【 コートの星達に説く人生の授業③ 】
「ママ、先生はね、美術の時間に美術室にある花に水をあげて、金魚に餌をあげるんだよ。そして音楽をかけてくれる。それがすごく好きなんだ。」
もながそう話していた。
部活で先生の指導を仰ぎ、
美術でお世話になり、
いつしかもなは、先生に人間としての敬意と好意、信頼を持つようになった。
もなのその話を聞き、
先生のその姿は容易に想像できた。
先生は練習となると、
その厳しさは学校内では有名だ。
「ママ、練習見に来てね」
そう言われるたびに私は休みの日の練習を見に行くが、先生の怒号が飛ぶようになると、耐えられなくなり、すぐにその場を後にしてしまう。
もなはよく頑張っているな、
私ならすぐに逃げ出している。
そう毎回思う。
厳しいことは百も承知だが、
聞いている方、
見ている方が怖くなってしまう。
しかしチームメイトも、もなもくじけることなく先生に向かっていく。
パワーとバレーボール愛を感じるのだ。
一方練習が終わると先生は、
優しい顔に戻るのだ。
冬は鍋パーティー、
夏はバーベキュー、
保護者とも密に関わり、
保護者一人一人と話をしてくれる。
「もなは背が高いのに腰が低い。いつもすみませんと言っている。」
「もなの良いところは誠実なところ。与えられた課題を真面目にこなすところ。」
子どものことをよく見ていてくれて、
そしてたくさん話してくれる。
その時々の成長を不安な私に話してくれる。
惜しみなくそんな時間を与えてくれるのだ。
自分の娘をこんなによく見てくれている。
親にとってこれほど嬉しくて安心することはない。
朝早くから朝練。
土日も部活。
練習試合、公式試合。
声を大きくコートの外で応援に燃える。
食欲も倍増し、体力も倍増し、
身体も心も強くなってきた。
そして、この一年で、いつしか私が知らないうちに人生におけるたくさんの礼儀を身につけた。
目上の人に対する話し出し方、
電話の仕方、お辞儀の仕方、
言葉遣い。
全部先生から教えてもらった。
親にとってこんなに感謝すべき事はない。
この一年、もなはまさにバレー漬けの一年を送ったのだ。
こんな日々がずっと続く。
今年も来年も。
そう信じていた。
続く…。
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