エリザベスタウン

どこまでも広がる草原とまっすぐ伸びたアスファルトは、どんな可能性も受け入れ、どんな傷心も癒すようにさえ思える美しい景色。

大手靴企業で成功したと思いきや、会社に大損害をもたらしたオーランド・ブルーム演じるドリューは、
ある晩、まさにこの世から去ろうとしていた。
だがその瞬間、姉からの電話。
取り乱す姉の口から出たのは父の訃報だった。
彼は自殺の計画を延ばし、翌日父の住むエリザベスタウンへ向う。
紺のスーツを持って。

父の訃報と仕事上の大損害を胸に何ともいえない絶望感を秘め、飛行機に乗るドリューは、
そこで明るく奔放な客室乗務員のキルステン・ダンスト演じるクレアと出会う。
自分のペースに巻き込みながら話す彼女はとても不思議な魅力を持った女性だった。

エリザベスタウンまでの道を聞き、その飛行機を降りたドリューは車で父の過ごした地へと向うが、
まだ見ぬ父の姿、だがその道のりには父を偲ぶ人々の温かい視線が、
少しづつ心を穏やかにさせていくように感じた。

ミッチ。
彼の父の愛称。
それは誰からも好かれる人物だと飛行機内でクレアは言った。

ドリューが父の過ごした町に来て、人々に触れ、改めて知った。
この町の人々が父を愛し、父もこの町を愛した。

人が人に与える影響とは、計り知れなく、とても重要なものだ。
それこそが人が支えあって生きていると言える。

オーランド・ブルームの自然で静かな心情表現に心打たれた。

そしてこの作品で印象的だったのはキルステン・ダンスト。
素直で明るく、華があってその存在だけで周りを鮮やかにする。
それだけでなく、彼女のこの作品での役柄は、
主人公ドリューに忘れていた何かを気付かせたり、前向きに生きることの大切さを教えるのだ。
眩しいほどに美しい存在と言えるだろう。

ドリューは、クレア の言われるままに行動に移すところなどは少し滑稽に見えるも、
見ているこちらも前向きな気持ちになれる。
それこそが、この作品の込める大切なメッセージなんだと思った。

2005年 米
監督:キャメロン・クロウ
出演:オーランド・ブルーム
キルステン・ダンスト

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