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吉本ばなな「キッチン」

初めて読んでから35年。
久しぶりに読みたくなって手に取った。
30周年記念の装丁の文庫本。
朧げな記憶しかなかったが、読み進めていくうちに…
”そうそう、これこれ…”と夢中で読む。
みずみずしい文章に、初めて読んだ時の衝撃が甦える。
あの頃も一気読みしたな…。

主人公の”みかげ”に”えり子”が言った…
「うまく口に出せないけれど、本当にわかったことがあったの。
口にしたらすごく簡単よ。
世界は別に私のためにあるわけじゃない。
だから、いやなことがめぐってくる確率は決して、変わんない。
自分では決められない。
だから他のことはきっぱりと、むちゃくちゃ明るくしたほうがいい、って。」

のちに、みかげは…
「その頃の私には、その言葉の意図はつかめたけれど、ぴんとこなくて…
でも、今は、吐きそうなくらいわかる。
なぜ、人はこんなにも選べないのか。」

35年前の私もぴんときていなかった。
今は、吐きそうなくらいわかる。

読んで良かった。
明日からの抗がん剤に向き合えそうな気がする。

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