見出し画像

2022WEリーグ再開!ちふれVS神戸(ピックアップチーム:ちふれASエルフェン埼玉)レビュー

第1回ピックアップチームは「ちふれASエルフェン埼玉」

 2022年3月5日(土)、ウィンターブレイクが明け、WEリーグの後半戦がスタートしました。後半戦は、WEリーグ参加全チームに注目し、一節毎にピックアップチームを決めて観戦記を記録していくことにしました!記念すべき第1試合目のピックアップチームは、「ちふれASエルフェン埼玉」です。

 2022年1月22日(日)、ちふれは、”The ELFEN Way”というクラブ哲学を発表しました。

 開幕前ではなく、ウィンターブレイク中に発表するというタイミングにより、後半戦へのクラブとしての意気込みを感じました。詳しくは上記のリンク先をみてもらいたいですが、クラブ哲学をシンプルに一言で言うと、

 more than just victory (直訳:ただ勝つだけでなく。)

ということになるそうですが、このクラブ哲学が、本日の試合の中でどのような形で具現化されるのか?というところも、ひとつ重要な注目ポイントとなりました。対戦相手は、首位を走るINAC神戸レオネッサ。ただ、中心選手として重要なプレーを供給していた杉田妃和選手が、2022年1月27日、アメリカの女子プロサッカーリーグNWSL (ナショナル・ウーマンズ・サッカーリーグ)で上位争いをしているポートランド・ソーンズFCに完全移籍することが発表されました。その影響がどのように表れてくるか、というところは前半戦からの変化のポイントとなりそうです。暫定順位で最下位と首位のチームの激突ということになりますが、さて、どんな試合になったのでしょうか?それではレビュースタート!

<試合全体レビュー>

 試合序盤はちふれの前線からのプレスがある程度効き、ややちふれペースで試合は進行した。23分にはちふれのビッグチャンスがあったのだが、FWの河野選手がゴール前でパスを選択してしまう。ボール保持はできていて、攻めてもいるが、シュート意識が低い印象が目立った前半だった。後半の序盤は、神戸がスイッチを入れてきて、50分、ゴール前中央エリアでクイックなタイミングで阪口選手のミドルが決まり先制。リーグ前半、神戸はボール保持率が低い試合でも、決めるべきところで決め、しっかり試合をクロージングして勝ち切るというパターンが多かったので、今日も結局そのパターンかと思われたが・・・。57分、左サイド吉田選手の鮮やかなキックフェイントからのクロスを、右SB松久保選手が折り返し、FW河野選手のボレーの押し込みが決まり同点。終盤にかけ、ゲームはヒートアップしていき、特にちふれはボールを奪いきるシーンやパスワークが増えたりと躍動感が増していたが、同点のままタイムアップ。ちふれの全体的な印象としては、チームとしてかなり細やかなコミュニケーションをとりながら、「ボールを奪う」ということに関して連動してプレーできていた。ボールを奪い、パスをつなぐ、というところまではできていたが、フィニッシュまで持っていく迫力が出せることは少なかった。特に印象に残った選手は、瀬戸口選手とボランチのコンビを組んだ、新加入の鈴木選手。正確なフィードでゲーム展開する姿、しっかりとチームの中にただフィットするだけではなく大きな力になっていたように感じた。

<先発メンバーの印象>

GK浅野 62分、至近距離で田中にシュートを打たれるが、しっかりと反応し、キャッチング。64分、自陣からのFKのキッカーとなり、良いリズムのパスワークのスタートとなる正確なフィードを蹴るなど、良いシーンがあった。80分のゴールキックからの右サイドへのフィードも正確だった。

右SB松久保 前半はあまり目立たなかったが、後半はオーバーラップするシーンが増え、ゴールのアシストとなる折り返しのボールを上げるなど勝利に貢献。

CB岸 前半30分、右サイドからニアに入っていく高瀬が狙っていたが、うまく体を寄せてチャンスを作らせなかった。失点シーンは、神戸の最初のポストプレーで体を寄せていたが、その後簡単にはたかれクイックでシュートを打たれ、決められてしまった。相手のシュートのタイミングを褒めるべきか。終盤でも高瀬とのマッチアップシーンがあり、上手く対応していた。

CB木下 後半72分、相手自陣で、アーリークロスにヘッドで合わせるシーンがあったが、枠をとらえられなかった。

左SB中村 11分、自陣コーナーエリアでプレッシャーのある場面で落ち着いてボールコントロールし、味方に丁寧にフィードしたシーンがあった。19分、縦のスペースが大きく空いている良い状態でパスを受けたにも関わらず、縦に勝負せずにバックパスを選択したシーンは非常に気になった。31分、安易なバックパスを奪われてしまうシーンがあった。

ボランチ鈴木 38分、成宮に中盤で読まれてボールを奪われてしまったシーンがあり、非常に危なかった。40分の右サイドで一瞬で前を向くボールの受け方は非常に巧かった。後半57分、中盤から右サイドに浮き球で展開したプレーは視野の広さを感じさせた。後半60分台は、うまく左サイドのオーバーラップを生かしたフィードをみせた。全体を通してよくボールに触り、中盤からゲームメイクする存在感を残したり、最終ラインまで落ちてきてパスワークを落ち着かせる役割を果たすなどした。

ボランチ瀬戸口 ゲームメイクに多く参加したり、セットプレーのキッカーを務めたりした。

右MF三浦 前半35分、右SB松久保と連動してボールを奪いきる見事なシーンがあった。後半51分、縦パスを受け、振り向きざまに見事な左足シュートを放ったが、バーに当たった。

左MF吉田 前半29分、相手の右SB守屋がドリブルを開始しようとしたが、ちょっとした隙を逃さず体を入れボールを奪いきるシーンがあった。左SBの中村との連携も良好で、ボールを持ってからのプレーも冷静でテクニカル。

FW祐村 エネルギーを持って前線からプレスをかけ、相手にプレッシャーを与え存在感があった。また、試合を通じて、度々、中盤や最終ラインくらいまで落ちてきて、ボールを触ってつなげるような変幻自在のポジショニングも特徴的だった。後半・終盤はボールコントロールの技術の高さやアグレッシブなプレー、前を向くファーストタッチなど、良さを発揮するプレーが多々見られた。85分には右サイドの1対1の場面からカットインしてシュートを放ったが、大きく外れた。

FW河野 ゴールシーンはしっかりふかさずボレーでよく詰めた素晴らしいゴールだった。随所に気の利いたプレーをみせた。

<交代選手>

左MF加藤 78分台、ボールを受けるシーンがあったが、相手に奪われたり、ボールを外に出してしまったり、なかなかうまくボールをつなぐプレーができなかった。

右MF西川 83分、祐村からアーリークロスがきたが、反応して飛び込むことはできなかった。

まとめ

 試合結果としては1-1の引き分けに終わった。杉田が去った神戸は、前半戦とは違ったチームになったように感じた。今後難しい戦いが待ち受けているかもしれない。対するちふれは、最下位という順位からすれば、首位のチームに引き分けたのだから上々といいたいところだが、今日の内容であれば、勝利を逃した、という表現がふさわしいように感じる。半田監督の采配も、1-1の状況で、攻撃的な選手を交代出場させていたし、勝利という結果を残したいというメッセージをチームに送っていたと思う。ボールを奪うところや、たまにパスワークの場面でも、コミュニケーションを深め、連動性を感じられるシーンは多々あったが、「ゴールを奪う」という点への迫力が不足していた。アグレッシブさは感じられるので、ゴールを決めきる意志をもっと表現できるようになってくると、もっと怖くて面白いチームになってくると感じた。試合前の注目ポイントであったクラブ哲学がどう表現されてくるかということに関しては、全選手がコミュニケーションを取り合いながら献身的にアグレッシブにプレーする姿から垣間見ることができた。もっともっと、観る人を感動させるポテンシャルを秘めたチームになっていくのではないかと思う。

サイトの深化・発展のために大切に使わせて頂きます。