2021年春ドラマ 個人的に面白かった春ドラマ5選

2021年春ドラマ。ステイホームを経て制作側の「いいものを思い切り作りたい!」という熱意を感じるバラエティーに富んだ作品が多かった。そんな中、やはりドラマは脚本が良くても、演出が良くても、また俳優さんの演技力だけが良くても面白いものは生まれないと思い知らされた。話題性は高かったがふたを開けると「あれ?」というドラマもあった。

個人的に、ドラマを一番左右するのは脚本であると思うのだが、面白いドラマになるかどうかは、ストーリー構成とか演出、美術を含む設定、キャスティングや演技力、スタッフさんたちのチームワークなどそれら全てがバランスよく相乗し合うかどうかにかかるのではないだろうか。

夜21時~23時のゴールデンタイムにはラブストーリーが豊作だったので、それぞれ比較しながら楽しめた。そんな中、私が個人的にはまったドラマや心に残ったドラマを選びレビューしてみました。

今ここにある危機と僕の好感度について (NHK)

今ここにある危機とぼくの好感度についてーあらすじ

顔と人当たりがいいだけで看板アナウンサーをしている神崎を演じる、松坂桃李さんのAIのようなテキトーな演技が小気味良い。しかし、だんだん大学の闇の元凶、理事たちに振り回されていく様子は同情しかなくなる。大学の学長で神崎の恩師には松重豊さん。また大学の理事達には國村隼さん、岩松了さん、古舘寛治さん、温水洋一さん、斉木しげるさん、など最高級のバイプレイヤー達が集結しており、その絵面は見ているだけでワクワク。悪役としての皮肉たっぷりのバイプレーヤーたちの演技の掛け合いは豪華でみどころのひとつ。

さまざまな大学の不祥事が明るみになり、神崎にも過去の恋愛(本人の記憶にはなかったが)などが絡んできたり、だんだん主人公の心に人間味がついてくる。面倒なことには一切かかわらないで生きていくのが目標だった主人公が、彼なりに人として大切なことに気付き、彼なりに革命的なことを起こすまでの成長ぶりに感動する。たんたんとしたナレーションが小説を読みあげているかようで、知的なアハ体験のような感じ。おかげで感情移入など一切することなく、振り回され一喜一憂する神崎にただ笑える。国立大学ゆえの国家政治との闇は、本当にあるのかもしれないと思い恐ろしくもなるが、一貫してブラックコメディで笑いとともに見られて楽しかった。最終回は、「いいものを見た」と心に一陣の風が吹き余韻にひたれた。

主演の松阪桃李さんのすごいところは役者としての「器用さ」。憑依型とかではなくただただ、天才だと思う。教授の不正を内部告発した木嶋みのり(鈴木杏さん)が自分の思いを叫ぶシーン、録音したその音声を聞いて学長(松重豊さん)が涙するシーンは心をつかまれた。学内新聞部員のコウスケを演じる坂東龍汰くんなど若手の演技も印象的だった。

リコカツ (TBS)

リコカツーあらすじ

当事者同士の離婚がメインのドラマはかつて見たことがあるが、両親たちまでもが・・・というのが斬新だった。私自身どちらの立場もわかる年齢ということで非常に共感ができた。一生一人の人と連れそうことに違和感を感じることは、決して悪いことではない。むしろ人として成長していくならば、誰もがたどっていい道だと思う。このドラマは本人達よりも両親を見ているほうが面白かった。本人達のラブストーリーとしてはいたって単純で、面白みは当て馬の存在しかない。別れたりやっぱり好きだと気付いたり。まるで中学生かよと突っ込みを入れたくなる。

結果、どのカップルも元の鞘におさまるという流れに少し違和感を感じた。再婚にいたらなくても、お互いを夫婦を超えた関係と再認識しつつも、成長しあい、結果お互い一人で人生を生きるという選択もいい気がする。その点はご想像にお任せを的な感じなので、あのあとのカップル達がどうなったのか。私はそんなふうに想像しよう。特に、紘一の父はこれまでの人生を壊すくらいの成長をとげて柔和な人になった。離婚は決してネガティブなものではないと思わせるいいお話だった。

このドラマの見どころは緒原紘一のキャラクター。瑛太さんの大げさな演技がとてもコミカルで本人も楽しそう。それを毎週見たくてはまったといってもいい。当て馬役の高橋光臣さんは、紳士的で終始好感しかなかったし、もう一人の当て馬役、白洲迅さんは、わがままで色っぽさと子供のような純粋さを合わせ持つ小説家の役柄を好演していた。北川景子さんは綺麗で、咲のキャラはぴったりだったけれど、咲自身に私は好感がもてなかった。そんなモヤモヤを救ってくれたのは、ドラマの終了10分前に流れる米津玄師さんのあの主題歌であった。音楽の力ってすごいな。


あのときキスしておけば(テレビ朝日)


あのときキスしておけばーあらすじ 

「おっさんずラブ」のチームと大石静さんの脚本がタッグをくんだ作品。放送前から話題になっており見始めた。BLラブコメで成功したドラマチームが新たな切り口である意味「無理やり」BLをからめて作ってきた感が最初は否めなかった。しかし、内容はBLでもなんでもなく男女のラブストーリー。井浦新さんの巴(麻生久美子)になっている演技力に圧倒されて、毎週楽しみになった。

松坂桃李さんと井浦新さんの絵面は最高によかった。田中マサオの身体を通じてそこに巴がいるとリアルに信じられる。わがままで自由奔放だった麻生さん演じる巴のキャラをいとおしくしてくれたのは、井浦新さんの演技力のたまもの。ももちは巴の姿のときは憧れしか持っていなかったのだが、マサオの身体で付き合っていくにつれて純粋に巴を女性として愛するようになる。その難しい描写がとても丁寧に、かつコメディたっぷりに作ってくれたところが素晴らしいドラマだった。

サブキャラもみんな個性的。みんなの嫌われ者の店長「エグゼクティブ信二」が最終的にももちの理解者になったり、家族を残して自殺しようとしてしまうくらい冷え切っていた田中マサオの家族が、巴とももちのおかげで再生していく姿などは感動もの。これは大石静さんの脚本力である。

「あのときキスしていれば」という後悔のタイトルだが、最終回までみると「あのときキスしていなかったからこそ」の奇跡に気付く。ももちは、巴に出会えなかったらいつまでポンコツでいただろう。愛する人との別れは、悲しいものばかりではないのかもしれない。人の人生を変える幸せにも変えることができる。マサオが2人の力になりたいと、うそをつき巴のふりをしてももちと巴は結婚にまでいたるが、マサオとわかっていて「キスしていいですか」と言うももちの純愛が苦しいほど尊かったし、その一瞬だけ巴が現れて思いが通じ合うシーンは号泣必死。素晴らしい名場面だった。ひたすらにいい話だった。

「巴さんに出会えて、生きていたかいがありました」というももちの言葉に心をつかまれた。生きていれば出会いが必ずあり、それが人生を変えることがある。田中マサオも自殺をしようとしていたが、ふいにこんな出来事と遭遇して一命をとりとめ「生きていたからこそ」人生をやり直せた。巴のように志半ばで亡くなる人もいるのだから、決して自殺はだめだ、もしかしたら、こんないいこともあるよ、脚本の大石静さんやドラマチームが教えてくれているようだった。くしくも、おっさんずラブチームは三浦春馬くんの「オトナ高校」でタッグをくんでいる。そんなような願いも勝手ながら考えてしまった。

こころにぽっかり穴のあいたももちの様子は見ていてつらい。「それでも君は生きていく」とももちを見つめる霊となった巴の言葉もせつない。でも、とても強いエネルギーも感じる。一生分の恋愛をしてしまったももちが、これからどう生きていくのか心配になるが、田中マサオと奥さんの間に新たに生まれた命が、もしかしたら救ってくれるのかもしれない。巴の生まれ変わりだったらいいな・・・などと勝手に想像した。


ドラゴン桜 シーズン2 (TBS)

ドラゴン桜シーズン2ーあらすじ

実はドラゴン桜は初見だったが、十分に楽しめた。受験にマジカルバナナゲームを持ち出したり、AIのように真剣に見本を示す水野先生の姿にこれで東大に合格できるのかと最初は心配にもなるが、桜木先生の説得力と迫力に気持ちよく丸め込まれていく快感が病み付きになった。

私達が普段思い込んでいる社会や受験などの常識を、途方もない長台詞で熱く論破していく桜木先生はまさにカリスマ。私でも東大に合格できるかも。私は馬車馬ではない!などと謎の勇気がわいて明日からの一週間をがんばれた。

生徒役の俳優は1000人のオーディションを勝ち抜いた若手実力派。演技力が高くそれぞれのキャラクターも個性的。特に推しキャラは藤井(鈴鹿央士さん)とヤンキー小橋(西山潤さん)と岩井(西垣匠さん)。3人とも第一話ではただのゲス野郎だったが、最終回では自らよりも仲間を思える人間力を発揮できるまで成長した。藤井と健太(細田佳央太さん)の友情にはただただ号泣しかない。俳優としてこれから様々な作品で彼らを目にすることが楽しみで仕方ない。

最終回の展開は、東大の受験当日の出来事、合格発表、学園の騒動の決着とそのどんでん返しまでが休む暇なく疾走感とともに描かれていて本当に素晴らしかった。シーズン1の生徒役だった山P(声のみ)や新垣結衣さんまでゲスト出演するなどエモいの極み。たった1時間15分ほどの中に3時間は映画を見たような満足感。学園のお家騒動は、実際にあった大塚家具のお家騒動をモチーフのしたのだろうか。どんでん返しのどんでん返し、というまさに「日曜劇場的展開」がファンを十分楽しませた結果の視聴率20%越えだったと納得した。


レンアイ漫画家(フジテレビ)

レンアイ漫画家ーあらすじ

このドラマは言わずもがな。私的に今期ダントツの勝利。この記事を書くために、一週間ぶりに公式サイトを訪れてみたが驚いた。最終回のあと2週間もたつのに、まだ多数のメッセージが寄せられている。今期ドラマの中で、最も視聴者を沼落ちにさせたドラマではなかろうか。しかし、いかんせん視聴率が悪く、話題にならなかったのが残念だった。

視聴率に関しては、色々要因はある。簡単に言えば、第3話まででファンを獲得できなかったこと、これは痛い。正直、第3話までは、鈴木亮平さん演じる主人公の刈部清一郎に視聴者の共感が得にくかったかもしれない。とにかく横暴でパワハラ的だし。あいこの恋を後押ししたかと思いきや「別れてこい」などと・・・。早瀬(竜星涼さん)がとても紳士的で完璧ないい男だったから余計、かわいそうで見ていてつらくなる。

刈部さんのキャラは冒頭無骨で横暴すぎる。そこはさすが演技派の亮平さんが演じる迫力なのだが、たまに見せる人間味、優しさなどは見逃すレベルに少ない。毎話最後に刈部ターンの描写があり、ちょっとキュンとするのだが、後に続く予告がもう少し長く引っ張っていれば。もう少し、恋ワクする描写があればいいのになと思った。第3話まではやや、あいこコスプレのほうに映像が偏りがちのような。正直、一般的な女子はアンチ吉岡里帆が多いのは事実。可愛すぎて演技力が高すぎるがゆえなんだけど。ラブストーリーを見るような世代の女性の受けはあまりよろしくないので、最初から亮平さんサイドの感情移入しやすい描写があればまだ視聴率はキープできたのかも。

そこを超えて3話、4話と見ていくと、刈部さんとレンとの関係が深まったり、あいこが同居し始めたりし始めてからは一気に刈部さんの人間味とドラマの面白さが爆上がりする。ああ、だからあいこ役は吉岡里帆さんだったのか、刈部さん役は鈴木亮平さんしかできる人がいないと思い知らされる、という感動の嵐。早瀬もあんな使われ方するとは!と目からウロコが落ち、2話までのもやもやはすべて綺麗に回収されて実に気持ちが良い。2人の0から始まる恋を丁寧に、過去のシンクロニシティも含めて描いている。こんなドラマが見たかった。だからこその、あの2話。されど2話が残念。ドラマの2話までってホントに重要ですよね。

まだ見ていないドラマ好きの方には、ぜひ今からでもいいから見て欲しい。刈部さんとあいこと一緒に恋をして、尊いラストまで見ると、世界が美しく見える。

レンアイ漫画家ーFODプレミアムで全話配信

そんな感じで、2021年春ドラマ、見てないドラマ、ドロップアウトしてしまったドラマ、色々ありますが、楽しませてくれてほんとうにありがとう!夏も生き甲斐を、よろしくお願いします。



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