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池内紀ほか編『木の都』新潮文庫

また少し忙しくなりかけていて、寝る前に本を読むときも気持ちが落ち着かない。少しずつ読んではいるのだが、なかなか感想を書く勢いがつかない。ということで今日は短めに。

この短編集は1944年から1953年の10年間の短編を集めている。戦中と戦後だから雰囲気は予想できるが、意外なものも多かった。中でも戦地に出向いた作家たちが書いた戦闘の合間の話。島尾敏雄の「島の果て」など、いまにもアメリカ軍が上陸してくるというときに島の娘と恋愛し、夜中に逢引などしている。そんな余裕があったのかと驚くが、それもまた死を前にしたぎりぎりの状態だからこそ、だったのかもしれない。戦争に行った者にとって戦闘の残酷さや恐怖はいまさら書く気にもならず、戦闘のないつかの間の出来事が強く印象に残るものなのかもしれない。

戦後の話としては太宰の「トカトントン」が代表的だけど、これはいま読んでも最後の作家のひとことがよくわからない。バランスを取っているのかな。あとは井伏鱒二「遥拝隊長」がよかった。軍隊でいばりちらしていた男が戦後になっても近所の人に「気をつけー」などと命令する。頭がおかしくなっているのだ。

この本はある読書会の課題だと言われて読んだのだけど、読書会はいつ開催されるんだろう。そのうち中身を忘れてしまいそうだ。



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