TOKYO MER 第1話レビュー 鈴木亮平さんが放つ圧倒的ヒーロー感。アムロ×シャア的展開も楽しみ

日本版アベンジャーズ、らしい。予想以上にかっこよくて大興奮してしまった。幼いころに見ていた特撮、戦隊物などを思い出しワクワクできる。今期の日曜劇場は、大人の「スーパーヒーロータイム」といっていいかも。

生身の体でヒーローを演じさせたら、日本人俳優の中では鈴木亮平さんの右に出るものはいないと改めて思う。
喜多見幸太は、脚本の黒岩勉さんが鈴木亮平さんを当て書きにして作られたキャラクター。さわやかな笑顔と温和な人柄、しかし身体はストイックに鍛え上げられており「全ての人を助ける」という強く崇高な理念を持つ男。その裏には、幼少時に遭遇した銃乱射事件の際、レスキューの処置が間に合わずに目の前で両親が死んだという悲しい過去がある。完璧そうな人物像の悲しみは、ヒーローとして最高のスパイスだ。

喜多見がかもし出す特徴のひとつが、誰もが聞いたら元気になれる、優しく熱く響く声。鈴木亮平さんが演じるからこその純粋さ。喜多見がそこに存在して、語りかけてくれるだけで、その包容力と安心感で免疫は高まり、怪我も病気も回復しそう。喜多見はまさに鈴木亮平さんそのもの。ファンにはたまらないキャラクターがまた増えてしまった。

冒頭15分の衝突事後現場のシーンは、まるでドキュメンタリーを見ているような緊迫感。呆然とするMER隊員を横目に、喜多見は誰よりも素早く行動し、冷静に迅速かつ的確な指示を飛ばす。それを長台詞、ロングカットでこなしていく鈴木亮平さんの演技力の凄まじさは大感動。患者に呼びかける声などは本物の医師のようで。ああ、かっこよすぎた・・・。

その冒頭15分で、喜多見の人間性もわかる。普段はマイペースで穏やかな人なのに、スイッチが入ると驚異のリーダーシップが。視聴者はすっかり喜多見チーフのファンになってしまう。

医師で官僚の音羽尚(賀来賢人さん)の登場シーンも最高だった。喜多見チーフとは熱量が全く違うが、まさしく彼もヒーロー。最近の賀来賢人さんの「チョケた」イメージが覆される、イケメンすぎるキャラクターだった。喜多見を冷酷に批判する割には、いざと言うときにはいちばんに喜多見を助けに行く。無表情な顔の裏には、医師としての熱い想いが見え隠れする。それを誰よりも見抜いているのが喜多見、という構図もいい。

喜多見と音羽は、ライバルにも一番の理解者にもなり得る。ドラマが終盤に近づくに連れて、相棒としてその関係は強固になっていくのだろうか。その過程にはきっと色々ある。それが見どころか。ああ、楽しみすぎる。

音羽の過去にも、何かあるような気が。医師でありながら、なぜ官僚の道を選んだのか。今は厚生大臣の犬のように活動をしているが、大きな野心があって、実は逆に厚生大臣を利用しているのかもしれない。その野心とは。

勝手な考察だが、音羽は何か過去に自分の力では太刀打ちできないような出来事に遭遇した経験があるのかも。医師を目指す中で、諦めなければならないような何かが。それを変えるためには、国のシステムを変えなければならないと。彼なりの正義が人を救う目的であってほしい。

喜多見の正義と音羽の正義。なんだか、ガンダムのアムロとシャアのようで非常に熱い。ガンダムでは、シャアが長年ファン投票1位を独占しているが、実は、TOKYO MERでも一番の人気キャラは音羽になる気がしている。私自身、喜多見を演じるのが鈴木亮平さんでなければ、キャラクター的に推しは音羽だったかも。

音羽にとっては、喜多見は目の上のたんこぶ。じゃまな存在かもしれないが、実は「憧れ」なのだろう。喜多見の危険なほどのまっすぐさに音羽が感化されて変化していく姿も楽しみだ。


初回の見どころのピークは、ガス爆発での救助現場だった。喜多見は仕事はできるが、非常に危うい人だ。命の危険を顧みずたった一人でも無謀に行動してしまうし、大勢の負傷者を見てふと、過去の記憶がよみがえり立ちすくんでしまうような、すれすれさを持ち合わせる。その喜多見の危うさともろさが、絶対的ヒーローのギャップとしてはたまらない。私のようなオタクにとっては萌えにも通じて、非常にいい。

叱咤するように補助しに来てくれるメンバーは、喜多見にとっては心強い存在だ。実は全く完璧ではない喜多見を、完璧に変えてくれるのは、MERのメンバーたちという関係性もいい。

置き去りにされたレスキュー隊員を助ける名シーンについて。負傷したレスキュー隊員の根津役、奥野瑛太さんもいい演技だった。

奥野瑛太さんといえば、朝ドラ「エール」でヒロイン音の姉、吟の夫役を好演していた俳優さん。寡黙でプライドが高い軍人だったが、戦争後には元軍人ゆえに虐げられやさぐれてしまう。しかし、戦争孤児の少年との出会いをきっかけに、平民として生きる努力をして、ラーメン店の店主となった。少年も養子に迎えすっかりよき夫、朗らかな人になるという印象的な役柄だった。リアルタイムに「エール」を見ていたファンや、あさイチの華丸大吉さんが「いい俳優だ」と絶賛した。
そんな奥野瑛太さんにTOKYO MERで出会えたのは、個人的には嬉しかった。奥野さんの気持ちになって、鈴木亮平さんとの2人芝居は感無量だったに違いないとまで妄想してしまった。

ガスの漏れる室内で、今にも死にそうな根津を勇気付ける喜多見の姿には大感動した。「諦めちゃだめだって!」と、生きる希望を優しくも力強く与えながらの処置。

「会えますよ。絶対に」と断言する喜多見の目と声には、根津が生きて帰らないかも、という疑念はひとつもない。その一瞬のシーンにはっとする。喜多見を越えて、演じる鈴木亮平さんに対しても100%の信頼を感じてしまう。

ガスで意識が朦朧としながらのオペシーンはとてもリアル。徐々に意識を失って死にいたる人とはああいう感じなのかと目を見張った。表情が実に繊細で細やか、そして色っぽい。喜多見は、亮平さんを当てがきしたキャラとはいうが、あのリアルな演技は、鈴木亮平さんの持つたぐいまれなる「想像力」と「感受性」のたまものだ。亮平さんの演じるキャラクターが全て違う人物像なのもそういうわけだと思っている。なんてったって、想像だけで世界遺産へ旅行して旅行記とスケッチが描ける人だし。

そして、音羽。意識を失い倒れこむ喜多見の腕を抱え、「ガスが下にたまってる!立って息を吸って!!」と起こし上げる音羽の登場シーンは何度でも見たくなる。音羽が来たことが信じられずに「なんで・・・?」とつぶやく喜多見も非常にいい。・・・すみません、オタクです。

第1話にしてエモいシーンがこれでもかと盛りだくさんだったが、やりすぎ感はまったくなく、興奮してすっかり引き込まれ、期待しかないTOKYO MER。

迫力シーンだけでなく、キャラクターたちの魅力を第1話にしてたっぷりと感じさせてくれたのが嬉しかった。アベンジャーズ感、とはそういうことか。それぞれに誰もが主人公になりうるドラマを持っているから。

喜多見の、ばれたら困る「あのこと」とは。TOKYO MERの理念そのもの、という喜多見がなぜ赤塚知事と出会い、チーフとして来たのか。離婚暦があるようだがその相手とは?などもこれからとても興味深い。

また、音羽と喜多見のこれからのヒリヒリする関係性。時には殴り合いながらの衝突、なんてのも見てみたい。いつも冷静な音羽が感情的になる瞬間、なんてのがあれば、結構バズりそう。

夏ドラマは始まったばかり。私のイチ推しはTOKYO MERになるのか。とても展開が楽しみです。

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