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【 価値観と同調・無意識に潜むもう一つの物語 】


友人との空白期間が10年程あった。

ふと思った。
私たちはなぜ空白が?

そして彼女に聞いたが
思いもよらぬ回答が返ってきた。

思いもよらぬ?

いや、違う。

私は、ただ、ただ、別離の理由を覚えていなかったのだ。

別離の理由を彼女から聞いて私は
昔から自分は変わってないのだと実感した。

彼女は直ちに私の気持ちを考えていてくれた。私は考えることすらせず、
忘れてしまっていた。
別離の理由がわかった今ようやく相手の気持ちを考えることができた。

衝動的に生きている。
本音でぶち当たり
それで人を傷つけてしまう。
それでいいと思っていた。

以上は私の物語。

「SECRET」を鑑賞してふと過去に戻り
別離の原因を解明したくなった。

心が震えたのだ。

自分の価値観が正しい
人なそんな思い込みで生きている。
私の経験も自分の固執した価値観にあった。

そして人は同調を求める。

同調者がいることで安心する。
同調者もまた安心する。

人は忘れてしまう。
そして気づかない。
私も気づかなかった。


***

ゲキ集団BumpyBox主宰
圓井寿夫氏は作品をこう語る。

「同調圧力へのアンチテーゼ」


30年ぶりに脚本を書かれたという圓井氏
彼の作品「SECRET」は3つのシーンに分割した短編作品。

登場人物は皆マスクをしている。



そう、今やマスクは生きていく上の必須アイテム。街中どこを見てもマスクをしていない人など見当たらない。

未曾有の緊急事態下の現在を舞台にし、
人が対人下で外すことができなくなったマスクに焦点を当てた斬新な作品
それが「SECRET」である。

「SECRET」の世界は
序盤から違和感に溢れている。

奇妙な不協和音だ。

シーンは学生時代ぶりの仲間と久しぶりに再開するシーンに始まり幕を閉じるのも同じ舞台だ。

あなたにとっての常識はなんなのか?

日本国憲法上の権利の中にあるのか
生命体としての倫理観の中にあるのか
はたまた博愛の元に根を据えるのか

こうでなければならないという
いつから植え付けられたかわからないような常識を人に押し付けてはいないだろうか。
また、そこに同調することで居場所を確保し安全のみを選択してはいないだろうか。

彼ら4人の中の違和感は一体何なのか。

シーン1においてはただただ疑問符が脳に溢れ、シーン2においては疑問を覆いかけるように苛立ちが芽生え、それはシーンが終わる頃にシークレットへの期待に変わる。
シーン3で全てがわかる。

しかしなんとも言えない後味の悪さが心を支配するのだ。

きっとこの後味の悪さが
この作品の狙いじゃないかと思う。

その意思、その正義、その信念
行き着く場所に自分の生き方は見える
しかし相手の生き方は

見えないのだ。

この作品は
あなたの身近にある物語といっても
過言ではないのだから。




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