ウォンテッド
*ネタバレあり
本作品の音楽担当のダニー・エルフマンが歌う、クールなメインタイトル、
それだけでも作品に与えるインパクトは十分だと感じてしまう。
弾丸がスローに描く空間の映像は実に斬新で、
登場人物の個性も合わさって最高にスタイリッシュな作品になっている。
テンポが良く観ていて飽きることのない展開には最高傑作を思わせる。
登場するのは、企業の顧客管理担当として、平々凡々な日々を過ごす青年ウェスリー。
口うるさい上司に、常に見下す態度の親友と、その親友と浮気している恋人。
それを暗黙の了解と見て取れる態度のウェスリーは、パニック障害で薬を常備。
平凡な上に自分の思い通りにならない現実に落ち込んでいる。
だがある日、彼の目の前に驚くほどの美女が現れる。
銃手に狙われるウェスリーを守るために現れた彼女の名前はフォックス。
瞬時にして銃弾の飛び交う非常に化したスーパーマーケットで早くも凄腕を魅せる。
何も知らずに銃撃戦に巻き込まれ、真っ赤なスポーツカーに乗せられ、
連れてこられたのは、スローン率いる暗殺組織。
話はこうだ。
1000年前に結成されたフラタニティこそが、
スローンが率いるの暗殺組織なのだ。
フラタニティは、社会の秩序を守るために結成された秘密の暗殺組織。
悪を未然にに阻止するための組織なのだ。
実はこの長い長い歴史を持つフラタニティにウェスリーの父が所属していた。
だが、組織内の裏切り者によって殺害された。
ウェスリーは父の仇をとるため、またフラタニティの王位を引き継ぐために招集されたのだ。
だが何につけても及び腰で、臆病さを隠せないウェスリー。
だが、彼の中には銃手としての潜在能力があった。
言葉を失うほどの耐え難い修行を耐え抜き現実に向き合おうとするウェスリーの思いは唯一つ。
今の自分と自分の置かれた今を変えるため。
父譲りの才能をスローンが見出した通り、
ウェスリーは、フォックスと並ぶ凄腕の銃手になった。
そしていざ、悪を阻止するため、そして父の仇を打つために彼は動き出す。
だが、その先には、陰謀と、逆転が渦巻いていた。
この作品のストーリーは非常に興味深く、はっとさせられる。
スピード感とアクションに彩られた作品の中には、登場人物の意志の強さを随所に感じることができる。
特にこの作品で強烈なインパクトを放つのが、アンジェリーナ・ジョリー。
彼女が演じる、多くを語らない寡黙な女暗殺者フォックス。
真っ直ぐに伸びた黒髪と意思の強さを感じさせるアイライン。
すらっとした腕から手首に流れる単色のタトゥーが独特の個性を語る。
作品序章から早くも凄いアクションを魅せる彼女の存在感は凄まじい。
強さを美しさを兼ね添えた表情に圧倒される。
彼女がフラタニティの一員になった悲しい過去と経緯、
そして、悪へ対する猛烈な憎悪、悪を阻止し、
阻止するという正義を頑なに信じる思いからの躊躇のない行動には、心を打たれる。
悪を未然に阻止するといっても、結局は、人を殺害することにあたる。
暗殺に疑問を感じるウェスリーに彼女が語る言葉が非常に印象深い。
「一人のために何千人の犠牲者が出る場合がある。
何千人を救うためにその一人を消す。その指令を信じて行動する。」
作品中、人間らしい弱さや孤独を一切漂わせない徹底した強さを演じるアンジェリーナ・ジョリー。
だが、彼にそう語り、その場を去るフォックスがうつむく肩越しに決して消せない悲しみを感じた。
ウェスリー演じるジェームス・マカヴォイもまた、変化を魅せる素晴らしいさが光った。
弱気で謝ってばかりの青年が、
強さを余裕を全面に行動する暗殺者へと変わる間の表情の変化にはスカッとした爽快感がある。
この作品のストーリーは非常にシンプルでわかりやすく、
その上テンポが良く、スローが魅力を映し出す映像とクールな音楽効果が抜群である。
陰謀と逆転の中に、正義を貫く切なさが心を打つ、そんな作品だ。
2008年 米
監督:ティムール・ベクマンべトフ
出演:ジェームス・マカヴォイ
アンジェリーナ・ジョリー
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