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人間天使

ポルトガルでは人間天使のような人の家に泊めてもらっていた。
彼女は夫の親戚でポルトガルのとある美術学校の先生をしている。
いつも穏やかでニコニコしていて人のことばかり考えている。

今回も彼女からの是非家に泊まっていってという希望から甘えさせてもらってきた。
泊めてもらっている間も何から何まで気遣いが行き届いており、こちらが気疲れしないか心配になるくらい良くしてくれた。

彼女は一度離婚していて子供が二人いる。(どちらも成人済)
子供二人もたまに会うのだが彼らは父親のことを誇りに思っており、会うたびに私達に父親の話をする。
その元夫には私は会ったことがないのだけれど、爵位のつく裕福な家の出身者でお金への執着がとても強い人らしい。
彼女自身かなりの資産家に生まれたのだが相手側家族から釣り合わないと見なされたようで扱いは酷かったようだ。
離婚は元夫から言い出したらしいが、その数ヶ月前に家の契約書や車、財産に関する書類にサインを求められて彼女は何の疑問もなくサインしてしまった。
数ヶ月後に離婚宣言された後に書類を細かく確認すると、すべて相手側に有利になるように書かれていた契約書だったそうだ。
おかげで彼女は多くのものを失った。

一時は永遠の愛を誓った相手によくそんな事ができるなと呆れる。
子供達は裕福な暮らしに慣れているから、彼らの生活レベルを落とさせないために彼女は馬車馬のように働いて高級住宅街に住み続けた。
子供達から父親の批判を聞くどころか自慢ばかり聞くということは彼女が元夫の否定的な事を一切言っていないのだと思う。
あくまで子供達にとっては父親だから敢えて言わないのだろう。
なかなかできる事ではないと思う。

彼女には欠点がひとつある。
それは受け取り下手なこと。
いつも良くしてくれるから、会う時は沢山のお土産を持っていく。
すると渡すそばから彼女はそれを誰にあげられるか考えている。
私と夫は口酸っぱく « あなたにあげてるんだよ »と何度も言う。
彼女らしいと言えばらしいのだけど。

泊めてもらったお礼にレストランに招待しようにもなかなか支払いをさせてくれず、一度はこっそり彼女が支払ってしまった。
ポルトガルはフランスよりかなり賃金が低いのも知っているから私と夫はかなり頭をかかえた。
泊めてもらった上にご馳走様になるってわけわからん。
すんなり喜んで受け取ってくれたらこちらも嬉しいのに。

ともかくポルトガルに行かない限り残念ながらあまり接点はないのだけれど、今回一緒に過ごす時間がいつもより長く持ててとても嬉しかった。
今のパートナーも優しく面白い人で、彼女が幸せそうでそれが何より嬉しかった。

暖かく優しく思いやりに溢れた彼女。
一緒にいると心が洗われるような気がした。
なるべくこういう人の近くにいたいなと思う。

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