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アランセーター

父と母にプレゼントしたアイルランドのアラン島で購入したセーターは20年近く経ってもまだそれほど傷んでいない。毛の中に独特の脂分が含まれているからか結構重いセーターなのであまり私は好んで着ないが、父はとても大事に着てくれている。

私はアイルランドに2回訪れている。1度目は30年近く前、ゼミの研修で出かけた。その時は一ヶ月ほどしか滞在しなかったので、その時はアラン島には行けなかった。2度目はこれももう20年ほど前になる。前回行けなかった、ということもあって是非行こう、と決めていた。その時、私の拠点としていた滞在先は、ダブリンだったから、アラン島までは少し距離がある。長距離バスに乗って、まずはゴールウェイに行き、そこから、小型の船に乗って島に渡る。私は船酔いする方なので、行きも帰りも、ゲロゲロしながらの旅だった。私が旅程を決めていると興味を持ったスペイン人やイタリア人の学生たちも「何それ、面白そう、ウチらも行くー」てな感じで、六人ほどで行った。

ただ、私は一つ懸念していた。アラン島は小さな島。何もない。私はその何もないところに一週間、ただ、自然と、そして何もない空間で静かに過ごすために行く予定で、それを分かっていく事にしていたから良いのだが、彼女たちは何か、特別な、楽しいことがあることを期待している様子だった。(クラビングが好きな彼女たちが果たして一週間そこで耐えられるか、最初から気がかりだった。)

一応期待するものはほんまに何もないよ、と、説明していたが「良いの良いの、一人で美味しいもんを秘密にするなんてなしよー」的なノリでついてきた。

当時(今は知らないが)パブが数件しかない場所だった。何にもない。他は歴史館みたいなところと、B&Bなどが数軒あるだけ、それと羊たち。

案の定、彼女たちは3日も持たず、先に島を出たw街でクラブ遊びする方が楽しいに決まっている。「ねぇ、十分じゃない?一緒に戻ろうよ」と言われたが、私はもう一人の友人と残ると言って別れた。

私は予定をいっぱいいっぱい楽しんだ。都会の喧騒を離れ、日本のストレスを全部忘れるのには良い時間だった。そもそもヨーロッパに住む彼女たちとは違い、アイルランドの中でも辺境にあるアラン島に行ける機会というのは私にとっては一生に1度あるかないか、の話なのだ。

当時は、編み物にはあまり興味はなかったが、ここで買うことに意味がある、と思って、家族全員のアランセーターを買った。(別にアラン島でなくても買えるのだが、アラン島で買う、ということに意義を感じていたw)

独特の匂いと、手触り。私は父の様に活用しておらず、既に着るということはないのだが、手元にはある。この先の人生で、行きたい場所は万とあるが、死ぬまでにもう一度、アラン島を訪れたいと思っている。おそらくあそこの時間や空気は何年経とうが変わらない気がする。それを確かめに行きたい。何年経っても自分というものの根本が変わっていないかどうかを確かめたい。そういうことができる空間の様に感じている。今度は旦那を連れて行きたいと思う。<まぁ、旦那も一週間そこに付き合うことはないだろうがwww

アラン島へ行った時の古いビデオがあるのでそれを編集しようと思いつつ、全く手をつけていない。まだ、メモリーカード対応時代のビデオでもないので放っておいたら一生見ずに終わりそうなので編集してデータ化しなくては、と思っている。



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