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unkodayo
かほり
ひたひたと夜がとばりをおろす頃
ぬらりとそのかほりは現れる
それは夜行虫の一種で
えもいわれぬ芳香を放つ
糸を垂らして待つ人の
魂をほんのちょっとだけ吸い取る
柳の下にそれはいる
楓の枝にそれはいる
惚れたはれたの妙薬は
痺れるような甘さの蠱毒
青い筋からほろほろと
こぼれ落ちる鱗粉と
複眼から放たれる使い魔は
人魚のようにヒトガタをとる
テンか狐か蟻地獄
ひらりひらりとのらりくらり
桃の実片手に振り返る
そんなはずじゃあなかったの
歌を歌えば雨を呼び
琴を奏でて死者を呼ぶ
ミイラ取りがミイラになるなら
嫌いで結構こけこっこ
かけっこ どどいつ 鬼ごっこ
軽率なのにもほどがある
可愛げさえありゃ何とでも
まっさかさまに落ちる井戸
魑魅魍魎とさかさかさ
ここらでちょいと一休み
とろけるような甘さの孤独
松の実クコの実さんざしジュース
立てば芍薬座れば牡丹
道に倒れてあなたを探す
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