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補聴器ハンドブック勉強会ダイジェスト版!♯037

イチから始める補聴器フィッティング読者の皆様、あけましておめでとうございます。
皆さんご存じかと思いますが、2022年1月9,10日に「補聴器ハンドブック勉強会2021年度in海浜幕張オンサイト」が開催されました。

全部で9つの講演と実習が行われ、最先端の検査技術、実耳フィッティングの実践事例や実習、シェル形状のクオリティ評価法、そしてNHKの「みんなの手話」でおなじみの森田明先生による日本手話の文法について等々、盛りだくさんな話題が提供されました。
講演の後には、耳鼻咽喉科医師、言語聴覚士、補聴器技能者の垣根を超えて活発な議論がかわされました。

今回の補聴器マガジンでは、補聴器ハンドブック勉強会の一部をダイジェストでお送りいたします!

※テキストで読むより、動画がお好みの方は、ぜひオンデマンド版をご購入下さい。動画の方が分かりやすいこともたくさんありますよ。

補聴器ハンドブック勉強会 2021年度 オンデマンド | Peatix https://20220109-hochokibenkyokai-on-demand.peatix.com/
申し込み締め切り:2022年1月30日(日)23:59

「聴力検査を再定義する」(中川雅文先生)

中川先生からは、補聴器に関わる様々な聴力検査のうち、耳鼻咽喉科医師、言語聴覚士、補聴器販売店による役割分担が解説されました。

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上記の検査、それぞれ補聴器フィッティングにどうつながっているか、皆さん一目見てすぐに答えられますか?

・インピーダンス検査、医師に依頼する項目。
鼓膜の動きや柔らかさが確認出来る。結果からは鼓膜穿孔なども分かるため、補聴器のターゲット利得に活用する場合も。

・トークオーバー、言語聴覚士が本領発揮する検査。
検査者の顔を見せながら、声を増幅して聞かせるもの。この検査によって、対面で口型の読み取りの依存度を確認することもできるし、クライアントへ口型を読み取ることの重要性を自覚させることもできる。
ただしクライアントの方言、STの出身による方言などの影響で、異聴なのか発声の個性なのかは要注意です。
※クライアントが口型の読み取りを活用してコミュニケーション改善するなら、それは良いことです。

・不快レベル、ノイズ下での検査、語音聴力検査。
これらは補聴器店でも行われることがある検査。不快レベルは補聴器のMPO設定に使われますし、語音聴力検査は補聴器の調整で良し悪しの判断に使われます。

今回の講義での驚きのトピックは純音聴力検査について。
この検査は、どの立場の方であっても皆さんご存知ですよね。しかし、この純音聴力検査、ある神経生理学上の発見によって、その信頼性がゆらいでいるのだとか。詳しくは、オンデマンド動画をご覧ください。

「当事者が求める「ろう者理解」とは」(森田明先生)

NHKにて毎週日曜、午後7時30分から放送の 「みんなの手話」から、森田明先生がご出演下さいました。

テレビでは日本手話で話ができるカフェの店長役ですが、本業は私立ろう学校「明晴学園」教頭先生。小学部の「手話科」で手話言語のしくみやプレゼンテーション、ポエムなどの表現「学習言語」を指導されていらっしゃいます。

60分、講演をお聞かせいただいたのですが、一貫してろう者支援ではなく「ろう者理解」について、熱く日本手話で語って下さいました。(日本手話が分からない方のために、リアルタイムで手話通訳者による音声解説がありました)

ろう者を病理的視点で見てしまったら「ろう者は聴覚障害者であり、聴覚障害は欠陥であり克服すべきもの」になってしまいますが、ろう者の集団で育った当事者たち、少なくても明晴学園の子供たちと大人たちはそんな風には考えません。発想もしません。

文化的視点に立ったときのろう者とは「日本手話という言語をもつ言語的少数者」ということ。
ろう者は、聞くこと以外は聴者と同じ。
音声を使わない代わりに、手話、筆談、空書き、身振りを必要に応じて使い分けるそうで、ある意味では健聴者が音声に頼っているより多彩なコミュニケーション方法を持っているようでした。
コロナ流行でマスクを使っている今の時代、もしかしたら私たち健聴者よりも、ろう者の方がコミュニケーションのストレスは少ないのかも知れません。

この他、手話には文法が無く単語の羅列というのが、まったくの誤解であることも、森田先生による実践と動画で分かりやすく教えて下さいました。
たしかに単語は、手や指、腕を使う手指動作で表されるのですが、文法が無いと思い込むのは手指と腕の動きだけに目が行ってしまうから。実際は、日本手話にはちゃんと文法があり、それは指差し、顔表現、視線、空間利用で表されるそうです。

僕が記憶に残ったこととして、森田先生は健聴者という言葉を使わないんですね。病理的視点よりも、文化的な視点をとても大切にしている現れなのだろうと思います。

最後の質疑応答の中でも、森田先生からは「理解があって、対等であれば、誰とでも(聴者とも)友人になれる」という一言があり、これはしっかり覚えておこうと思いました。

「⽿から始めるヒアリングフレイル予防への取り組み 〜ヒアリングフレイル予防と豊島区モデルについて〜」(中石真一路先生)

2017年イギリスの世界5⼤医学誌「ランセット」に掲載された論文に、⽣涯を通して修正可能な認知症の危険因⼦として、難聴が紹介されました。この論文をきっかけに、様々な組織が認知症の予防として、難聴対策に取り組みはじめています。

難聴と認知症の関係については、まだ諸説あり、賛否両論です。中石先生からは3つの研究をご紹介いただきました。

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