見れば、少し切ないだけのラブソングに聞こえるかもしれません。

愛は桃源郷 二人だけのパラダイス
なのに何故どうして 永遠をくれないの

Tri-Angel▽Signal 作詞:hotaru

 2番に入ると1番と順番が逆になりベテルギウスのソロパートから始まります。ベテルギウスにとってはそれこそステージの上も、アイドルユニットとして一緒に活動している時間も、幸せな桃源郷で、二人だけのパラダイスと表現するにふさわしい時間だったのではないしょうか。しかしその時間は永遠ではなく、シリウスは突然脱退を申し出る。「永遠」をくれなかったのです。

君と逃避行 二人だけの世界へ
なのに何故どうして はぐれてしまったの

Tri-Angel▽Signal 作詞:hotaru

 そもそもシリウスが白百合と出会ったのは愛著集めのための日々に辟易としていた頃でした。本編であった「たくさんの愛はいらない、たった一人に愛し合いされたい」というセリフのその通りに、愛著集めという使命から逃れ、そもそも夭聖そのものから降り、「二人だけの世界へ」行こうとした。しかし叶わなかった。白百合は直後に死んでしまったので。「はぐれてしまった」のは、確かに愛し合っていたはずなのに互いにすれ違い、もう二度と会えなくなってしまった白百合とのことを示している。

独り唄う 悲しいメロディー
傷んだ胸 ときめかせて

Tri-Angel▽Signal 作詞:hotaru

 「独り」なのは互いにそうです。もうこの時点で、互いの心は、「独り」と「独り」です。「傷んだ胸 ときめかせて」は、ベテルギウスは、シリウスの心が自分に向けられていないことに心を傷めながら、シリウスは、白百合に想いを受け入れてもらえなかったのことに心を傷めながら、それでも、人間たちの前では互いを信頼しあい愛し合っているかのように見せ、無理やり自分たち自身を「ときめかせて」いる。

そうさ Singin' singin' all the nights
今宵静寂やぶり
何度でも奏でるよ トライアングルのシンフォニー
Lovin' lovin' forever
無音の闇震わす
この心は今も 切なく Winter night

Tri-Angel▽Signal 作詞:hotaru

 ここでいう「静寂」「無音の闇」とは、静かな夜空で、瞬く星の名を背負う二人が、使命を背負い、何度も人間たちの前で歌を披露し愛著集めをするという意味かなと思います。心がすれ違っていて三角関係になっていても、切ない思いを抱えていても、それでも人間たちの前に立ち、愛著を集める。

 この歌については、王道アイドルソングらしい印象を受けます。とてもキラキラしていて、ユニゾンも美しく、歌詞も夜空・銀河・宇宙・光・星といったロマンティックな要素がたくさんある。アニメ本編では11話で披露されたこの曲ですが、キラキラしたアイドルの二人が歌い、最後は幸せそうに見つめ合ってキスをし、見ている観客たちからはたくさんの愛著が溢れていました。一見すると人気アイドルの定番ソング、という感じです。でも冷静に歌詞を読むと、ものすごく切なくありませんか?作中に出てくるウィントラのファンたちから見たら、切ない想いを明るく歌い上げている歌に聞こえるでしょうが、シリウスとベテルギウスの間にあった出来事を知っている我々のような視聴者から見たら……

 ここから先は私の個人的な話にもなって申し訳ないのですが、この曲の歌詞の、特にシリウスとベテルギウスそれぞれソロで歌っているパートのすれ違いっぷりに気付いて以来、この歌は私にとっては聞くのがとてもつらい歌になっていました。しかし、2021年9月17日に開催されてFairy蘭丸スペシャルライブを見て、つらさが半減しました。
 スペシャルライブでトラシグは、艶歌を6人全員披露したあと、正確には、チルカが披露した次に歌われました。チルカ/シリウス役の住谷さんがチルカとして歌いきった後、小劇が入り、ウィントラ当時のシリウスに演技を切り変え、「今日はWinter Tri-Angelsの初ライブなのに、ベテルギウスがいない。どこにいったんだ?」といった感じの台詞を言い、後ほどに舞台袖から蘭丸/ベテルギウス役の坂田さんが登場し―――という流れでした。

 そう、そうです。昼公演で我々は、Winter Tri-Angelsの初ライブを見させていただけたのです。アニメ本編11話の、豊穣によって語られた三人の過去では、当初三人は希望に満ちて人間界に降りてきたことが言われていました。初ライブ披露のときも、きっとまだ純粋に、これからに期待を寄せ、希望を抱いてステージに立ったのでしょう。そして事実、スペシャルライブで坂田さん住谷さんが披露してくださったTri-Angels▽Signalは、本当に楽しそうでした。キャラクターたちに命を吹き込む声優として、キャラクター達の代わりに、我々が本編では見れなかった、Winter Tri-Angelsの希望に満ちていた頃を、楽しくライブしていた彼らを、見せてくださいました。
 きっとこの日のためにたくさんたくさん練習したであろうダンス。踊りながらでは大変であろうにしっかりと生歌唱で披露してくださった歌。残念ながら現時点ではあの日のライブの模様は映像記録として世間には出ていません。しかし、楽しかった頃の二人の姿を声優を通して見せてもらえた感動は、私は一生忘れられないと思います。
 私にとって、とても大好きな歌だけども、同時に、聞くのがとてもつらい歌でもあったこの曲が、ライブでのお二人のおかげで、つらさが払拭しました。つらい歌詞だけど、それでも、楽しく歌っていた二人は確かに存在していたのだなと。そのおかげで、ライブの日の帰路はずっとトラシグを無限ループして余韻に浸っていました。

 少し話が逸れましたが、これにて、Tri-Angels▽Signalの考察は締めようかと思います。
 以上で愛らんらんらん、愛と憎しみのSAGAも含めた光輝族の三曲の歌の考察は終了になります。最後の記事では、この三曲の考察を踏まえた上で、光輝族の夭聖について、私なりに考えた仮説をまとめたいと思います。

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