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「リコリス・ピザ」観た、なんかずっと残ってる

この映画を見たのはたぶん半年くらい前で、
観た直後は「なんか、あんまり感動しなかったな…」くらいの感想しかなかったんだけど、半年くらい経った後の記憶の残り方がすごい良くて。
結果これすごくいい映画なんじゃ、と思って今note書いてます。

公開当時はXでジェーン・スーさんとか、私より二回りくらい歳上のお姉さんが褒めてて結構流行ってたイメージなんだけど…。観た後すぐにこの映画の良さが理解できるってすごい。年の功的なものが必要なのか?
「TAR」とかも今更映画の良さ実感してるところあるし…。年を経ることに、実感できること・理解できることが増えて、良さを噛み締めるスピードというか「映画の味わい方」みたいなのがわかっていくのかなぁ。

この映画、めちゃくちゃ感情移入できるわけでもないし、誰でも好きな名シーンやグッとくるエピソードも特に無い。予告で使われてるシーンも正直ちょっとよくわかんなかった。映画の技術的にすごいことが行われてるかもしれないけど、それもわかるレベルじゃないし。結末もまじで覚えてない。
だから、わからないときは本当にわからないので「何この話?」「このくだり要った?」みたいな感想が出てくるのもすごいよくわかる。人に話すときにどういう映画なのか説明するのすごい難しい。

でも、なんか記憶に残ってるシーンが、映画で感動した記憶というより自分の昔のなんでもないような記憶に似ていて、ふとした拍子に思い出しちゃうのがこの映画のすごく素敵なところなのかも。
いつだったか、結局どうなったかなんて何も覚えてないけど、あの時あの子がマジでキレててちょっと面白かったんだよなアハハと誰かと思い出して笑ったり、その日と似た天候のときの友達との帰り道が脳裏に蘇ったり、ほんとなんでもない人生の一コマをふと思い出す感じにすごく似てる。
「リコリス・ピザ」のあのシーン!って感じの覚え方じゃないから、ふとした拍子に「女の子がガス欠したトラックなんとか転がして坂道を降りたこと」とか「夜の広場でおじさんが女の子とバイク二人乗りしたこと」とか「学校のバザーにウォーターベッドを売りに行ったときのこと」とか、色々なシーンが記憶から出てきて「あれなんの映画だっけ」と調べて「リコリス・ピザ」を思い出すことが多い。

物語の蛇行っぷりと、なんでもないシーンが妙に印象に残るっていうところはタランティーノの「パルプ・フィクション」(大好き)にちょっと似てるかも。
フランスのビックマックはル・ビックマックと呼ぶことや、手についた血をお世話になった人の家のタオルで拭いてマフィア二人が揉めてたシーン、そういう本筋とは全然関係ないところをずっと覚えちゃってるのって何でなんだろう。
名シーン!って感じじゃなくて「なんか良いくだり」としてずっと記憶に残ってる。

これからも、誰かと車で山の坂道を下りてるとき、酒の席でおじさんのどううでもいい過去の栄光を聞いてるとき、朝帰りで心底怠いのに路上で友達が謎にはしゃいでるとき、もしくは映画のシーンと全然シンクロしてないときも、何かと「リコリス・ピザ」を思い出して「また観たいなぁ」という気分にさせるような映画だな、と思いました。スルメ映画。





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