医療機関とは異なる補聴器店でのカウンセリング#007

前回の中川さんのお話は、
「クライアントとの信頼関係の確立なしには何事も上手くいかないんよ。」「B to C のキホンはコミュニケーション。そこをきちんと押さえておくことが大事」
その基盤となるのがカウンセリングスキルなのかな、と改めて認識しなおしました。

ぼく自身も過去のカウンセリングをふりかえると信頼関係を作れなかったがために失敗した経験がいくつもあります。今回は、そんなぼくの苦い経験とそこからの学びを物語仕立てで、皆さんと共有してみたいと思います。

この物語に登場して来るのは・・・

20代イケメンな認定補聴器技能者のヨシ君と、メーカーでマーケも教育も担当し医療機関勤務を経て、現在は補聴器店に勤めるベテラン言語聴覚士マキ姐さんのふたりです。(※登場人物はフィクションです)

ヨシ君は、以前は病院の補聴器外来を担当していていました。もっぱら‪フィッティング‬に専念してましたが、ドクターのヘルプには飽きたらず「ぜんぶ自分でやりたい!」と最近、いろんなメーカー各社の最新式を積極的に取り扱っていてしかも実耳にも取り組んでいるちょっととんがった補聴器専門店に転籍したばかり。でもどうも勝手が違うらしく、補聴器ハンドブック勉強会で知り合ったマキ姐さんになにやら相談ごとを持ち込んできたようなのです。
さて、まずは、ふたりの会話をちょっと盗み聞きしてみましょう。

コント1: こんなはずじゃなかった‪・・・‬

ヨシ君「ご無沙汰してます。」

マキ姐「ひさしぶり、どう新しい職場は。お給料もうんとアップしたんでしょ☺️」

ヨシ君「ええ、増えましたよ。でも先輩、実はぼく‪・・・‬😓。」

マキ姐「なによ、その浮かぬ顔。どうしたの?」

ヨシ君「実は、思ったほどうまくいってないんです。数字も取れなくて‪・・・‬。店長からは、今担当してるクライアントさんとはうまくいってないみたいだし、担当からは外そうか?なんて言われる始末で😭」

マキ姐「え〜〜😵 病院の補聴器外来担当していた時は先生からも評価高くて売り上げだってすごくて、みんなあいつやり手だって話題にしてたのにどうしちゃったの?」

ヨシ君「自分でもなぜかよくわからないんですが、病院の補聴器外来のときとはなにが違うのか、とにかく『患者さん』が自分のことを前みたいにお話してくれないんですよ。」

マキ姐「ふーん、そうなの。」

ヨシ君「ぼくの方からお話させてもらってる時は聞いてくれているようなんですが、そこから先の言葉のキャッチボールがどうも前みたいに上手くいかないというか・・・‬😭
初回の来店にしても、試聴中の感想にしても、必要なことを聞き出そうとしてるだけなんですがなんかギクシャクして前みたいに上手くいかないんです。」

マキ姐「ひょっとして病院の補聴器外来担当じゃなくて店売りメインな会社に転職したの?」

ヨシ君「えっ、なんで分かったんですか?」

マキ姐「それなら、うまくいかないのは当たり前だと思うよ。私だって、お店の中と病院の補聴器外来では接客の仕方を変えてるもの。」

ヨシ君「え、そうなんですか?」

マキ姐「もちろんよ。補聴器店と医療機関では一事が万事勝手は違うものなのよ。だって考えてごらんなさいよ、お医者さんには、権威も信頼もあるでしょ。そんな権威や信頼のある人にはそりゃいろいろ相談できるわけよ。そんな立場のお医者さんと一緒に働いている言語聴覚士や認定補聴器技能者さんっていうのは、つまり、先生のオーラを授かって仕事してるの。だから、話が早いわけ。」
「耳鼻科の先生が説明し、言語聴覚士が説明して、そしていよいよ自分の番というわけだから、患者さんだって何度も同じ話を聞いているうちに、理解が進む一方で聞きたいことも山積してくるでしょ。で、お医者さんの前では言えなかったこと聞けなかったことをさあ聞くぞというタイミングで技能者さんの出番が来るのが病院やクリニックの補聴器外来なの。」

ヨシ君「そういうものなんですか?」

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