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【命を身ごもり育むということ②】
つわりが酷かったのは
たったの2ヶ月だったのだが、
それが当時の私にっては、長く長く感じた。
ぼさぼさの髪の毛に、何ら構わない格好で、妊婦検診に行く。
検診のとき意外が一切家から出ない。
家から出るといろいろな場所のにおいが気になるのだ。
たとえば、旦那さんが、どこかで、買い物をして戻ってくると、
そのにおいでどこに寄ってきたのかがすぐわかる。
特に、コンビニに寄って帰ってきたときには、揚げ物のにおいが旦那さんとともに家に入ってきて、そのにおいが漂ってくるだけですぐに吐き気を催してしまう。
この頃、頭の中に思い描いて、これなら食べられるかも、あれなら食べられるかも、と思うものがいくつもあった。しかし、その食べ物を前にしてみると、食べるどころか見ただけで吐く。
少し何かを口に入れられた。
そして少し空腹感が満たされる。
だけどすぐにお腹が空いてしまう。
で、食べられない。
この状態にずっとイライラしていた。
「たまごくらぶ」を買ってみた。
でも、数ページ読んで、捨てた。
何ら心は変わらない。
好転しない。
その一方、自分が今までしていた化粧品や、使っていた化学雑巾が気になった。自分の肌に化学薬品が吸着して、お腹の子に悪影響が起きないか、それがとても心配だった。
整髪剤さえ気になり、使うのを辞めた。
***********
ある検診の日。
エコーを撮ってもらい、写真を見た。
妊娠が発覚したときの子の姿は、小指よりも小さな粒状の姿だった。
それが、小さな頭に丸くなった背中がついてきた。
こんなにも体調が悪くなっていく中、
自分のお腹の中で着実に子が、成長している。
今までは、何を考えても、子が生まれてくることに対し、
全く喜びを感じなかったのが、心に小さな芽生えを生じさせ、
何かが変わっていく気がした。
しかしその分、不安が倍増する。
自分の手がお腹に触れただけで、
子が死んでしまうのではないかと心配になる。
寝室も、お腹を守るために一人で寝たいと、旦那さんと別の部屋で寝た。
神経が張り詰め、余計寝たきりになる。
**********
妊娠がわかって、2ヶ月が過ぎようとしたころ、
心の中の何かが変わろうとしていた。
このつわりに打ち勝つなにかを見つけなければと思い始めた。
そんな思いのせいだろうか、少しづつ、順応し始めた。
私は生まれてからそれまで梅干が嫌いで食べたことがなかったが、
梅干が食べたくなって、小梅を食べてみた。
すっぱさと爽快感が、気に入り、その後、梅干ばかり食べていた。
吐く回数は、少しづつ減っていった。
その後、グレープフルーツジュースを飲むようになった。
ジュースが飲めるようになって、今度はグレープフルーツを試してみた。
ジュースよりもお腹にたまる気がした。
夜は、リッツを二枚ほど、と牛乳を飲んだ。
こんな食生活が始まった。
確実につわりが良くなり始めていた。
お腹の中の子に対し、不安が消えなかったが、
この時は、少しづつ精神状態が安定していった。
その後食欲はないものの、吐き気は格段少なくなっていった。
**********
ある日の夜、手を洗うために台所に行き、電気をつけた。
蛍光灯がもうすぐ切れてしまうのか、
台所の電気がカチカチと点いたり消えたりしていた。
蛇口から水を出すと、お腹に違和感を感じた。
胎動だった。
初めて感じた。
お腹の中の子が、自分のお腹の中で動いている。
私のおへその左側を弱い力で蹴った。
妙に薄暗い台所を背にし、部屋に戻り、
尾お腹に手を当てて、しばらく目を閉じていた。
安堵だろうか、そのまま横になってしまい、
しばらく目を閉じていた。
続く・・・。
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