【命を身ごもり育むということ③】
私の赤ちゃんが、
私のお腹の中で元気に動いている。
胎動。
初めて感じる生命の息吹。
胎動とはどういう感覚なのか、
人によって感じ方が違うかもしれないが、
このころ感じ始めた胎動の感覚は、
下腹で、腸が活発になった時に、感じるお腹の違和感に似ている。
でも腸が動くのとは明らかに違う、と、脳が感じる。
この頃、私は、明らかに精神状態が好転した。
つわりは続いているものの、少しづつ食べられるものが増えていった。
テレビもよく見るようになった。
お昼の30分間のドラマを楽しみにみるようになったり、
2時頃から始まっていた、ソン・スンホン主演の『夏の香り』をよく見ていた。
でもこの頃はまだ一日通してパジャマで過ごし、
家から出ることはなかった。
背中の真ん中まで伸びた長い髪の毛が邪魔で、
どうでも良い感じに一まとめにして、頭の上に追いやった。
8月に差し掛かったころ、蒸し暑い時期の始まり。
旦那さんは、会社が終わると、会社から持ってきた廃材を使い、
庭に囲いを作り始めた。
鉄筋と強度の強いゴム製の柵を組み合わせ、囲いを作り、地面にコンクリートを流してその囲いを庭に囲んだ。そして、正面にはラタンの扉をつけた。
その囲いは犬のため。
チェーンで繋がれている状態を避けたいため、家の庭を自由に動き回れるのを目的にした作業だった。
その作業を、一週間くらい、会社の同僚に手伝ってもらって続けた。
私は、冷たい麦茶とお菓子を用意して、
作業が終わると旦那さんを呼び、それを渡す。
旦那さんと同僚の方は、トラックの積荷に麦茶とお菓子の乗ったトレーを置き、談笑しながら休憩する。
この頃、寝室のクイーンベッドは私一人で使っていて、
旦那さんは、違う部屋にキャスター付きパイプベッドを利用していた。
日中はほとんど私がこのパイプベッドを使っていて、リクライニングを駆使しながら、寝たり横になったり、テレビを見たりなにか作業をしたりしていた。
実はこのころ、私は、姉のハンドメイドのキットをもらって、
くまのぬいぐるみつくりに励んでいた。
私は裁縫は大の苦手だ。
上手くできないから、したいとも思わない。
今まで何かを手つくりしたという経験は、中学、高校の時の家庭科の授業の実習のみだ。
しかし、この頃、私は、お腹の中にいる自分の赤ちゃんに、
何か手作りのものをプレゼントしたいと考えていた。
実はこの頃、性別がわかり始めていた。
この頃行った検診では、
「足の間に何かが見える。」
「男の子かな?」
と言われたのだ。
性別がわかって、なんだか心が躍った。
そしてくまを作り始め、男の子かもしれないということで、
くまの首につけるリボンをブルーで結んだ。
これが当時つくったくまのぬいぐるみ。
お腹の中の赤ちゃんへの始めての手作りプレセント。
今考えると、自分で作ったのが信じられない。
無論不器用なゆえ、縫い目はかなり雑で、見るに見かねる。
だが、私には上出来い思えた。
くまが出来上がったときには、初めて感じる達成感があった。
その後、ビニール紐でつくる、バスケットつくりもやった。
これは、裁縫よりは簡単で、つくるのが楽しかった。
くまが出来上がり、私は、毎日、くまと一緒に寝ていた。
くまと、他にももっていた小さなぬいぐるみを枕元に置いて寝た。
しかし、その2週間後の検診。
性別が確実にわかった。
男の子ではなく、女の子だった。
この頃のエコー写真は、丸くなった背中に、楕円のあたま。
小さな腕と頭のほうまで丸まった足がくっきり写っていた。
これが私の赤ちゃん・・・・。
このころ初めて期待感を感じた。
続く・・・。
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