中途半端な

中途半端に知識や力を持つ人ほど悪徳に満ちるものである。特に言葉の使い方がひどくなる。裏を返せば、彼らはそこに安住していることになる。いつの間にか、いつまでもそこにいたくなってしまう。それでいながら彼らはかなり持ち前の知識や力をひけらかすこととなる。そうでもしなければ、培ってきたそれらが、彼らを孤独へと追いやるからだ。それらが修練されずに衰えるからというのもある。お互いに利害関係が一致しているが故に、彼らはそれらと共に、彼らなりの弱者を食い物にしてゆく。

何か批判をすれば同種の非難を受けるというのはよくある話である。仮に非難をシャットアウトしたとしても、自己による非難は残る。良心があり余っている人ほど非難は続き、いずれは非難に飲み込まれ、そうなる。そうなって行く前に、どこかの他人を食い物にするのが悪徳というものだ。

本は人の話を聞かない。読者との対話があっても、本が読者の話を聞くことはないし、少なくとも著者が読者の話を聞くことはない。なので本の文法通りに会話を進めようものなら相手から嫌われるのは至極当然なのである。現代ではこれに加えてスルースキルが流行っている。無意識のうちに人の話を聞いているようで聞いていない人達が量産されているのだ。現代では本のではなく掲示板やSNS等の文字媒体がそれを担っている。

人のモノ化がさらに進むにつれ、ゆくゆくは人から嫌われずに聞き流す一般的な反応というのが発明されることだろう(いやもうすでにあるかもしれぬ)。生返事よりももっと高度にバレない返事が開発され、さらに人は他人の話を聞かないようになる。そういう時は、「私の話繰り返して」とでも言ってみればいい。少しでも戸惑ったり躊躇しようものならば、その人は自分の話など聞いてなかったというのがわかるだろう。

タイトルに即して、ここいらで終わりとする。


『中途半端な』