【 詩 】月見草をにぎりしめて
車のヘッドライトが眩しすぎて 青い夕闇の底にうずくまる
うずくまっているといつもあの人が助けに来てくれる
大丈夫だよ。目を開けて。
そう言って優しく 手を引っ張ってくれる
そして道の脇に生えていた月見草を1本折り取ると
私の手にそっと握らせてくれる
月の香りがするから月見草 なの?と 私は彼に問う
彼は笑ってそんなことはないよと言うけれど
確かに 月見草からは月のような香りがしていたし
その香りがほんのり光っている
優しい明かりを吸い込んで 私は立ち上がる
ありがとう。
微笑みかけようとすると彼はどこにもいないのだった
いつも助けてくれるけれど
立ち上がると彼は いつもどこにもいないのだった
私は またうずくまりたくなるけれど
月見草をにぎりしめて歩き出した
花がしぼむ前にできるかぎり
前へ進もう。と思った
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