メギド、やっぱり6章からが本番だったねっていう話/メギド72 感想文

※直接的な言及をしたつもりはないのですが、一応メインストーリー8章ぐらいまでのネタバレっぽい記載あるかもしれません、ご注意ください。


メギド72というソシャゲがある。


一部のオタクが熱狂しているわりにいまいち実際の規模が掴めないソシャゲと思っている人も多いのではなかろうか。 
実際自分も当初はそう思っていたし、ハマった今でもそうだよな…と思っている。

インストールしたきっかけは『ソロモン72柱が全部キャラ化されたゲーム』との文句をTLに流れてきた誰かの文句で知ったからだった。
元々真女神転生シリーズが好きだったこともあり、「72柱の擬人化ゲームっていうのも面白そうだな」と思ってとりあえず始めてみたのだった。
確か各メギドの好物うんぬんで盛り上がっていた頃だったのを覚えている。

で、当初の感想としては「やってて悪くはないけど際立って何か面白いという訳でもない」、「そのわりに色々面倒くさい、ただ音楽とキャラのモデリングには惹かれるものがある。登場人物の男女比が6:4くらいで性別が偏りすぎてないのは頑張ってる、ガチャは破格」というようなものだった。
UIは不親切だし、ロードはいちいち重いし(この2つはハマりきった今でも強く思うので改修頑張ってください…)、スタミナはあっという間になくなるし、そのわりにキャラクターの育成に要求される素材集め面倒だし、そもそも素材集めのために攻略しなくちゃいけないメインストーリーの難易度が初見で進めてるレベルだとキツい。

ストーリー自体は、正直「可もなく不可もない」だった。開始5分で村が焼けるってもそういうスタートのRPG結構あるしなあ…シナリオに出てくるメンバーもソシャゲのセオリー通り「シナリオ加入メンバー固定」みたいだし、こういうタイプのソシャゲなら他遊ぶかなあ、ということで、3章中盤ぐらいまで一通り遊んだ後は、ただインストールしたまま放置していた期間が長かった。
それでも消さなかったのはガチャが破格だったからだ。月末の所謂フェス期間で面白いぐらいに当たりが出るのである。このゲーム、キャラクターの中で当たりはずれがあるのではなく、オーブという装備品とキャラが一緒に出るタイプのガチャであり、装備にはレアリティが設定されているが、キャラ自体にはレアリティがない(=キャラが出ること自体が当たり)。その分かりやすさもあって、ガチャ欲を発散させるには丁度よかった。
あとホーム画面の音楽が何だかんだで聴いていて心地良かったのでそれ目当てで開いていたこともあった。


……ぐらいの立ち位置だったゲームに、今滅茶苦茶はまっている。


というのも結局のところメインストーリーが滅茶苦茶面白かった(=自分にぶっ刺さった)からに尽きる。
いやお前上でメイン可もなく不可もないって言ってたじゃないかというが、実際そうだった。ただし6章をやるまでは――正確にはステージNo.53に入って、「この作品はこういう方向性でやるんだな」と実感するまでは。

本格的にメギドに手をつけたのは昨年の秋頃だった。

既に8章が一つの大きな山を迎えていた頃で、その展開にてピックアップされたキャラが、所謂生粋…という訳でもないが一般的に見てあまり抒情酌量の余地の見当たらない悪党だったからだ(※しかもガチャ産)。「まあ人気あるみたいだしいつかは掘り下げると思ってたけど、それをメインでやるってどういうことだよ」と、TLが結構な大騒ぎになっていることもあり流石に少し興味が沸いたと、そんな流れだった。
メインストーリーは5章までが実質1部みたいなもので、その先の6章からガチャ産やイベント産のキャラもメインストーリーに顔を出すようになる、「6章からが本番だ」とは聞いていたが、「でもやっぱり6章からが本番だって言っても、ガチャキャラやイベントキャラって必ずしもプレイヤーの手元に加入しているキャラという訳でもないし、顔を出すと言っても時々の助っ人ポジションとか、良くて各エピソードの時にだけ一部のキャラが顔を出すぐらいの話なんじゃないの?期間限定のサブストーリーだと色々なキャラが既に仲間入りしている体でストーリーに参加しているけれど、それとメインは話が違うだろう(実際そういう形でメインとサブストーリーを分けているソシャゲは多い)」と思っていた。しかし、どうもそういう話でもなさそうだったので、若干ながらに気になってはいたのだ。

幸いにも今まで回していたガチャでキャラは揃っていたのと、初心者でも参加が簡単な割にレアな素材が大量に稼げるレイドイベント(=強襲)が丁度行われていたので、便乗して何とか一体(Rバルバトス)を星6にし、急場しのぎで戦力を作った。……ええ協奏パです。
で、突き進んだ。
さすがに物議を醸した編成だけあってシナリオ進めるにあたって音楽の威力は絶大であった。
それでもベレト戦やバラム戦やアスモデウス戦はきつかった。だけれどとりあえず例の6章までやってみようという気持ちで、ひたすらメインストーリーを進めた。

そしていよいよ6章。

正直当時の1節におけるステージNo.52までは「まあこんなもんか」という感想の範疇を超えるものではなかった。
確かにガチャ産のキャラクターは出てきたが、ストーリーのメインを張るのは所謂シナリオ加入の「いつものメンバー」であり、彼らの物語に助っ人としてガチャやイベント産のキャラクターが絡むという作りだった。
だが2節にあたるNo.53以降、段々話が変わってくる。シナリオ加入の「いつものメンバー」に絡むキャラクターの数が徐々に増えてくるのである。
ガチャ産のキャラやイベント産のキャラが「元から主人公の所に居た体で」(実際5章が終了した段階で初期のガチャキャラやイベントのキャラは全員主人公の仲間になったという設定)、主人公たちの会話にさり気なく参加してくる。

で、2節中盤。
 
主人公たちはとある理由によって戦力を分断され、「いつものメンバー+α」の先遣隊と、「その他のメンバー」である居残り組、それぞれで奮闘することになる。
ここで居残り組の動向に描写の比重が大きく割かれる。むしろこのエピソードの主役は主人公たち先遣隊ではなく、「その他のメンバー」である居残り組である。状況の打開方法を模索する面々の中に主人公やいつものメンバーの顔はない。 
ガチャで引いたりまだ引いてなかったり、イベントで手に入れたり、あるいは姿を見たきりだったといったような面々が、入れ替わり立ち代わり出番を得て、縦横無尽に活躍する。
 
結構な数のキャラが一気に出てくるので場合によっては置いてけぼりになりそうなものだが、「とにかく人手が足りない」を地で行く非常に過酷な展開なため、逆にちょっと顔を出して活躍するだけでも滅茶苦茶に株が上がり、印象に残るのである(例としてティアマト。登場パート自体はあまり多くは無いが、あの一瞬の活躍で私の中における彼女の株はストップ高になった。ガチャで引いておらず、私は彼女のことを強烈なヤンデレ系キャラということぐらいしか知らなかった)。
 
そしてこの2節が終わった時、「いつものメンバー」の構図は完全に崩れ去る。

以降のメインストーリーは5章ラストにて立ち上げられ、6章2節までに於いて詳細に描写された軍団「メギド72」全体の物語になり、キャラクターのゲーム的な出自は一切関係がなくなる。具体的には主人公と行動を共にするキャラの数自体が大量に増え、「いつものメンバー」は完全にその中の一人になる(良い意味で『埋もれる』)。
プレイヤーがそのキャラクターを所持していようがいまいが、作中に於いて彼らは主人公の軍団の構成員として、もっと言ってしまえば「メギド72」という作品の登場人物として振る舞う。
なのでガチャキャラやイベントキャラがいきなりメインストーリーのボスキャラの元身内だったことが判明したり、世界の秘密に主人公を差し置いていち早く辿り着いてしまったり(例の8章はつまりはそういう話だった)、ストーリーのキーキャラクターを釣り出してしまったりする。というかもうそういう展開ばっかりである。

そうするとどうなるか。

イベントの限定シナリオ(や各キャラクターの個別ストーリー)の存在感が一気に重みを増してくる。少なくとも私にとってはそうだった。メインストーリーで活躍した(あるいは顔を出した)キャラクターの理解を深めるためにイベントシナリオを読むようになるのだ。
イベントのストーリーは「あったかもしれない」寄り道やパラレルの出来事ではなく、メインストーリーの合間に実際に発生した物語の位置づけになっている。現在イベントにおける出来事はメインのどのあたりの時系列で起こったものなのか明記されており、メインストーリーがイベントシナリオの事件に言及することもあるし、その逆もよくある。


何よりキャラクターの連続性を実感することが出来る。「この時系列ならメインであの事件が起こった後だから、このキャラはああいう事情を抱えてこのイベントに臨んでる訳だな」といった期待感を持ってイベントシナリオを読むことが出来るようになる。
昔のライトノベルのシリーズ作品でよくあった『本編である長編は文庫書き下ろし、番外編の短編は雑誌連載』の形式と言えばわかりやすいだろうか。復刻を重ねて恒常化される=連載された短編が短編集として正式に文庫の形で出版される、みたいな。

この形式が正式に成立したのが6章である。というか、「そういう風に読めばいいのね」と私が理解できたのが6章である。
5章までも確かに(受け取りようによっては悪口にもなりかねない)ギリギリの所まで踏み込んだ忌憚のないキャラクター同士の会話とか、急場における冷静かつシビアなやり取りとか、物語のテーマを感じ取れるような世界設定とか、「特徴的で面白い」要素はいくつか見かけることは出来るのだが、やはり6章以降のギアのかかり方は違った。それを目の当たりにしたとき、とにもかくにも「もっと早くちゃんとやっておけば良かった」と私は非常に後悔したのだった。
そして以降はひたすらメインストーリーを進めた。流石に途中から音楽の力だけでは突破が出来なくなってしまったので、都度都度急場凌ぎながらその他の戦法を扱えるキャラクターを育てた。時にはスタミナやコンテニューのために石を割ることもあったが、とにかく先を読みたいという気持ちに突き動かされた。

そしてメインを何とか走り終えた現在、私は恒常化された過去のイベントシナリオやキャラクターの個別ストーリーを読みまくっている。
メインストーリーにフィードバックされるかもしれないし、されないかもしれない。それは分からないが、「直接的な言及があるなしに関わらず、全てのシナリオ(とそこに登場する人物)は互いに直接的に関連し、影響を与え合っている」と認識して読む物語はやはり面白いし、滅茶苦茶贅沢な物語体験をしていると実感できる。

というわけでTLの誰かの熱意に押されてメギド72をインストールした方がもしいらっしゃったら6章までやってみてください。特に最初のガチャで気になるキャラ出てきた人は是非是非やってみてください…って勧めたいところなのだが、やっぱりUIの不親切さとか育成難易度の高さとかは依然として(大分緩和されたとはいえ)残っている部分は正直否めない。まあなんというか色々と歯がゆい部分がある。もっとサクサク読めるようになればなあ。

ただ一回軌道に乗ればわりと育成も戦闘もなんとかなるんで(有志のwikiや企業の攻略サイト等もゲーム規模に比較してかなり充実している)、ストーリーの濃いRPGが好きな人には多分刺さると思います。ので是非是非!是非!

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