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第42回JT杯 決勝戦(東京大会) 豊島将之JT杯覇者 対 藤井聡太竜王

JT杯東京大会(幕張メッセ 国際展示場1~3ホール)に行ってきました。早起きして日帰りです。早起きは三文の徳ということで、いつものように早朝の出発です。

●会場
13時ぐらいに会場に着くと受付が始まっていました。受付をして、パスを貰って、列を並んで会場入りして、番号順にまた整列。要するに整理番号順に自由席に向かうということですね。入場時間までまだ時間があるのでお茶を買いに売店へ行きました。
お昼を食べていなかったのでお腹がペコペコです。でもすぐに並ばないと行けないので、チョコカステラを手に取ります。

売店のおばさま
「あんた、そんなんやめときな。こっちのチュロスのほうが美味しいよ。おばちゃんが補償してあげるからこっちのチュロスにしな。まずかったら返金してあげるよ」

わたし
「え……あ、はい(勢いにまける)」

言われるがままに、チュロス400円(高い!)を食べました。確かに美味しかったです。さすがチュロス!ディズニーランドに思いを馳せましたが、実は名前がチュロスでは「チュリトス」でした。
ここはディズニーランドではない。海浜幕張だ!

さぁ入場。座席が決まりました。前が開いたので少し前の席に移動してと、幸運でした。ふと、会場を見回すとABEMAくんを抱いたABEMAの藤崎さんがいます。ファンの方とツーショットを撮られているので私もお願いしました。

わたし
「わーーー、ABEMAくんだ!」

初めて触るABEMAくんはふかふか。ふかふかです。かわいい。藤井聡太竜王持ちをして藤崎さんとABEMA君とお写真ご一緒していると!!

ABEMAの藤崎さん
「そのABEMA君、この後、藤井聡太竜王と豊島将之JT杯覇者の撮影に使うんですよ」※微笑み

ピキーーーン。固まって、そのまますっとお返ししました。皆様。大丈夫です。入り口で手の消毒しています。
いつか、うちの家にも来てね、ABEMA君。


●将棋連盟の販売コーナー
テーブルマークコーナーに応募に行きました。その後、将棋連盟の販売ブースコーナーへ。おお。幸運です。通販戦争に負けてしまった「三冠 藤井聡太 小振扇子(万里一空)」があるではないですか。
早速購入です。
この時、買った扇子の揮毫の意味を数時間後に噛みしめることになるとは思いもしませんでした。

販売ブースでひときわ声を出されている方がいます。
この半年で何度かお会いした方――叡王戦、竜王戦と何度か現地に行った際、大盤解説会の司会をされている将棋連盟の方でした。

わたし
「こんにちは(声かけても大丈夫かな……)」

将棋連盟の方
「ああ! こられていたんですね!」

わたし
「今日も楽しませて頂きます!」

この夏。いえ。今年の半分、藤井聡太竜王と豊島将之JT杯覇者の対局を観てきました。今年はこれがお二人の直接対局は最後の一局ですね。そう思うと、しんみりしてしまいますが今日も大応援するしかない。

両対局者のご挨拶がありました。
お二人とも公開対局への意気込みを語られていました。


●盤上のドラマ
子供大会。低学年の部――決勝戦。超早指し。それはその中で起こりました。それが分かった瞬間、誰もが息を呑みました。

反則――

読み上げられた駒が無いのです。
阿久津主税八段と上田初美女流四段、そして大盤の奨励会のお二人から焦りが見えたことが始まりでした。私も含めて何が起こっているか、会場の人たちですぐに理解されていた方は少なかったのではないのでしょうか。
指し棒を使って、上田先生が9一香車を指されます。
そして、盤上をのぞき込まれました。
この間も対局者の少年二人は熱戦を続けていました。
すぐに袖からスタッフの方が出てきます。

上田初美女流四段が山根ことみ女流二段の読み上げを止められます。
そして、ゆっくりと勝利の方の名を告げられました。
対局者の二人も、わたしたちも何が起きたのか、分かっていません。
会場がどよめきました。

――盤から和服の袖に当たって駒台に行ってしまった香車を、盤にうってしまったための反則。

阿久津主税八段と上田初美女流四段が言葉を選んで解説してくださいました。すぐに対局者の二人の少年は身体が崩れていきます。
泣き崩れるとはこのことだと思いました。
勝った方の少年は畳に俯して泣いていました。
促されてきた大盤解説の前に来ても、二人とも泣きじゃくっています。
涙が止まらない様子でした。

阿久津主税八段
「二人ともお疲れ様でした。(負けた子に向けて)うん、うまく指していただけに悔しい気持ちだと思うけれど……これだけ指せれば結果負けだったけれど、勝ちに近かったね。今日は残念だけれど、これだけ指せるのであればまた次も自信をもって将棋を指していって欲しいです」

上田初美女流四段
「張ろうね」

優しく泣いている子の背中をさする上田初美女流四段。

阿久津主税八段
「泣いちゃうぐらい悔しいのは――わかる。どんな強いひとでも、ミスはあってね。その中でも指し続けてプロになっていくひともいるから、前向きに将棋を頑張ってください」

勝った少年
「僕の負けの将棋だったので、反則で勝ってしまうのは申し訳ないです」

阿久津主税八段
「二人の勝ちたい気持ちがぶつかる名局でした。これからもたくさん指して下さい。これからが楽しみです」

対局者のお二人の良かったところを丁寧に話してくださる阿久津主税八段の言葉に胸が熱くなりました。何より、反則という言葉を使わないで言葉を紡がれているのだと思うと、涙が止まりませんでした。

(勝負ごとだから仕方ないけど…お疲れ様でした! また、いつかお二人の対局を見せてくださいね!)

わたしがそう思えたのも阿久津主税八段と上田初美女流四段のおかげだと思います。将棋界。全部スキです!!


●プロ公式戦――盤上の世界
照明が落ち、静かになります。
豊島将之JT杯覇者と藤井聡太竜王が登場されました。
高みへ。その一局が始まります。
最初に感じたのは豊島将之JT杯覇者の強い強い気配。
明らかに、過去の公開対局ではなかった空気を纏われています。近くではないから直視出来ますが、これは昨年の竜王戦で感じた重力のようなものだと思いました。仁和寺などでもあの圧を感じたことはなかったのです。

(鞘がない刀のようだ)

駒を並べられる藤井聡太竜王も次第に高まっていかれます。

(刃と刃がぶつかり合う)

対局開始。
火花が散る攻め合いが始まりました。激しい斬り合い。そして、一手一手の切り返し。一瞬たりとも気が抜けない応酬が続きます。
子供が走り回る足音、椅子の軋む音など、いつもの対局室ではない雑多な中で対局されているはずなのに此処にはお二人はいないのだ――と思いました。
舞台上ではなく、盤上の――高みに入られているのだと思ったのです。

(ああ、そうか――これが盤上の世界なんだ)

私の中で時間の概念がなくなり、ただただ、盤上のお二人を見ていました。

(このままがいいな)

と、高みから。先に藤井聡太竜王に舞台に戻ってこられたと感じました。

(ああ、これで終局を感じてしまうのはつらい……)

真剣――最高の勝負だからこそ、ずっとみたい。ずっとずっと見ていたい。応援したい。それがどれほど贅沢で恵まれたことなのか、分かっていても望んでしまう。けれど将棋には勝ち負けがある。

間もなく投了となりました。
豊島将之JT杯覇者の連覇となった一局となりました。

その後、表彰式。
豊島将之JT杯覇者が記念撮影に応じられている時でした。

(ああ――もう藤井聡太竜王はここにはないんだ)

藤井聡太竜王は目を閉じて、少し上を向き、とんとんと指でリズムを取っておひとりで盤上の世界に入られいたのです。

(もう、次の戦いに向かって行かれている)

今日は販売ブースで買った扇子の揮毫。
それを実戦されている様(さま)をいま見ているのだと思いました。

万里一空――やるべきことを見失わずに励むこと。


王位戦、叡王戦、竜王戦。そしてJT杯――

華麗で苛烈。熾烈で至高。

藤井聡太竜王、豊島将之JT杯覇者の対局。
今年一年、たくさんの名局をありがとうございました。
また来年の熱戦を楽しみにしております!


●お見送り

豊島将之JT杯覇者のお見送りです。
まっすぐにファンの目を見て答えられる豊島将之JT杯覇者。いよいよ私の番です。
一言ですが、お話しさせて頂きました。ありがとうございました。
笑顔で答えられているお姿が、眩しかったです。


●帰り道
三歳ぐらいの少年とお父さんとお話をさせて頂きました。

「ぼくね、将棋観てきたのよ」
と、将棋のことを語たる少年の笑顔。ぐっと涙を堪えました。
今日の対局も誰かが指した将棋が合ったから繋がった一局。
一局には終わりがあるけれど、また新しい一局が始まる瞬間でもあるのだと少年の言葉にまだ観ぬ、誰かと誰かの未来の勝負への気持ちが高まりました。
新しい子たちが将棋をこれから盛り上げてくれるのだと思うと棋界ごと応援するしかない!!

ええ。将棋界スキ。大好きです!


●最後に

JT杯東京大会は弾丸でしたが行って良かったです。
お話させて頂いた方、ありがとうございました! 次のレポートは今週すぐ書きます。

※誤字脱字など随時直していきます。速さ重視のアップで申し訳ございません。ご参加されていた皆様。会話の順番、記憶違いなどあったら、申し訳ございません! 修正します! ドン!とご指摘くださいませ。

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