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塩越の臨機応変な判断力・猶本の華麗なるボールコントロール/前線で強かにゴールを狙っていた2人・・・川船のスピード・稲村の奪う力を見よ!(WEリーグ2022第1節⚽浦和ー長野レビュー)

 2022年10月22日、WEリーグセカンドシーズンが開幕しました!今回の記事では、10月23日に行われた浦和ー長野の試合のレビューを書いていきます。昨シーズンはピックアップチームを1チーム決めて、決めたチームサイドの視点でレビューを書きましたが、8月~10月に行われたWEリーグカップからは、ピックアップゲームを決め、両チームのレビューを書く試みをしてきました。そして、セカンドシーズンとなる今シーズンの新たな試みとして、1試合を通して印象に残ったポイントや選手をタイトルで表現し、興味を惹きやすい記事づくりを心掛けることにしました。難易度がさらに上がってしまいましたが、続けていこうと思います。

試合の注目ポイント

 WEリーグカップ決勝で劇的な逆転勝利で優勝した浦和と、浦和と同じグループで最後まで予選リーグ首位争いを演じ、WEリーグカップを大いに盛り上げた長野の対戦。熱い試合が期待できそうである。

先発選手の印象

⚽三菱重工浦和レッズレディース

GK2 福田 1失点目の川船の素早いシュート、2失点目の稲村の浮かせたシュート、どちらも悔しい失点で、相手の巧さを褒めるべきだが、強いていえば、DFがミスしそうな場面で的確な声掛け・コーチングができていたのかどうか。一番視野が確保しやすいGKのコーチング次第で、防ぐことができた2失点だった可能性がある。

右SB17 遠藤 実況解説によると、さいたま市出身のプレーヤー。後半48分、コーナーキックでヘッドで合わせてGKがはじいたところを、しっかり詰めていたが、ゴールならず。

CB7 高橋 ファーストタッチの置き所の判断の良さが光り、プレッシャーのある局面の中でもボールを奪われなかった・・・と思われたが、86分、ボールを保持してから切り返そうとしたところを、稲村に狙われて奪われゴールを決められてしまった。54分、右サイドの遠藤に正確なロングフィード。77分、長野のプレッシャーを受けながらも、中盤で待ち受ける塩越に絶妙な縦パスを入れる好プレー。82分、猶本のFKに戻りながらの難しいヘディングシュートを当てていった。

CB30 石川 19歳。実況解説によると、JFAアカデミー福島出身のプレーヤーとのこと。16分、相手のゴールキックを、長野の選手がヘッドで競り勝ち、こぼれたボールの処理が中途半端なGK福田へのバックパスとなったところを抜け出した川船に決められてしまった。簡単にサイドにクリアする判断で失点リスクを回避することもできたと思うが、つなぐ意識が強すぎるのか、ハッキリとしたプレーができず失点してしまった。30分、遠藤への右サイド裏へのスルーパスは狙いはよかったがつながらず。積極的に縦パスを入れようとする姿勢を随所にみせた。後半49分、猶本のCKのボールを戻りながらヘッド、完全にミートしていたが、相手GK正面だった。難しい技術をいとも簡単そうにやっていた。セットプレーの石川、要注意である。56分、中央エリアにポジショニングする猶本に縦パスを通す。83分、菅澤へのダイナミックなフィードがつながっていく。

左SB3 上野 実況解説によると、浦和ジュニアユース出身で、千葉に在籍していたこともあり、その時キャプテンも経験していたそうである。出身も千葉県。時々、強気で仕掛けようとするシーン等もあったが、全体としてはそつのないプレーを続けていたという印象である。

ボランチ18 柴田 実況解説によると、キャプテンマークを巻いて今年で6シーズン目。監督・チームメイトらからの絶大な信頼を獲得している選手である。「浦和でやるサッカーが楽しい」ということが浦和でプレーし続ける理由とのこと。4分の塩越のゴールは、長野のスローインをヘッドで跳ね返した柴田のプレーから始まっている。後半47分、水谷の浮き球パスをオーバーラップして受け、CK獲得。

ボランチ19 塩越 4分、猶本の浮き球ヒールのパスを見事にコントロールし、中央エリアでドリブルでスルスルと駆け上がり、長野のプレッシャーが弱かったこともあり、左隅にスマートにゴールを決めた。あっけなく簡単そうなゴールに見えたが、繰り返し見ていくと、塩越の読みの良さ・基礎技術の高さが詰まった素晴らしい先制点であることがわかる。このゴールは、長野のスローインをヘッドで跳ね返した柴田が起点になっているが、その起点にいちはやく反応し近寄って簡単に展開した塩越のプレーも効いていた。32分、中央に運ぶドリブルは圧巻、その後、絶妙な加減の左サイド上野への展開パスを供給。左サイドのCKのキッカーをつとめ、後半48分には、ドンピシャのボールを供給したが、ゴールならず。

右MF11 清家 実況解説によると、浦和ジュニアユース出身とのこと。4分の塩越の先制点にワンタッチで絡んでいる。10分、3人のプレッシャーを受けながら、強気で振り抜き追加点ゴールを決める。42分、絶妙なポストプレーからの安藤へのパス。後半46分、比較的フリーな状態で右サイドから菅澤にドンピシャクロスを供給するが、ゴールならず。

トップ下8 猶本 4分の塩越のゴールが生まれるドリブルの直前にヒールによる浮き球パスでワンタッチ絡んでいる。7分、菅澤に速く正確な縦パスを供給、決定機を演出した。10分、2点目のきっかけとなるシュートを放った。ボールをキープするのか、ドリブルで運ぶのか、展開するのか、といった判断やタイミングがいちいち素晴らしかった。右サイドのCKのキッカーをつとめ、後半49分には質の高いボールを供給し、中とも合ったが、相手GK正面だった。64分、高い位置で肝付からボールを奪い、決定的な場面の中核となり、最後にはシュートも放ったがGKにキャッチされた。75分、相手を認識し、奪われないように鮮やかなターンを魅せる。91分、疲れているであろう時間帯に、お手本のような力強いコントロールオリエンタードと細やかな切り返しドリブルで一気に2人を抜き去る鮮やかなテクニックを披露。しかし、その直後に、足がつっているような様子が画面にうつしだされ、担架が用意されかけるが、立ち上がってプレーを続行。

左MF10 安藤 10分、2点目のきっかけとなる奪ってつなげるプレーがあった。

FW9 菅澤 千葉県出身の32歳。7分、猶本の速い縦パスを胸トラップコントロール、切り返して相手DFをかわし、決定的シュートを放ったが、相手GKにセーブされた。

⚽AC長野パルセイロ・レディース

GK1 伊藤 左利きのGK。1点目は伊藤のゴールキックが起点だった。

右SB15 奥津 5分、インターセプト。51分、右サイドで菊池と連携してオーバーラップしてきた水谷の仕掛けるプレーを止める場面があった。67分、安藤のパスを足を伸ばしてカット。74分、ゴール前の大久保にアーリークロスを供給するが惜しくも合わず。

CB22 奥川 マイナビ仙台レディースから加入してきた選手である。67分、インターセプト。

CB5 岩下 64分、猶本から菅澤へのスルーパスが出て決定的な場面となりかけるが、素早い戻りで難を逃れる好プレーがあった。72分、栗島の縦のフィードにしっかり反応し、クリアで外に出す。85分の島田の反転からの豪快シュートのシーンでプレッシャーに行っていたのは岩下だった。島田を褒めるべきか。

左SB3 岡本 28分、清家からボールを奪う。61分、インターセプト。

ボランチ2 肝付 39分、菊池からのクロスにニアで合わせようとするが、惜しくも合わず。

ボランチ7 三谷 2失点目の清家のゴールに最後に体を寄せていたが、防げなかった。

右MF14 菊池 宮城県出身、20歳のプレーヤー。39分、ニアの肝付めがけて質の良いクロスを供給するが、わずかに合わず。51分、右サイドで奥津と連携してオーバーラップしてきた水谷の仕掛けるプレーを止める場面があった。55分、安藤からボールを奪うが、その後のパスがつながらない。CKのキッカーをつとめた。74分、石川の縦パスを中盤で回収。

左MF18 伊藤 8分、左サイドから、決定的シーンとなりかけるようなクロスを入れるが、中に合わず。

FW11 川船 ゴールキックを長野の選手がヘッドで競り勝ったボールを石川が触るも、中途半端なバックパスとなり、それに素早く反応し抜け出してGKと1対1となり、シュートを決め、1点返した。44分にも、ボール奪取からシュートを放ったが、GKにキャッチされた。

FW10 瀧澤 CKのキッカーをつとめた。39分、テクニカルなボールコントロールから展開するプレーをみせる。

交代選手の印象

⚽三菱重工浦和レッズレディース

46分 左SB16 水谷(out上野) 47分、絶妙な切り返しから味方につなぐプレー、その後も良いコンビネーション・距離感の好プレーを左サイドでみせる。後半早々、試合の入り方は、上々。54分、ボールを浮かせてかわしてから、しっかりボールコントロールして味方につなぐプレー。65分、インターセプト。

61分 右SB6 栗島(out遠藤) 実況解説によると、浦和ユース出身。島田のゴールのきっかけとなるスローインを投げた。

70分 FW15 島田(out安藤) 実況解説によると、浦和ユース出身。83分、栗島のスローインを受け、反転しながら豪快シュート、ストライカーらしい素晴らしいシュートが決まり追加点!

88分 FW14 植村(out清家) 90分、菅澤からのパスを受け、縦へ抜け出そうとするが、展開ならず。

⚽AC長野パルセイロ・レディース

70分 ボランチ6 大久保(out三谷) 74分、奥津のアーリークロスにゴール前で反応するが、合わず。76分、中盤から縦パスを入れるが、つながっていかず。

70分 MF28 稲村(out川船) 75分、猶本の鮮やかなターンになんとかついていった。86分、高橋の切り返しのタッチを狙って見事に奪いゴールを決めて1点差に迫る。

70分 FW29 小澤(out瀧澤) 千葉レディース出身。奥津からの縦へのフィードを受け、仕掛けようとするプレーがあった。前線から激しくチェイスする場面も。88分、左足でシュートを放つが枠外。

88分 MF8 福田(out伊藤) 88分、岡本の縦パスを受け、さらに縦へと展開しようとするが、奪われる。

まとめ

 WEリーグ開幕戦であるこの試合は、埼玉スタジアム2002で行われ、4604人の観客を集めた。声出し応援もOKとなった試合であり、熱い声援は画面越しにも聴こえてきた。
 前半の長野の2失点はいずれも低い位置での長野ボールのスローインを奪われるところから始まっている。「着実につなげる力」は長野の課題である。
 一方の浦和の2失点は、いずれもDFのミスから生まれている。セーフティ優先の判断であれば防げた失点だが、ハイレベルなテクニックを低い位置でも発揮することは浦和のプライドに関わるような部分でもあるので、おそらく今後も、無難にセーフティ優先の判断をするのではなく、サッカー技術のさらなる向上の方向にレベルアップしていくことを目指し続けていきそうである。
 浦和のような巧いチームは相互に意思疎通ができているかのようなパスワークが展開されると感じる。それも絶妙なテンポ・リズムで展開され、瞬間・瞬間で、多くのことを考え、判断していることは間違いない。
 特に、この試合に限った話ではないと思うが、塩越の細やかで素早い判断力・基礎技術の高さはすごいなと改めて思ったし、ボランチとして中盤でボールを奪う場面も多々あり、攻守に渡り、遺憾なく力を発揮した。
 CBの石川が積極的に縦パスを入れる姿勢も非常に印象に残った。通らないことも多々あったものの、狙いは良いことが多かった。
 猶本の前線でボールを奪う力も相変わらず冴えわたっている。ボールコントロールや展開力といったMFに不可欠な力も華麗に魅せてくれた。
 最後に、島田の豪快なゴールにも触れておきたい。ゴールの後に失点しているので、たらればとなるが、このゴールがなければ引き分けや負けといった結果になったかもしれない、重要なゴールを決めた。スローインから反転してダイナミックにシュートを放った、ストライカーらしいゴールだった。これはこの先の島田選手の自信になっていきそうなゴールである。
 長野は、1点差まで迫った、一瞬を見逃さず決定機を決めて接戦に持ち込んだ姿勢は非常に良かったが、内容的には力の差があったといわざるをえない。この悔しさを、今後どう生かしていくのか、注目していきたい。

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