安心安全稀勢の里

平成30年秋場所初日前夜にこの文を書いている。

今場所は見どころを書くだけでどれだけの文字数を要するかわからないほどで、正直(しょうじき)個人的には稀勢の里はあくまでも注目点の一つでしかないのだけど、リアルタイムで稀勢の里について書く時間が、もしかしたらあまり残されていないかもと思ってキーボードをシパシパ叩いたりしている。

筆者は白鵬派であって、本音を言えば稀勢の里の成績は今場所引退に追い込まれさえしなければ何勝何敗でもよく、それよりむしろ白鵬が前人未到の大記録幕内1000勝を達成できるかの方が気がかりだ。

しかし、白鵬と同世代の上位陣には強い思い入れがある。その思い入れに基づいた内容として読んでほしい。

さて、タイトルを読むと筆者は稀勢の里の復活に太鼓判を押しているように思われるかもしれないが、残念ながらそのような趣旨ではない。

ただ、稀勢の里は自身が納得するまで相撲が取れるだろう。
観客は力強い声援や、気が散る手拍子&コールなどで後押しするだろう。
横綱審議委員会からネガティブな圧力を受けることはないだろう。
仮に今場所成績がふるわなくて引退というケースになったとしても、
引退して数年は記録よりも記憶に残る横綱として讃えられるだろう。

という意味で安心ですね、と言いたいのだ。
その安心を力に変えてほしいと切に願う。

さて、素人なりに稀勢の里復活に必要な要素を考えてみた。
ポイントは3つ

①負傷した左腕は本場所で通用するレベルに回復しているか
②下半身の備えが長期休場前に戻っているか
③相撲勘が戻るか

3つ挙げたが重要度は異なり、
①:②:③ は 6:3:1
くらいの比率だろうか。

①②③が揃えばいきなり優勝争いに絡むことも可能と見ている。
①と②が整っていれば③が戻るのは時間の問題と思う。

問題は①だ。稽古場では左を使った攻めができるようになったと聞くが、
できるようになるのと、本場所で使い物になるかどうかは別次元の問題だ。
そして、稀勢の里は左を封じられた場合、これといった対応策がない。
作ろうとした時期もあったようだが、今はどうも左と心中するような方向性に見える。

①が戻っていなければ目標は8勝、どんなによくても10勝と言ったところだろう。
幸い、場所前の稽古は本人が納得できるだけやってこれたようなので、
①が不十分でも②③だけで、アバウトに勝ったり負けたりはできると思う。

①だけでなく、②も不十分だといよいよ苦しい。左からの攻めを土俵際、あるいはその前段階で残され、立ち腰になったところを逆転される様が目に浮かぶ。得意な逆転の突き落としも、攻めの威力と安定した下半身があってこそ決まるもの。
①と②が、もはや時間をかけても元に戻らないと覚悟したときが、そのときなのだろうと思う。

逆に復調の途上にあると感じるなら、勝っても負けても粘り強く土俵に上がってほしいと思う。稀勢の里に限らず、幕内上位で十五日間どこも痛めることなく場所を終えることなど奇跡に近い。三流誌の恰好の餌食にはなるだろうが、十五日間トータルで見て粘り勝ちしてほしいと思う。


もう一つ気がかりな点がある。それは、稀勢の里は復活をしないと最弱横綱のレッテルを貼られるおそれがあることだ。

稀勢の里の横綱としての戦績は26勝22敗で、勝率は.541。
年6場所制以降での最低は栃ノ海の.596で、これを上回るには今場所12勝以上をあげる必要がある。
なお、年6場所制以降の横綱としての最低通算勝利数は三重ノ海の55勝で、稀勢の里はあと29勝あげないとこれに届かない。

私自身は数字だけを見て即座に稀勢の里を最弱横綱と決めつけるつもりはない。横綱になるまでが全盛期だとしたら仕方のない結果だし、そう考えれば横綱になる人はやはり強いのだ。

しかし、三代目名前読めないが現在弱い横綱の代名詞になっていることを思うと、ここで終わったら稀勢の里も同じ道を辿るだろう。もっとも三代目(実は四代目)は本人によるネガキャンもおおいに影響してると言えるが。

引退して数年は記録よりも記憶に残ると書いたが、そのうち記録だけ見るガキどもがやんや言うようになる。その際、いくら当時を知っている者が擁護しようにも記録が雄弁に語るだろう。そんな胸糞な未来を許すな稀勢の里

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