【 コートの星達に説く人生の授業⑦ 】

今日横に並んで
手を取り笑いあっていた人が
翌日にいなくなる。

リンゴの唄を一緒に歌い、
また歌おうね、と言ったのに、
数分後に突然息を引き取ってしまう。

「ずっと続く」と何の疑いもなく思ってしまう。終わりはくるけれど、今ではない。まだまだ先のこと。人間はそういう生き物だ。

終わりが来るのを切に理解している人間にとって、終わりの時期をあやふやに感じながら日々過ごすことは自分の精神を守ることに繋がっているのだと思う。

しかし、逆にそれは時に残酷に、
時に切なく、時に寂しく、
みに突き刺さる。

そう、別れは突然やってくるのだ。

*****

職業柄、生と死が隣り合わせである。
そして今までたくさんの後悔を重ねて来た。
あの時こうすればよかった。
なぜ先延ばしにしたのか。
なぜすぐに行動しなかったのか。

私は出来るだけ後悔したくない。
介護職を初めてもうすぐ10年になるが、
別れの数は数え切れない。

恩師である看護長と出会えたおかげで、
私は自分の人生の中で人との出会いと人との時間の中で出来るだけ後悔しない生き方の実践に全力を注いできた。

しかし、読めない別れに心を痛める。

今日が最後だと思って生きている。
今日できること、大切な人にしたいと思ったことは先延ばしにせずにすぐにやる。

そんな生き方が時には突拍子も無いように見え、自分勝手にも見えるだろう。

職場ではこの10年にいろいろな想いと葛藤があったが、この自分の信念を貫けるようになった。ようやくここ数年で。

それは紛れもなく同僚のおかげであり、
利用者さんのおかげである。
さらには私の愛する家族のおかげであるのだ。

そう、当たり前のことなど
この世には存在しない。

誰かに支えられて
誰かのおかげで生きているのだ。

そして、その誰かがいなくなってしまえば、
「当たり前の生活」などないことに気づく。

コートの星達に、先生は、
こう説いたのだ。

「いいか、人生には当たり前のことなどない。当たり前だと思っていた事は、ある日突然になくなってしまうんだ。」

この言葉は、先生とコートの星達の時間を意味する。

新学年からの先生との練習、
先生との時間、
先生の授業、
先生と笑い会う日々。

この言葉を聞いて、自分の今までの思いに重なり、抑えることのできない涙が次から次へと流れてきたのだ。

続く…。

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