スー女

叩き上げに肩入れしてしまう理由の1つは、相撲経験者はスモ充だから爆発しろと思ったりして

平成二十九年大相撲名古屋場所初日を迎えるにあたり、自分自身相撲に向き合うために投げ出していた宿題?に手をつけていきたいと思う。

断言するが、名古屋場所は絶対に面白い。なぜ面白いかは他者の記事に委ねるとして、私は半年以上前に書いた「わんぱく相撲全国大会の3つの功績が大きすぎて震える。そして割を食う相撲未経験入門者」の続きを書く。

全国の相撲道場や学校の相撲部は、少子化の影響もあってか減少傾向にあり、競技人口も減っている。一方、相撲界への入門者は八百長問題の翌年である平成24年の56人を底にじわじわと増加傾向にあり、昨年平成28年には88名が入門した。

数の上では八百長問題前の水準に戻りつつある。そして、統計を取ったワケではないが、その中で相撲経験のある者の入門が増えているように思う。そのせいもあってか、はたまたかわいがり問題への対策もあったのか、一昔前のように突然脱走して辞めてしまう力士が減ったような気がしている(高安の脱走エピは、まさに「一昔前」らしさに溢れている)

それ自体はとても喜ばしく、八百長問題前の状況よりはるかに希望を抱いていい状況と言っていいと思う。しかし、どうも引っかかる点が一つある。それが、経験者と未経験者の格差問題だ。

前述の通り、相撲経験者の全体数は減っているものの、入門者における相撲経験者の割合は増加傾向にある。彼らはいわば、相撲村の住民。師匠が学校の先輩だったり、同期は小学生からのライバルだったり。高校、大学までアマチュアで鳴らすと縦横無尽に先輩後輩関係ができていたりする。

入門者のうち、経験者の方が多数派ということは、入門時に相撲の基礎ができているだけでなく、人的ネットワークもすでにできている場合が多い。技術面だけでなく、精神面や情報収集の面でも未経験者の優位に立つのだ。

そして、その優位は入門時だけにとどまらない。いきなり飛躍するが、引退後親方になって弟子をスカウトする時点まで続く。相撲未経験から入門した親方は基本的にアマチュアにパイプを持っていない。そうすると、入門から数年以内に関取を目指せるような即戦力を確保することが難しい。即戦力を確保できないということは部屋経営が難しい。不利のスパイラルがどこまでも続くのである。

それゆえにタイトルに書いたような感情になることがある。実は(というほどかわからないが)私が相撲を見始めた30年ほど前は、入門者のうち本格的な相撲経験がある人の割合はたいへん少なかった。あったとしても、せいぜい、地域の相撲大会で活躍したのが親方の目に止まった、というほぼキセレベルの相撲経験しかない者ばかりだった。

現・春日野親方の元関脇栃乃和歌が、現役晩年の頃に語っていた内容が興味深かった。栃乃和歌が若い頃は、学生出身というだけで「てめぇこの野郎」という目で向かってこられることも多かったらしい。しかし、晩年(90年代後半)になると、学生出身力士が増えたこともあってか、のびのびと過ごせるようになったという。

個人的な見解であるが、関取レベルにおいて昭和43年生まれと44年生まれの間が叩き上げ優位と学生出身優位の分水嶺であり、以降は大学出でなくとも相撲経験のある者が多く関取の座を掴むことになる。

このように、たった30年の間にも新弟子や関取の背景が異なっているにも関わらず、番付の上では乱雑に?皆、序ノ口からスタートすることになっている(付出資格を得た力士除く)

実力的には入門時から三段目、幕下以上の力があるのに序ノ口の土俵に上がられることは、リアル序ノ口にとっては甚だ迷惑な話ではないだろうか。7番しかない序ノ口の相撲で、確実に黒星を計算しなければならない取組を迎える心境は、そこに向かう足取りは。経歴に差があるのだから、勝負にならなくて当たり前と、割り切れるだろうか。割り切らせるような取組をさせてしまっていいのか。

学生出身でも前相撲から取る力士が増えていて、彼らは下積みを経験できたことを誇らしく思っているようである。その下積みの価値を否定するつもりはないが、序ノ口にいる時点で、三段目力士の顔色を伺いながら稽古して積む経験と、三段目に上がるまであと何年かかるのか全く先が見えない状況で積む経験をイコールと言いたくはない。

先が全く見えない状況にあって、夢中で頑張る未経験者にエールを送りたい。また、協会としてもそのような姿勢を示すべきだと思う。前述の通り、経験者の全体数自体は減っている。未経験者に入門してもらい、育てることが相撲界の未来につながる。

そして、未経験者を歓迎する意思を、制度改革によって示すべきだと感じている。私は、序ノ口をぜひ「初心者天国」にしてほしいと願っている。そのために、付出制度をさらに拡充させ、レベルに応じて細やかに設定すること、また長期休場者の番付「下げ止まり」ルールを作っていただきたい。これに関連する私案の詳細はまた次回以降のエントリで書くことにする。

30年前には当たり前のように見ることのできた15歳の序ノ口優勝をもう一度見たい。15歳に入門してもらうためには教育面でのバックアップ体制を強化することも重要だ。とりあえず、ようやく次回以降書きたいことの本題に入れそうだ・・・

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