見出し画像

お節介おばさんになりかけた話

半年くらい前の、日本に一時帰国中だった時の話。

その日は京都にいた。
京都は帰国する度に行く、大好きな土地のひとつ。
京都にいる時は私はとにかく歩く。
バスは混むし地下鉄は景色が見えないからつまらない。
なので歩く。
グーグルマップ様様で、あれがあればどこだって歩いていける気がする。
一度なんかは京都に来れたのが嬉しすぎて楽しすぎて、清水寺近くに取っていた宿から出発してまず祇園をぐるっと回って、錦市場を往復し、祇園白川を歩き、南禅寺、哲学の道からまた歩いて下鴨神社と上賀茂神社を参拝した後、大徳寺まで歩いた。
流石に疲れて宿までの帰りはバスに乗ったけれど。
こういう風に歩くのは基本的に一人の時。
流石に人に付き合わせるのは気がひける。

そんな風に歩き疲れた日、夜ご飯をどこで食べようか考えていた。
ふと、以前ある人が薦めていたお店を思い出した。

レトロなビルの地下にあるそのカフェレストランはたまにライブをやっていたりするようで、その日もジャズライブが開催されるらしかった。

席についてオーダーをしてから料理が来るまでワインを片手に本を読んでいた。

そうしていたら、隣りの席にひと組の男女が来た。
とても席が近いので、聞く気がなくても会話が耳に入ってくる。

婚活中の男女らしく、何度目かの食事デートのようだった。
料理を楽しみながら聞くともなく聞いていると、どうにも会話が噛み合っていない。

男性が少し年下の若い女性を頑張って口説いている。(たぶん30歳前後の男性と20代前半の女性)
こんなに可愛い人にまた会ってもらえるなんてとても嬉しいとかなんとか。
そのあとはお互いがそれぞれの希望する理想の結婚生活を言い合っていたのだが、本当に言い合っていただけだった。

私はこういう結婚生活がしたい。
僕はこんな結婚生活がしたい。
具体的なのは結構なのだが、それぞれが一方的に理想を並べ立てているだけの会話にとても違和感を覚えた。
相手がどんな反応をするのか見るためにジャブを打ち合うような会話。

理想があり、それを言語化できるのはいい事だとは思う。
だけど理想をそのまま叶えてくれる人なんているわけないし、いたら何か裏がありそうで怖い。
理想はあくまで理想で、そこから相手と折り合いをつけて価値観をすり合わせていく。
それができないと健全な関係を構築するのは難しいように思う。
とはいえ他人のことだからよく見えるだけで、私もコミュニケーションは苦手だから難しいのはよく分かる。

とにかく理想を描き合う噛み合っていない二人に、ちょっとちょっとお二人さん、相手を慮ることや歩み寄りも大事だよ?理想の結婚生活で妥協できるところはどこ?相手の理想で付き合えない点はどこ?それは何で?なんていちいち口を挟みたくなってしまった。

せっかくメッセージのやりとりや電話でのやりとりから対面で会う機会が持てたみたいだったから、もっとお互いに影響し合う会話、掘り下げる会話ができたら上手く関係を構築できるかもしれないのに…と隣りでヤキモキしてしまった。
どこの誰やねんとなりかねない展開だから黙っていたけれど、ちょっと一言言いたかったな。

あの二人、あの後どうなったんだろう。
あの調子だとたぶん上手くいっていないと思うけれど。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?