アトランティスの心

この作品の中で、
アトランティスとは幻の国と表現されている。
子供の頃は、時が過ぎ行く時間も、あらゆる全てのことが輝かしく映る。
純粋に生きるというころがいかに素晴らしいことか。

この作品は、少年と不思議な力を持つ老人の心の交流と、
少年の心の成長を描いている。
原作はスティーヴン・キング。

アンソニー・ホプキンスの置かれた状況や彼の人生、
比喩的な表現がノスタルジックで切なく映る。
それがとても美しい。
スティーヴン・キングの表現ならではの美しさだ。

アントン・イェルチン演じるボビーは母と二人暮らし。
その住まいの2回の下宿人としてきたのがテッドだ。
息子の世話はなおざりで、自分の事を優先に考える母親のもと、
ボビーは、いつからか逞しく育っていた。
それは、この作品のいろいろなシーンから見て取れる。

ボビーはテッドと話すうちに彼に心を開き、
彼を慕うようになる。

いつからか少年の心にテッドはかけがえのない人になり、彼を守ろうとする思いが強くなる。
このような関係は心と心の絆が非常に強く感じる。

テッドは言う。
私には重荷だが人にはそれは能力なのだ。
テッドの不思議な力は、テッド自身にはあるときは苦悩、そして葛藤のもとになる。
テッドに出会った日々は少年の心に大きな意味を与えた。

テッドを演じたアントン・イェルチンの静かな表現力には圧倒されてしまった。
淡々とした演技の中には少年らしさとしっかりとした強さが見えた。
そして、登場シーンは少ないが、とても印象に残ったのが、大人になったボビーを演じたデイヴィッド・モース。
同じくスティーヴン・キング原作の『グリーンマイル』では刑務所の看守役を味のあるその個性で演じた。
この作品でもその優しさと強さがにじみ出る演技が実に印象的だった。
とても素晴らしい俳優だと思う。

人が人に与える影響は多大なものだ。
出会いはその人の人生に大きく関わる大切で美しいものだと感じさせてくれる。

子供の純粋な気持ちは大人になる段階で薄れゆくと思われがちだが、
その基盤となる美しい感情はずっと心の中にある、と私は思いたい。

2001年 米
監督:スコット・ヒックス
出演:アンソニー・ホプキンス
アントン・イェルチン

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