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地下二階の庭

どうしてこんなに悲しいんだろう。

雨の音が聞こえる。

どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。

何度も反芻する。

気を悪くしたんじゃないかと不安になる。

そんな自分が心底面倒くさくなる。

もう今日は誰にも会いたくない、そう思いながら本棚の背表紙を眺める。

本はいい。

誰かを傷つける心配がないから。
私が傷つく心配だけすればいいから。
 

自分が傷ついたことを誰かの責任にしようとする人は嫌いだ。大嫌いだ。

私は自分で責任を取ってるつもりだけど、本当は取れていないのかな。そうかもしれないなら、

私は不機嫌を撒き散らしたかな

いや、不機嫌を撒き散らす人に嫌な思いをしたから、自分が同じことをしたんじゃないかと心配になっただけだ。

もししてたとしても、あの人よりましだ。

反面教師として、気をつければいいだけだ。

ああもう心底本当に面倒くさい。

もういっそ嫌われた方が楽かもしれない。
そもそもの期待値が低い方がいいかもしれない。
完璧であるほどアラが目立つものだ。
もう少し隙を作った方がいいのだ。

何のために?

生きていくために。

微かな絶望をかかえ、私は地下二階の庭を夢想する。

それはナルニアへ続くクローゼット

不思議の国へと落ちる穴

私の半分はいつもそこにいる。

そこは私の地下二階の王国

シトリンの月が夜空を照らす、
緑の瞳の妖精王の森

壁に囲まれた世界の終わり

ああ、光る白い石を忘れずにね、
帰り道を見失わないように。




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