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彼女と私の7年間③最高のおにぎり
今日は、最高のおにぎりを、
つくることができました!
自己満足かもしれない。
そう、わたしは満足です!
*****
私はお昼ご飯を施設で注文してくれるお弁当を食べています。
バランスが良くて彩りが良くて、
そして美味しい☆
施設がほぼ半額負担してくれるので、
200円ちょっとで美味しいお弁当が食べられるのです。
私は毎日、おかずは全部食べるけど、
ご飯は3分の1量食べて、
残り3分の2量を残しています。
残したご飯はラップに包んで、
家に持ち帰ります。
私にとって3分の1量がちょうどいいのです。
とっても美味しいご飯なんです。
粘りもツヤもあり美味しい。
私が残したご飯だけど、
口をつけない内に取り分けてラップするから、残り物ではないです。
取り分けているのです。
96歳の女性利用者さんTさんは、
ある日の14時過ぎ、
ナースコールを鳴らしました。
「はい、どうしました?」
「あのね、お昼をあまり食べなくて、すごくお腹が空いてしまったの。おにぎりをほんの少しでいいから分けてもらえないかしら?」
あいにくこの日は、お弁当のご飯がありませんでした。
でもおにぎりをTさんに届けたい。
そう思い、栄養科に内線しました。
しかし、栄養科に二人いる管理栄養士は、新設の施設に出かけているため不在でした。
なので、厨房のピッチに電話をしました。
訳を説明して、もしご飯が残っていたら、おにぎりをつくって持ってきてもらえないかと頼んでみました。
しかし栄養士が不在とのことで、
おにぎりをつくってはもらえませんでした。
仕方なくTさんにおにぎりができないことを伝え、お煎餅などのお菓子で我慢してもらいました…>_<…
翌日管理栄養士さんが私に内線してくれて、こう言いました。
「昨日はいなくてごめんね。ご飯は使いきってしまうことが多く、お昼すぎると夕方炊くまでないことが多いの。ご飯があれば、おにぎり提供して全然構わないんだけどね。」
Tさんにとって、
ふいの空腹のおにぎりは特別なんです。
以前も夜中、お腹が空いてしまったとき、
Tさんは職員におにぎりがもらえないかと頼み、夜勤の職員は自分用のご飯をおにぎりにして提供したそうで、それがTさんの心に深く残っているのです。
Tさんはいつもおにぎりに希望しているわけではない。
ふいに来る空腹で気持ち悪くなってしまい、
そんなときにおにぎりが食べたくなるんです。
それから私はいつTさんに、ふいの空腹がきてもいいように、お弁当のご飯を残しておくようにしました。
それから長らくして、
今日の15時半頃、Tさんからナースコールがありました。
寂しげで申し訳なさそうにTさんはこう言いました。
「ごめんなさいね、お腹がすきすぎてくらくらしてしまって。」
私はおにぎりが用意できる!と思い、
「Tさん、今日はご飯がありますよ、おにぎりつくれますけどどうですか?」
と聞いてみました。
Tさんは、
顔を上げて、
「本当に?えー、うれしい!いいの?」
と喜んでくれました。
「私のお弁当のご飯なんだけど、大丈夫?私食べきれないからいつも食べる前に持ち帰ろうと思って別にしておくの。口つけてないし。」
そう言うと、
「あなたの分けてくれるの?いいの?本当にいいの?うれしい、ありがとう!」
と言ってくれました。
すぐにご飯を取りに行き、レンジで温ためて、梅風味のお茶ふりかけをまぶしておにぎりをつくりました。
Tさんは熱いお茶が好きだから、
熱い緑茶も添えて居室に持っていきました。
「地獄で仏とはこのことね。助かりました。ありがとう。」
そう言ってTさんはすごく喜んでくれました。
食べ終わり再びナースコールを鳴らしてくれたTさんは、私にこう言いました。
「本当に最高のおにぎりでした。とっても美味しかったわー。お腹が空いてどうしようもないと他人のうちのご飯も欲してしまう。お腹が空くと本当に我慢ができなくて仕方ないものね。気持ち悪くなってくらくらして。助けられました。本当にありがとう。」
私の残りのご飯で、逆に申し訳なかったけど、私はこのおにぎりに、Tさんへの愛を込めました。5年Tさんと一緒にいて、
Tさんにとっておにぎりがどれだけ大事なものだかわかっていたから。
自己満足だけど、
愛情こめてつくりました。
それをこんなに喜んでくれて、
ご飯を取り置きし続けて本当によかった!
*****
お腹が空きすぎると、
気持ち悪くなってしまったり、
くらくらしてしまうことがありますよね。
ご飯の時間に、
あまりお腹が空かずに残してしまった。
それで、次のご飯まで、
空腹で仕方なくなってしまう。
食べたんだけど、
無性に何かが食べたい。
そんなこと、誰にでもありますよね。
そんなときに食べたいものは何ですか?
利用者さんの「そんなとき」に、
利用者さんが望むものを提供したい、
それが私の望みです。
ある利用者さんはチェルシーの飴、
ある利用者さんはおまんじゅう、
また、ある利用者さんはお漬物、
Tさんはおにぎり。
これからもTさんの「そんなとき」のために、ご飯の取り置きを続けていきます。
利用者さんの望みは、
私の望み。
介護福祉士としての私のモットーは、
「今できることを後回しにしない」
「明日はないと思って今日の介護をする」
「利用者さんの望む形を叶える」
きれいごと?
いや、きれいごとじゃないです。
できるんです、
やればできる☆
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