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「サイダーのように言葉が湧き上がる」を見た 最高

2回延期を重ね、1年2ヶ月待ったけど、本当に待ってて良かった!
こういうの見たかったぁ〜〜〜〜!!な83分間でした

SNSでなら上手く喋れるのになぁ……という人にはもれなく刺さる そうわたしです

※もちろんネタバレありきなので、以下は見たくない方はご注意ください。


コミュ障だけど俳句なら気持ちを綴れる男の子・チェリーと、明るくSNSの人気者だけど前歯がコンプレックスでいつもマスクをしている女の子・スマイル。
同じ街に住む2人が偶然出会い……?という話。
特別なことは起こらないし、ふたりも普通の子……だけど、それが良かった!!!!!これが見たかった!!!!!というお話だった

舞台は大きなショッピングモールがある片田舎(大きな団地があって、ニュータウン感がある)
そのショッピングモール内にあるデイサービスでバイトするチェリー。ご老人たちに混ざって俳句を作る。

チェリーが自分の書いた俳句を読ませられた時、
「俳句って言葉の芸術なのに…。」
「伝われよ、言葉に出さなくても」
というようなことを言うんだけど、これが…後々効いてくるんですわ
わたしも抜群にコミュニケーションが得意というわけではないし、普段Twitterで延々とツイートしてるような人間なので、ウッ…………と胸を抑えてしまった。
チェリーくんがコミュニケーションが苦手な理由は具体的には描かれてなかったんだけど、そういう人多いのでは?
明確に何かがあったわけではないんだけど、ちょっとした齟齬や、煩わしさとか、小さなことが積み重なって人と上手く話せなくなった、ということ…。

彼の俳句は素直なものが多く、きっとこういうことを本当は話したいんだろうな、と伝わってくるのでなおもどかしい
フォロワー4人のアカウントで毎日したためた俳句を投稿する。(このアカウントの絶妙なリアルさよ…)
別に誰かに伝えたいわけではない。上手く話せない「代わり」だったのかもしれない。多分彼にとって俳句を投稿することは日記のようなものだったんじゃないかな、スマイルに出会うまでは。


スマイルはフォロワー15万人の大人気動画配信者の女の子。
たまたまチェリーとスマホを取り違えてしまったことから繋がる。

即興で詠んだ俳句を、スマイルは「かわいい!」と言う。「声もかわいいと思う!」

かわいいってなんだ?
チェリーにとってはじめて受けるリアクション(多分)は彼の心にしっかり届く。
誰も見ていないんだろうなと思いながら淡々と投稿していた俳句に、スマイルの「いいね」がつく。
創作者はわかるかと思うんだけど…いつもいいねつけてくれる人がいるって気持ち、わずかに高揚し、「今度は見てくれるかな?」と期待しながら投稿ボタンを押す気持ちが画面から伝わってきてドキドキしちゃったな…。

チェリーがバイトするデイサービスにいる、いつも「YAMAZAKURA」というタイトルのレコードを探しているおじいさん、フジヤマ。

「忘れたくないことが、思い出せない……」と涙を流すフジヤマ。そのレコードには彼の若くして亡くなった奥さんの歌が入っていることがわかり、チェリーたちもレコード探しを協力することに。

そんな中チェリーとスマイルはちょっとずつ心の距離が近づいていく。

フジヤマの奥さんであるさくらのレコードには、「さよならは言わぬものなりさくら舞う」という俳句(きっとフジヤマ作)が。チェリーが近づく別れに思い当たり険しい表情をするのが印象的。チェリーは引越しのことをスマイルに言えない。

「山桜」は季語。花より先に葉が出ることから、出っ歯の人のことを指すと知ったチェリーがSNSに投稿した

山桜 かくしたその葉 ぼくはすき

という俳句。この俳句はSNSの海に流したけど伝えたい人はたったひとりだったんでしょうが〜!!とチェリーのことを小突きたくなった。

チェリーには決死の覚悟だっただろうけど、スマイルは受け取れない。スマイルは自分のコンプレックスがまだ受け入れられないでいる。

スマイルのコンプレックスの描き方もま〜……好きだったんだけど、彼女の出っ歯、子供の頃はチャームポイントで自分でも好きだった。だけど、思春期に入り、唐突に「いや」になってしまい、マスクで隠してしまう。
彼女の姉が「ある日突然自分の身体の一部が嫌になっちゃうことあるよね。」と言うのだが、ある!!!!!と大声で答えそうになった。あるよね?

スマイルはYAMAZAKURAのレコードに載ったさくらの写真(さくらも出っ歯)を見て、「さくらさんはどう思ってたんだろう…」とつぶやく。
出っ歯を出してにっこり笑うさくらをうらやましく思ったかな…自分のコンプレックスを見せている人見た時の複雑な感情思い出して、また、ウッ……となった


捜索の後ついに見つかったレコードも、意図せずスマイルが割ってしまい、結局レコードは聞けずじまい。その上チェリーの引越しはチェリーの意図しない形でスマイルに伝わってしまう。(ここのいや〜……な気持ち 見てて胸が痛すぎた)

一緒にお祭りの日に花火を見よう、と約束していたが、お祭りの日は引越しの日。チェリーよ……。ショックを受けたスマイルはひとりで帰っちゃうし伝えられなかった悔しさやもどかしさでチェリーは1人泣くし、あああああままならない つらい

という感じで迎えるお祭りの日。

なんとレコードが発見される(ここ、フジヤマがいつもショッピングモールの周りをウロウロしてレコード探していたのなんでだろう?となるのが回収されて、ああ〜!!!となる。なった)

ここは映画を見てください

フジヤマとさくらの若かりし頃の回想でもうべしょべしょに泣いた 見て お願いだから……

さくらもフジヤマにきっと「山桜かくしたその葉ぼくはすき」を言われたんだよ……わかるよ……ここでスマイルとリンクさせて二重でこちらに受け取らせる構図ずるいわ〜……と大の字になった

引越しのため車に揺られるチェリーはスマイルの配信でYAMAZAKURAを聴き、会場まで走る!

直接話すのは苦手だから俳句に気持ちを託していたチェリーが、サイダーのように湧き上がる言葉を俳句のリズムに乗せて叫ぶ。

それを受け取ったスマイルはマスクを外して答える。

伝えることは勇気がいるし怖いし、自分をさらけ出すことも勇気がいるし怖い。でもそれを上回る気持ちが生まれた時、人は言葉を紡ぐんだろうな〜最高だな……という気持ちで終わった


これ以上なんもいらねえ……という気持ちになれる映画でした。最高!夏の定番になってほしい。

力量がなく言及出来てませんがサブキャラたちもほんと〜……に良いキャラばかりなのでぜひ劇場へ!

それから、見終わったらぜひ!パンフレットを手にしてください。あまりも「ニクイ」デザインでやられた〜〜!!!と言いそうになった。


初日舞台挨拶も拝見できて良かった。演者さんや監督の好きなシーン聴けて良かったです。



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