コント「新弟子志願者」

相撲部屋の玄関先にて

男:たのもー! たのもー!

力士:なんだよインターホンも鳴らさずにうるさいヤツだな。はーい、ガラガラ…

男:たのもー!

力士:ちょっとなんなんですか。用があるならインターホン押してくださいよ。まさか今どき道場破りに来たなんて言わないでくださいよ

男:いえ、道場破りではありません。はじめまして。私、田野猛(たのもう)と申します

力士:たのもう!って名前なんですか!…それにしたって玄関先で自分の名前を連呼するのはおかしいでしょ。ピカチュウでもしねぇよそんなこと

田野:…タノモゥ

力士:ちょっとピカチュウに寄せて言うなよ!

田:あの…田野猛って名前の響きからもわかる通り、King Gnuの親戚です

力:1ミリもわからねぇよ!おかしいだけなら許すけど嘘はつくなよ!…で、道場破りでないなら、あんた何しに来たの?

田:そうですね…道場破りというより、むしろこの道場を立て直しに来たとでもいいましょうか

力:へ?建て直すってリフォーム業者さんか何か?

田:いえ、自分ここの相撲部屋に入門して横綱になりたいんです!親方に会わせていただけないでしょうか?

力:…ずいぶんデカいこと言って自信があるみたいだけど、あいにく親方は留守にしてるよ。それより新弟子志望なのはわかったけど、あんた今トシいくつよ?

田:数え年で72歳です

力:72歳て!親方より圧倒的に年上!それに、何歳だろうと年齢聞いて数え年で答えてくる弟弟子(おとうとでし)イヤすぎるわ

田:満年齢に直すと71歳。いわゆるバリバリの男根の世代です

力:団塊の世代だろ!それ若手のアナウンサーが読み間違えて赤っ恥かくヤツ!平成生まれの俺に訂正させるなよ…って、残念だけど71歳だと入門は認められないね。相撲協会の規定で現状25歳以上には門戸が開かれていない。そもそも71歳だと親方でも定年してるからね

田:すみません、嘘ついてました!実は9歳…いや、吾輩は10万とんで9歳である!

力:うるせぇよヘタクソが!いいボケかましてるつもりだろうけど、71歳という事実の方が面白いよ

田:え?相撲ファンは実年齢に10万を足すのがしきたりじゃないんですか?

力:そのしきたりを守ってる相撲ファンは地球上に1人しかいないよ!それに本当に9歳だとすると若すぎて入門できないんだよ。入門したいなら中学は卒業しないと

田:でも北の湖は中学生で幕下でしたよ

力:まあまあ相撲に詳しいな!そのくせ入門は年齢無制限だと思ってたのかよ!たしかにおじさんが若かった頃は義務教育中でも相撲部屋に寝泊まりして力士と学校の両立が認められてた。今の圓楽師匠と相撲時代の天龍源一郎が両国中学校の同級生なのは有名だよね

田:あと、あだち充とミスター・ポーゴが同級生だよね

力:意外な同級生の話題はいいよ!

田:うん。じゃあ、私も圓楽師匠や天龍さんのように日に焼けたら力士になれるかな?

力:発想がユニークだな!そもそも圓楽は力士じゃないよ。まあ、でも江戸時代には6歳で初土俵を踏んだ大童山(だいどうざん)という力士がいたらしいね。生まれた頃からとにかく人一倍身体が大きくて、人気があったらしい

田:6歳から力士?許せないなそれは!

力:まあ、ちょっと見世物的な扱いというか、今だと児童虐待とかの人権問題に引っかかるかもしれないけど

田:吾輩の10万とんで9歳のボケがかすむだろうが!

力:そっちで怒ってるのかよ!そのボケよりも71歳という事実の方がインパクト強いから。とにかく、71歳だと相撲部屋に入門はできないのでお帰り願えますか

田:ちょっと待ってください!最後に一つだけお願いがあります

力:なんですかお願いって?親方に伝言するくらいなら内容次第では受けますけど

田:大きなイチモツをください

力:バリバリの男根の世代かよ!これで見事に伏線回収しましたね!とはならねぇよ

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