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物語のなかとそと

朝が来たことを教えてくれるのは、
鳥のさえずりだったり、
漂うコーヒーの香りと
優しい声であったりしたことがあっただろうか。
頑張って記憶を遡ってみても、
そんな経験はない。

今は大方、尿意が朝の訪れを知らせてくれる。
5時前だったり、6時前だったり。
眠気をまとったままトイレに行き、
再び寝なおすも、二度寝していいんだという安心感からか、
眼が覚めてしまう。
枕元には夕べ読んでいた江國香織著
「物語のなかとそと」のページが折れた状態で置いてある。
手元に引き寄せて、
続きを探して読み始める。
江國香織は、それほど面白くはないけど、
都会的なセンスに、
ちょっとだけ村上春樹が混じったような
言葉重ねの断片的な表現、
私のようなおじさんにはない切り口を見つけては
感心するような楽しみ方をしている。
数ページ読んで二度寝に突入。
再び目を覚まして、
二度目のトイレで朝の10分間読書。
その次は会社に着いて、
仕事に取り掛かる前に、
銀行やどこかの待ち時間に、
お昼ご飯を食べた後に、
3時のおやつの代わりに、
夕方に仕事が終わった時に、
夕食の鍋が温まる間に、
夕食の後に、
寝る前の布団の中で、
本を読むのが日課になってしまった。

「物語のなかとそと」は夕食後に読み終わった。
次は石戸諭著「リスクと生きる、死者と生きる」、
最初のページをワクワクしながら読み進んで行く。
また、私一人では経験しえない物語の中に入って行く。
こうして一日に何度も、
物語の中と外を出たり入ったりする。
この読み終わりと読み始めが楽しくて堪らない。

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