レトルト
それは、塾の国語の文章題で、精神科医と患者である小さな女の子の別れを書いたお話だった。
衝撃を受けた。
先生は、女の子にわざと嫌われるような態度を取ったのだ。
その女の子が、病院から卒業するために。
そんな思考回路が存在することに、心底びっくりした。
当時の私は、人に嫌われないようにすることに必死だった。
小学校では、終わりの会でしばしば吊るし上げのようなことが行われていた。
〇〇さんが、悪口を言ってました、良くないと思いますー!
ごめんなさい。
謝ったら済むんですかー?
ごめんなさいぃ(泣)
ごめんですんだら警察いらん、泣いて反省の意を表せ、と、そのリンチのような惨劇は繰り広げられ、私は自分の存在が小さく薄くなるように息をひそめた。
先生もその場にいたはずなのだが、記憶には全くない。
私も被告か原告になったことがあっただろうか?そうだそうだと囃し立てたことはなかったか?
そのあたりの記憶は曖昧である。
なんにしろ、恐怖の時間であったのは確かだ。
そのためか、学校の先生になりたいと思ったことは一度もない。
実際、向いていないと思う。
その、なだいなだという精神科医の書いた小説の題名を、ずっとフラスコだと思っていた。
そのため、なかなかその小説を見つけることができなかった。
検索をして、どうやら私が探しているのはレトルトという作品らしい、と分かった。
絶賛絶版中であった。
がびょーん。
いつか読みたいフラスコ、違うレトルト。
藁半紙に印刷されていたその小説は、今の私の一部を構成している。
いつか古本屋で出会えないかな。
とっととネットで中古品を購入してしまおうか。
読んだら懐かしくて泣いちゃうかも。
ちゃんと読みたいような、読みたくないような。
運命の出会いは、捕まえに行かなきゃ、かな?
今年中に手に入れます!
(とっとと読めー!)
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