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やってみたい、を打ち明けたら。

以前書いた記事の後日談です。
未読の方はこちらから。



2人でいつものように
紅茶を飲んでいた。

夫はスマホで何か見ながら
時々ふふふ、と笑ったりしている。

そんな姿を横目に
わたしはひとりそわそわしながらも
「もう一杯飲もう?」と誘いかけると
「いいねぇ」と言いながらおかわりを淹れてくれた。

愛用の大きなマグカップを片手に
また夫はスマホを手にとる。
頬杖をついてじっとそちらを見ていると
にこっと視線をこちらへ向けてくれる。


「夫くん」
「ん?」

「あの、ちょっとお話を聞いてほしいんですけど」

ああついに。
夫はそんなわたしの思いなどつゆ知らず
「何でしょうか?」と柔らかい笑顔を見せる。

もうちょっと泣きそうなんですが。

「なんかどきどきする!」とわたしは笑ってみせ
ゆっくり、ゆっくりと本題へ入っていく。




かつてあなたは街中で正社員として働きながらも
いつか田舎で暮らし、狩猟をやってみたいという「野望」を抱き
わたしに話してくれた。
今それは少しずつ実現に近づいてきている。

これから話すことも、
あくまでそのぐらい「野望」に近いかもしれないけど
やりたいことがある、と。

習ってみたいことが出来た。
この人から習いたい、と思う人がいる。
遠い所になるのだけれど、なんとかやってみたい。

そんな話をした。






夫はうん、うん、と頷きながら
穏やかに聞いていてくれた。

話が終わると彼は尋ねる。
「それってその先生に会いにいくだけじゃなくて
教わって楽しみたいってことなんだよね」

「うん、そうだよ」

「練習どうやってするの?道具いるよね?」
「練習用の小道具使うんじゃ…?」
「あれとこれじゃ全然やってる感覚が違うよ!昔部活やってた時両方触らせてもらったことあるからわかるけど──」
なんか、アツいぞ。


「俺は何であれ楽器を楽しむのはいいことだと思ってるから──」
「時間合うなら車で一緒に送ってってもいいし──」
「んー…もう早めに広い一軒家でも探すか?」


もう、わたしがチャレンジしようとすることに対して
否定のひの字もないどころか
どうやったら出来るのかを探してくれている。

なんと素晴らしい夫と巡り会えたのだろう、と
天を仰ぎたくなるような気持ちだった。






わたしがなかなか夫に打ち明けられずに
ドキドキしていた理由も伝えた。

夫は優しい両親の元で育っているので
深いところまではよくわかっていないだろうが
聞いていてくれるだけでよかったんだ。
ありがとう。





まだ何も始まっていないけれど
心は一山越えたかのようで
目の前にもまだ山並みは続いている。

それでもなんとか
越えていけるかもしれないって
思った夜だった。











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