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AFC女子アジアカップ ノックアウトステージ1回戦 日本対タイ戦レビュー

この試合の見どころ

W杯出場権がかかった試合。韓国戦は試合運びやチーム全体の意識共有に課題が残った。そこをどう修正していけるか。

<先発選手の印象>

GK山下 43分のロングフィードは決定的チャンスの起点となっていた。

右SB清水 再三、積極的なオーバーラップや、攻撃の起点となるアーリークロスで数多くのチャンスを作った。後半82分、清水のクロスを植木が合わせGKと交錯したこぼれ球を菅澤が頭で押し込むシーンもあった。87分にも右サイドを深くえぐるドリブルがあった。疲れる時間帯にも良いランニングをみせていた。

CB熊谷 29分に危ないボールの奪われ方をして、タイの14番の選手にシュートまで持っていかれるシーンがあった。

CB南 10分の菅澤へのロングフィードはお互いにタイミングが合っていて良かった。37分、FKからのボールに果敢に飛び込んでいったがタイDFも頑張り決めきれず。44分、タイのカウンターが始まる雰囲気を見事なカバーリングで断ち切った。

左SB宮川 後半46分の宮澤との連携からのオーバーラップ、猶本へのクロス、良かった。後半89分の菅澤への縦に入れるパスも良かった。

ボランチ長野 先制点の起点となったスタートは長野の隅田への縦パス、非常に質が高かった。ここから仙台トリオがつながって、菅澤のゴールが決まった。24分の左の宮澤へのロングフィードはさすがだった。29分に狙いのよくわからないロングパスのミスがあった。

ボランチ隅田 26分、長野からの縦パスを受け、タイDFのプレッシャーを巧くいなして、広い視野を持って、フリーで待っている左サイドの宮澤につないだ。39分、素早いプレスバックでボール奪取にいったところを、タイの選手のハイキックにあい、危険なプレーを受けてしまったが、ガッツのあるプレーだった。後半は左のCKを蹴る機会が多かった。後半62分のCKの熊谷へのボールの質はなかなか良かったが、ゴールに至らなかった。

右MF長谷川 仕掛けるプレーで何度もタイの守備を崩し切るシーンがあった。ボールを持ってから、どんなプレーをするのか、選択肢・アイディアを豊富に持っていて、且つそれを実現する技術が伴っているため、長谷川のところで新しい展開を生む機会を多く作ることができている。周囲がそのイメージを感じ取る力が今後高まって連携が深まれば、もっともっと長谷川のプレーが生きてくる。前半9分のパスカットされたシーンや40分のパスミスは長谷川らしくなかった。

左MF宮澤 左サイドから再三チャンスを作った。特にマイナビ仙台でチームメイトの長野との連携はさすがだった。先制点のアシストとなった菅澤へのパスは、ファーストタッチの置き所も素晴らしく、パス自体のスピード、正確さ、タイミング、素晴らしかった。

1.5列目岩渕 試合の立ち上がりからよくボールに絡み、決定的チャンスを多く作っていた。宮澤や長谷川とのコンビネーションも非常に良かった。46分には、長谷川からのスルーパスを右サイドでフリーで受けて、宮澤のゴールにつながるアシストを記録。

FW田中 ゴールは入らなかったが、立ち上がり早々のチャンスのこぼれ球をしっかり狙おうと詰めていた。2分の長谷川からの右サイド縦パスを受けるラニングのタイミングは良かったが、相手DFにチャージを受けて、そこから足を引きずるような仕草を見せるようになった。その後もしばらくプレーを続けていたが、8分に菅澤と交代した。

<交代選手の印象>

FW菅澤 アクシデントで早めの出場だったにも関わらず、終わってみれば4得点。先制点は入っていくタイミング、足を伸ばすガッツ、ストライカーらしい素晴らしいゴールだった。浦和レッズレディースでもそうなのだが、非常に重要な局面でゴールを決める、プレッシャーの強さや冷静な判断能力が際立ったプレーヤーである。ハットトリックとなった自身3点目のゴールはしっかり体をひねって右隅に強シュートを打ち込むスーパーゴールだった。猶本とのコンビネーションも良い。89分の宮川からの縦パスをダイレクトで宝田に出した判断も良かった。

右MF猶本 後半、長谷川に代わってボランチではなく右MFとして出場。後半46分、左SB宮川からの質の良いクロスに入っていくタイミングがわずかにズレてゴールならず。数多くのCKを蹴ったがゴールに至らなかったことは残念だった。後半71分、菅澤への速いタイミングで送ったクロスボールは惜しかった。79分、相手GKのDFへのパスをカットして菅澤のスーパーゴールをアシスト。菅澤とのコンビネーションはさすがに良い。82分のプレスバックでカバーリングしたシーンは何気ないプレーだったが良かった。

FW植木 67分に中盤まで下がってボールを受けてからスピードアップしてドリブルを始めたプレーは迫力があったが、左サイドにフリーで駆け上がっている宮澤がいてパスを出せるタイミングが一瞬あったが出さなかった判断はやや強気すぎたか。70分の何気ないポストプレーは非常に良い展開を生む起点となっていた。75分のゴールは、相手のプレッシャーの中でも打つ選択をして生まれた。強気であることが良い場合と良くない場合のある試合だったが、強引でもゴールにねじ込む力があることが持ち味であることは間違いない。

ボランチ林 76分、中盤でボールを奪ったシーンがあった。77分、隅田に代わりCKを蹴る機会もあった。中盤の中継地点としてしっかりパスをつなげるプレーができていた。91分、パスは出てこなかったが、前線に上がるランニングも見せていた。そのとき隅田はしっかりと中盤にポジショニングしており、役割分担が最後の時間でもしっかりとできていた。

左MF宝田 後半72分のオーバーラップ、ランニングは良いタイミングでできていた。

まとめ

 今大会最も意思疎通を感じられる試合内容だった。グループリーグに全く出場していなかった岩渕が試合のスタートからしっかり集中して入り、ボールをよく触り多くのチャンスを作っていたことは、当たり前のように見えて非常に難しいことだと思うが、結果を残してそれなりに好調だったチームの中にしっかりと入っていくだけでなく更なる良い影響を与える集中力はさすがだったし、前半は2-0だったものの、こうしたスタートからの集中力が、ボディブローのようにタイに効いて、大量得点勝利の試合で終わることにつながったと思う。出場したすべての選手がしっかりと力を発揮したことで、これからの試合にも生きてくるだろうし、最も収穫の多い試合になったのではないだろうか。

 試合を通じて見えてきた課題はセットプレーか。コーナーキック等数多くあったが、やや単調な印象で、ショートコーナーでタイミングを外すとか、何か変化がもう少しあってもよかったような気がする。

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