レンアイ漫画家 第9話レビュー  向後さんの「大恋愛」と、孤高の天才漫画家が愛を知ったときの強さ

きゅんが、やばすぎた。

第9話は見所が多く、レビューをまとめるのに苦労した。仕事や家事の空き時間に、動画配信や録画を見てはレビューをコツコツ書く。そんなこんなで楽しんできた一週間。意外と早かった。今は、次回が待ち遠しいという気持ちよりも、最終回が来て欲しくないという複雑な気持ち。ああ、そしてまた、木曜日がやってきた。10話で最終回と思いきや11話?まであるようで、それはほんとに嬉しい限りなのですが。


では第9話を振り返る。
ドラマチックな第9話だったが、やっぱり何と言っても、ラストの2回のキスシーンに最高に萌えたことをまず書きたい。あいこの刈部さんを想う気持ちが、めちゃめちゃ溢れていた。刈部さんの振り向きざまに胸ぐらをつかんで、立場逆転って感じのキスは超可愛く、やっぱりあいこが吉岡里帆さんっていう理由はそこだったんだな、と妙に納得した。そして、それを受けての刈部さんの表情。鈴木亮平さんの演技が最高すぎました。刈部さんが鬼瓦から、素の男の子になってしまった瞬間を切り取った、最高のきゅん。そして、それを受けての10秒キス。あーー、何回見てもいい。

俳優さんの力量もさることながら、スタッフさんたちにも感動する。主題歌の入れ方といい、絵コンテ(?ドラマにもあるのかわからないが)といい、どこを切り取っても美しいシーンを撮ろうとする愛がすごい。めいっぱい刈部さんとあいこを応援している気持ちがつたわる。だから、このドラマ大好き。

いっとき、ネットのレビューでは視聴率を引き合いに出されたり、他のドラマに比べてキャストが映えないなどと辛口で言われていたが、今や「レンアイ漫画家」が今期ラブストーリードラマではだいぶ高く評価されている。ほらほら、見てごらん。

ちゃんと見てた人には第1話からわかっていいましたよね。鈴木亮平さんが恋を知っていく演技の破壊力はすごいと。吉岡里帆ちゃんの絶対的ダメヒロインは当たり役だと。ようやく視聴率が上がってきているのが嬉しい。主要のお2人のキャストを含め、片岡愛之助さん、竜星涼さん、木南晴夏さん、そしてレンくんの岩田琉聖くんの個性のバランスが最強なのも、いい。ドラマ用にリメイクしたストーリーも最高である。

「君が家を出ていく必要はない」


私、この台詞さりげないんですが萌えました。勢いでキスしてしまったあとに刈部さんが言った言葉。しかし、私はふと思う。仮にあいこが家を出て行っても、恋愛を解禁するのには問題はないのでは。しかし、刈部さんはとにかく、言いたかったのだ。

「君が家を出ていく必要はない」

これって「ソフト束縛」よね。さらっと言ってのけるほど、あいこのことが好きで一緒にいたい気持ちが感じられる。あの鬼瓦の中に、いつの間にそんな熱くて尊い気持ちが溢れてしまったんだ。あのときか?いや、あのとき・・・と個人的にもだえる。どこまでこじらせる2人なのか。

「つきあう」とは?

「ふたりは、お付き合いしてるんですか?」と聞いてきたレン。自分がまおちゃんにキスをされたことの謎も含めた、もじもじとした言い方も実に可愛いらしい。

「つきあうとは?」と、ふと我に問う刈部さん。今まで、どうやって恋愛漫画を描いてきたのだろうか。お決まりの辞書を持ち出し「付き合う」⇔「交際する」で堂々巡りし、自分に突っ込んでいる始末。何でもかんでも辞書で意味をひく姿は、世界で一番ピュアな生き物か。しかし「つきあう」もわからんのに、キスはできるんかい!いや、キスは本能だからできるのか?

今思うと、「付き合う」⇔「交際する」のくだりは、50分後の美しいシーンの伏線であった。うわあ、なんてすごい。もう、恍惚感しかなかった。なんて良くできているドラマなんだろう。

もう一人の刈部まりあと「大恋愛」

「向後さんまで、俺の漫画を汚すんですか」

読者の人生を背負う覚悟で、自分の人生を全て漫画にささげてきた刈部さんが、素性を明かされ心を閉ざした。刈部さんの部屋のドア越しに、向後さんはいった。

「はじめて出会ったときのことを覚えてる?」

第一話でBLか?とまで思わせた向後さんの刈部さん愛の謎が、今回紐解ける。

少女漫画誌の編集になったのが不本意で、「愛のない冷たい人間」と言われるほど腐っていた向後さんの人生を変えたのが、刈部清一郎の漫画だった。

「あの日から、刈部くんとの大恋愛が始まったと思ってる」


たまたま、少年誌にかかってきた電話を取ったことが出会い。そして、一目惚れ。
刈部少年は、当時は少年漫画を描いていたのだろう。しかし、向後さんには、少年らしいダイナミックな作風のなかに、繊細に揺れ動く感情の美しさが見えたのだろう。この漫画家を自分の担当で、しかも少女誌で描かせてみたい、と思えるほどに。

「刈部くんに出会わなければ、とっくに会社辞めてた」という言葉が胸を打つ。

人生の分岐点で、救ってくれる「何か」に出会えた向後さんは幸運だった。
読者が泣く、笑う、怒る。時には傷つける刃にもなる・・・そんな刈部少年の漫画には、人の人生をも変える力がある。それを向後さんが証明している。ああ、銀天読んでみたい。

「連載が始まったとき、読者受けのいいように、ペンネームは女性の名前にしようって僕が言ったんだよね。」

刈部まりあの名付け親は実は向後さんだった。いわば、もう一人の「刈部まりあ」。人付き合いは極力苦手で、名声にも興味のない刈部少年に、描きたい漫画を好きなように描かせて守るための砦だったのかもしれない。しかし「銀河天使」が恋愛漫画の金字塔と言われるまでヒットしてしまったことで、それが向後さんにはプレッシャーに変わってしまった。

「描いたのが、男でも女でも若くても年取ってても関係ないって、今なら自信を持っていえるのに。」

「僕が守らなければいけなかったのは、銀天ではなく、刈部君だった」

向後さんも成長した。イメージや作戦よりも守らなければいけないものは、刈部清一郎の漫画が好きというあのころの気持ち。「銀河天使」が守る必要もないくらい強い作品に成長したのは、ファンの「好き」と想う気持ちが与えてくれたのかもしれない。


「感謝」を知った刈部清一郎の中に生まれたもの

「刈部くんが落ち込んでるのって、正体がばれたからじゃないよね。作品を愛してくれている読者に裏切られたと思ってるから、違う? 」

「僕も最初はショックだった。でも、わかったんだ。それが違うって」

「ガーガーガーガー言ってるやつらは、ろくに読んでもない。炎上祭りで誰かを叩きたいだけ。いいものはいい!作品はそれがすべてだ!」

私が銀天のファンなら、作者がどんな人であろうが関係ない。だって、漫画が好きなんだから。それを描いた人なんだから。むしろ女性でなくて刈部さんみたいな男性、超絶タイプです。まぁ、それはさておき。

向後さんの言葉で成長した人がここに。たった一人で闘っていたと思いこんできた刈部さんだ。

刈部さんはもともと、性別を隠しているつもりはなかった。ドア越しにあいこに「そんなことじゃないんだ!」と声を荒げたように。不器用なあいこにはまだそれはわからない。向後さんなら、わかる。

人生をかけて、読者の人生までも背負う覚悟で描いている「銀河天使」の読者に背を向けられた悲しみ、一人で描き続けてきたと思い込んでいたからこその、絶望と孤独だった。

しかし、一人ではなかったと気づいた。これは人生を変える大きなことだ。
日本漫画大賞の授賞式に現れた刈部さんは、とてもかっこよかった。表情は、まるでテロリスト(向後さん?)を追い詰める捜査官みたいに凄まじかったが。決意をみなぎらせ、人が苦手な刈部さんが勇気を出して、心の扉を開いたことも連想させる重要なシーンだから、あれくらい重厚で緊迫感がある表情なのが、いい。

「はじめまして、刈部まりあです」

そして、きちんとあいさつ。
えっ刈部さんあいさつできるの?と萌えたのは私だけでしょうか。

「『銀河天使』は、俺ひとりのものじゃない。一心同体でやってきた担当編集と、愛してくださる読者のものです。感謝の意をこめて、この賞を謹んでお受けいたします」

炎上騒ぎが何だというのだ。こんな感動的なコメントする漫画家さん、カリスマ以外の何者でもない。そして、この「謹んで」という言葉が素晴らしい。向後さんや愛読者へ敬意をはらう真心が感じられる。壇上で抱き合う刈部さんと向後さんは最高のバディだった。翌日のネットニュースやら、どんな反響があっただろう。炎上転じて大賛辞しかないのだが。

不器用ヒロインあいこはなぜ、だめだめなのか

「あの、それから。俺は、愛とは無縁の人間だから、恋愛漫画を描いてきたつもりでした。でもそうじゃない。俺にもあったんだと。そう気付かせてくれた人にも、感謝しています」

これって、最強の愛の告白ですよね。
台詞がイケメン。さすが、恋愛漫画家。

実は、最近、あいこのダメさ加減がもどかしかった。

自分に自信がなさすぎるとこ。すぐに自分のせいにしてしまうとこ。崖っぷちでがんばれる力があるのに、いざというとき(特に自分のせいと思ったら)、すぐあきらめちゃうとこ。刈部さんの素性がばれたときに、「私のせいだ」と思って落ち込んでいたあいこを、私はぶん殴りたい。ダメ男ホイホイのダメダメあいこ。でも、私たちと同じ不器用な等身大の愛すべきヒロイン。だけど、あいこだけが持つ強さは、相手を受け入れる深い愛。

炎上騒ぎを起こした由奈ちゃんに言ったこと。

「刈部さん、全身全霊で漫画を描いてきたの。普通の人が楽しいなって思えること、何にも経験せずに、漫画にだけ全精力注ぎ込んできたの!」

こんなに愛の深いダメダメあいこ。授賞式で刈部さんに報われて本当に良かったね。
不器用なキャラの2人だからこそ、絶対的に応援したくなる。最後のラストキスシーンには、刈部さんに元気を与えられ、ますます刈部さんを好きになって成長していくあいこの強さも現れていたと思う。

これでもかと言わんばかりのラブラブキスシーンと見事な伏線回収

鈴木亮平さんがインタビューで言っていた。「夜景の綺麗なところで芝居、あれ?僕でいいんだっけ?って思いました」と。いや、いいんですとも。それから、「黒や白のアルバムばかり並ぶ中、『レンアイ漫画家』はパステルカラーの素敵な思い出です」と。

私は亮平さんのファンなので、実はとってもロマンチックな人というのも知っている。しかし、いかんせん武骨とかナイスガイな芝居が多い。亮平さんの憧れのラブストーリー。あんな甘い顔引き出してくれた刈部さんには、ほんとにありがとうと言いたいです。

ここで伏線回収。「つきあう?」と堂々巡りな刈部さんに答えが与えられる。それは、「意味は、私たちでつくりませんか」というあいこの言葉。

ダメダメどころか、急にあざと可愛い確信犯のような、胸ぐらをつかむチューは衝撃だった。前回、亮平さんにあんな襲われ方をされた里帆ちゃんを、ファンの人はどんな思いで見ていたのかと私は気の毒?に思っていた。今回のキスはあいこターンからだったので、亮平さんは男たちの夢を一心に表現してくれたと賛辞されているのでは?と勝手想像しているのだが、これは女性の意見かな。

下手な俳優さんがすると、見てるこっちも恥ずかしくなるすれすれのシーンを、鈴木亮平さんと吉岡里帆さんが、めちゃめちゃ美しいドキドキ感たっぷりなキスシーンにしてくれた。キスってあんなに色っぽいんですね。ああ、キスっていいなあと心からうっとり思わせてくれる。気が付くとテレビのリモコンにちょっと唇が触れてしまう自分、だいぶ恥ずかしい。しかし、そんなことはどうだっていい。私は全身全霊で彼らの人生を背負うつもりで、このドラマにはまりこんでいるのだから。

5回告白の女の子

そして作品のテーマにもなる大きな伏線回収が。

私はあいこをモデルにと知ってて漫画を描いていたのかと思っていた。しかし、それは刈部さん自身も気がついていない、運命のいたずらだった。

あの河川敷での出会いを、今まで気が付かなかったのは、ふたりの世界が違ったからだ。刈部さんが思い込みで頑なにしてしまった世界は、あいこやレン、向後さんとの新たな関係により変化が加わり広がった。そして、過去と出会えたというエピソードに、胸が震える。

次回は「虚構と現実の狭間で苦しむ」刈部さんが。

これはきっと好転反応と思われる。今まで溜めてきたものが変化しようとするとき、体はこれまでの自分を守ろうと一時的に作用する。それは快方に向かうサインなのだ。

苦しみのあとにはまた笑顔が見られますように。刈部さんが、あいこから「普通の人が楽しいと思う幸せ」をたくさん受け取れますように。今晩も第10話を、楽しみにしています。

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