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CB間にできてしまった大きな空間を突かれる/高橋美夕紀のシュートセンスが光る(WEリーグ2022第4節⚽マイナビ仙台ー大宮Ⅴ戦レビュー)

試合の注目ポイント

 女子サッカー日本代表国際親善試合WEEKによる中断期間を挟んで、WEリーグ再開。開幕3連勝中のホーム・マイナビ仙台レディースと、クラブ創設以来初の連勝を狙う大宮アルディージャVENTUSの試合。マイナビ仙台レディース優勢の試合となると思われたが・・・。

ハイライト・試合結果・スタッツ

先発選手の印象

⚽マイナビ仙台レディース

GK16 松本 9分、大熊のゴール前への速いパスに積極的に反応し、前に出てクリア。終始、叫びに近いような指示の声が響き渡った。34分、大熊の見事な左隅を狙ったシュートをしっかりと弾いた。

右SB19(→CB) 佐藤 14分、アーリークロスをあげるが、中と合わず。18分、最終ラインからのパスを受け、ダイレクトで中央に供給してリズムを生み出す。33分、サイドではがすプレー。

CB5(→後半から右SB→左SB) 國武 10分、ブラトヴィッチにロングフィードを通す。後半49分、右サイドで仕掛け、運ぶ、積極的なプレー。

CB3 市瀬 16分、國武との距離が大きく空いたところを、しっかりと高橋にみつけられてしまい、井上が抜け出し、GKと1対1となり非常に痛い失点。60分、右サイド、交代で入った万屋に正確なロングフィード。90分、左サイドから質の高いクロスを供給するが、シュートに至らず。終盤は非常に高い位置でプレーした。93分にも同様のクロスを供給し、シュートまでいったがGKにキャッチされた。

左SB4 高平 序盤、積極的なプレス、攻撃参加が目立つ。1分、CKのこぼれ球をシュートするが枠外。頻繁にオーバーラップし、クロスを上げるシーンが多かった。38分のクロスも中と合わなかったが惜しかった。55分、中に運んでから判断して左サイドにつなぐプレー。

ボランチ10 中島 滋賀県出身の32歳、3姉妹の末っ子、幼いころは柔道をやっていた経験もあり、サッカーは小学4年生から始めたとのこと(※)。CKのキッカーをつとめた。低い位置に落ちてきて、ロングフィードを供給する場面も。ボールに触ることは多かったものの、なかなか味方との連携で決定的なシーンを創出することは少なかった。40分にはゴール前でシュートも放つが、相手DFにブロックされる。後半47分、中盤で相手に寄せられながら巧いボールコントロールで奪われずにつなぐプレー。53分、左サイドからセンタリングを上げるが、望月にしっかりキャッチされる。54分、奪う、コントロールキープ、展開の一連の流れがよどみなかった。64分も狙いをもちながら怖さもありつつ、奪われない運びで様子を伺う巧みなプレー。65分、ミドルシュートを放つが枠外。79分、縦への仕掛けで推進力の高さをみせつけるプレー。

ボランチ7 隅田 6分、中盤の良い位置でボールを受け、左サイドに展開。その直後、タッチライン際で足をひっかけたのか、立ち上がれず、早くも交代。相手との接触はなかった。

右MF8 矢形 0分、開始早々、ボールをもつ鮫島に積極的にプレスをかけていく。31分、中に入っていくドリブルでリズムをつくる。後半は、うまく対応されてしまうシーンが多く、なかなか仕掛けたりシュートを打ったりするプレーに至ることが少なかった。

トップ下9 宮澤 神奈川県出身の22歳。国際親善試合イングランド・スペインとの厳しい試合で試合出場し、レベル差を経験してきた宮澤。(※)0分、左サイドでこぼれ球を拾い、縦に仕掛けてCKを獲得するプレー。1分、そのCKのこぼれ球もシュートするが大宮にブロックされる。序盤からハイプレスを積極的に仕掛けていた。後半52分、運び、はがすプレーをしてからパスを出すものの合わず。後半55分、ミドルシュートを枠内に放つが、GK正面。66分、左サイド縦に運び、中央のブラトヴィッチにパスしてミドルシュートを演出。85分、ハイプレッシャーの中でも奪われずに縦につなげるプレー。1人で奪われずに運ぶシーンは多く見られたが、他の選手との連動性の部分でうまくいくシーンが少なく、孤立する場面の多い試合だった。

左MF25 船木 56分、中盤で比較的フリーでボールを運び、逆サイド(右サイド)に大きく展開、正確につなげるプレー。

ワントップ(→トップ下)15 ブラトヴィッチ モンテネグロ出身の28歳、スペインで4年間プレーした経験をもつ(※)。13分、失点直後に、中盤で鮫島からボールを奪う積極的なプレーからチャンスメイク。33分には、ヘディングで宮澤に絶妙なパスを供給するプレー。献身的なプレーが随所に光った。66分、宮澤からのパスを受け、ミドルシュートを打つが惜しくも枠外。

⚽大宮アルディージャベントス

GK1 望月 16分、バックパスをダイレクトでロングフィード、大熊につなげる。このプレーがシュートまでつながり、追加点となる。試合中は、積極的な指示の声が響き渡り、チームを引き締め続けた。43分、望月のパントキックから始まり、井上の攻め上がり、仲田の駆け上がりからのクロスを五嶋がシュートで3点目。正確なキックで重要なきっかけをつくった。56分、危ないゴール前へのパスが入ったが、先に出てしっかりとキャッチングしてピンチを未然に防いだ。

右SB6 有吉 7分、負傷する隅田に声をかける場面も。29分、高平のオーバーラップからのクロスに落ち着いて対応。57分、仲田に正確に縦フィードを展開。

CB5 乗松 53分、市瀬の裏へのスルーパスをしっかり読みカット。61分、仙台の交代で入った後藤のスルーパスをしっかり読みカット。77分、ダイレクトで素晴らしいフィードを左サイドに供給するが、田嶋が体勢が崩れて受けることができず。82分、積極的なインターセプト。

CB4 長嶋 54分、左サイドからのクロスをしっかりとクリア。62分、左サイドへのフィードが読まれてカットされ、カウンターを受けそうになる。88分、逆サイド(右サイド)に正確なロングフィードを展開。

左SB3 鮫島 11分、積極的なプレーの連続が、先制点の起点となる!28分、相手のロングフィードにしっかりと対応。矢形とのマッチアップは、終始冷静に対応できていた。56分、仙台のクリアボールを出足早く反応し、押し返すプレー。その後も、左サイドで比較的フリーでボールを受け、運んでから井上にスルーパスするプレー。60分、エネルギッシュ・積極的なオーバーラップで仙台に脅威を与える。65分、大熊の大チャンスがついえた後もしっかりフォローしクロスを上げるポジショニング・タイミングの良さをみせる。
 この試合に限ったことではなく、今シーズンは昨シーズン以上に熱のこもったプレーを多く見せている。こうしたベテランの闘志あふれるプレーがチームの好調を支えているのかもしれない。

ボランチ10 五嶋 16分、大熊が競り合ったボールをしっかりと拾い、中盤で高橋に横パス、高橋が相手の陣形をよく見て中央の井上に絶妙フィードし、井上が追加点。重要な中継役を果たした。中盤で頻繁にボールを拾っていた。おそらくポジショニングが的確なのだろう。43分、仲田のクロスを冷静にシュート、3点目を決める。57分、高い位置でボールを受けるプレー。続かなかったが、五嶋の変幻自在のポジショニングが仙台を困惑させ、陣形を崩すきっかけを多く作ったのではないかと感じさせるプレーだった。65分、左サイドを駆け上がる大熊に絶妙なフィードを展開。

ボランチ15 林 後半48分、ブラトヴィッチと激しい空中戦で競り合い、お互いに体勢を崩す形となる。60分、中盤で縦パスを入れたり左に展開したり頻繁に中継しリズムを作った。72分、中盤でスライディングで奪うプレー。72分には、縦パスをうまくすり抜けて前を向こうとする積極的なプレーを見せるも、中島も対応してきて非常に見ごたえのある中盤のマッチアップを展開した。80分、中盤から正確な縦パスを供給。

右MF13 仲田 女子チームと男子チームを掛け持ちする小学生時代を過ごしていたとのこと(※)。28分、井上のポストプレーのパスを前を向いて受け、もう一度裏を追い越した井上に素晴らしいパスを供給。CKのキッカーをつとめる場面も。43分、井上が縦にドリブルしたところを追い越すプレーでパスを受け、クロスを上げ、五嶋がゴール。迫力のあるランニングが3点目を呼び込んだ。後半53分、高平の縦フィードをインターセプト。後半は前半以上に、仙台の選手より先に読んでカットしようとする意識が強く見受けられた。

左MF14 大熊 序盤から積極的に仕掛けようとする姿勢がみられた。16分、GKからのロングフィードしっかり競り合って味方につなげるプレー。このプレーが追加点につながっていく。同サイドの鮫島との攻守に渡る連携も日に日によくなっている。60分、左サイドからセンタリングを上げ、合わせることには成功するがゴールならず。61分、井上からのパスを受け、GKと1対1となりシュートを放つが弾かれる。65分、絶妙な五嶋からのフィードをタイミングよく受けることに成功。ファーストタッチからクイックにシュートを打てれば最高だったが、ボールをコントロールする判断により、チャンスはついえた。

FW11 高橋 福岡県出身の29歳(※)。11分、井上からのパスを、狙いすましたスマートなシュートで先制点。16分、五嶋のパスを受け、右サイドの仲田にパスを出す選択肢もある中、相手の陣形をよくみて、中央を走る井上に絶妙なパス、追加点のアシストを記録。62分、中央にカットインからの左足で弧を描くビューティフルゴール。

FW9 井上 11分、攻めあがる鮫島からパスを受け、ダイレクトアウトサイドで簡単に高橋にパスし、高橋がシュートを決め先制点。16分、高橋の好フィードを受け、GKとの1対1を冷静に決めて追加点。28分、有吉からのロングフィードを簡単に仲田にはたき、シンプルなポストプレーでチャンスメイク。プレスバックで危機的な場面をしっかりブロックするなど、守備面でも貢献。43分、GKのパントキックを市瀬がクリアしたボールを拾い、縦にドリブル、追い越す仲田をしっかりと認識してパスを供給、3点目のきっかけとなる重要なプレーを披露。試合を通じて非常に多くのチャンスメイクに関与し、プレスバック等守備面でも多大な貢献が目立った。

交代選手の印象

⚽マイナビ仙台レディース

8分 MF(→後半からCB)26 西野(out隅田) 負傷した隅田に代わり、急遽交代出場。62分、高橋に対応するが、鮮やかにカットインを許し、美しいシュートを決められてしまう。67分、宮澤に縦に速いパスを供給。

58分 FW11 後藤(out船木) 67分、前線から積極的にプレスをかける。69分、中央で宮澤からパスを受け、右サイドに展開するプレー。86分、ポストプレーを着実にこなす。90分、中島のパスを受け、ハイプレッシャーの中、闘志あふれるプレーでブラトヴィッチにつないだがシュートに至らず。

58分 左SB22 万屋(out高平) 大阪府出身の左利きの26歳(※)。60分、市瀬からのロングフィードを右サイドで受け、中央にしっかりとつなぐ。64分、左サイドからクロスを上げるが、乗松にクリアされる。

75分 右MF2 茨木(out矢形) 熊本県出身の24歳、新潟から移籍してきた選手(※)。83分、右サイドから反転して中央にコントロール、パス、技術を魅せた。

75分 右SB28 松永(out西野) 徳島出身の23歳。83分、シンプルに縦パスをつなぐ。

⚽大宮アルディージャベントス

59分 右MF25 村上(out仲田) 埼玉県出身の24歳(※)。60分、右からの大熊のセンタリングをヘディングで合わせたがゴールならず。77分にはお手本のようなパスアンドゴーの素晴らしい攻め上がりをみせる。87分、井上からのパスを受け、至近距離でシュートを放つがGK正面。

75分 左MF18 田嶋(out大熊) 77分、奪われたボールを再度回収するプレー。

88分 MF8 上辻(out五嶋) 94分、ハイボールにしっかりとヘディングで対応。

(※)は、実況解説(画面情報含む)からの情報

まとめ

 昨シーズンも、大宮のツートップ井上・高橋の素晴らしさが発揮された試合があったが、この日も2人の活躍が爆発した。4得点もさることながら、最終ラインが試合終了の笛が鳴るまで集中力を切らさなかったこと、中盤で林が闘志あふれるプレーで、高い技術を誇る中島・宮澤らとバチバチ闘ったこと、五嶋の変幻自在なポジショニングと正確なパス等の技術の高さ等、長野でだけでなく大宮でも着実に強い存在感を放ち始めていること、などが大量得点・完封勝利というこれ以上ない結果につながった。仙台は高い技術を持っている選手が多く、また開幕3連勝できていただけに、非常に悔しい結果となった。最終ラインの距離感と、ゴール前の迫力、前線と最後尾に大きな課題があると感じた。悔しさを闘志に変えて、これから素晴らしいサッカーに飛躍するひとつのきっかけになることを願う。

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