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レトロな建物に住んでみたい

レトロな建物に住んでみたい。
天井につるされた灯りの根元には漆喰で花が描かれているような。玄関はタイルでモザイクになっているような。玄関の扉や窓枠は木で出来ていて、床の木材はつやつやと飴色になっているような。小窓にステンドグラスがはまっているような。
そんなの絶対に無理でしょって思うかもしれないけれど、そんな家がこの古い町には少し前にはいくつもあって、でもどんどんなくなっていった。それはお医者さんだったり写真屋さんだったりした。
ああそんな建物に住んでみたかったなあ、と思いながら自分が住んでいるところは仕事場の二階で家とも言えない。ぴかぴかの新築の家でなくていいからそういう古い家を壊されてしまう前に買って住めたら良かったなと思うといつもどうしようもなく悲しくなるので、風邪を引くとせめてまだ残るレトロな建物の診療所に行く。疲れると蔵を改装したカフェで珈琲を飲む。どうかいつか古い家が手に入りますように、家といえるところに住めますようにと神様に祈りながら暮らしている。


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