ドリームガールズ

眩しいほどに煌びやかなステージに華麗な衣装、美しい歌声とダンスが繰り広げる絢爛たるパフォーマンスに惜しみない拍手喝采。
これぞエンターテインメントの集大成とでも言える。

この作品は1960年代、デトロイトに結成された、
かの有名な女性3人グループ、シュープリームスの物語を基にした実話なのである。

シュープリームスといえば、ダイアナ・ロス。
彼女がリードとして迎えられてからは、ダイアナ・ロス&シュープリームスとして名を馳せたわけだが、
この作品には、その核心部分が秘められている。

シュープリームスはフローレンス・バラードをリードヴォーカルとする3人組だったのだが、
ダイアナ・ロスの、当時稀だった華奢な体に美しいルックスが目に留められ、
彼女がリードを取り、デビューする事になったという。

この作品はシュープリームスというグルーズ名をドリームガールズとし、
ダイアナ・ロスを基にビヨンセ・ノウルズ演じるディーナ、
メアリーウィルソンを基にアニカ・ノニ・ローズ演じるローレル、
フローレンス・バラードを基にジェニファー・ハドソン演じるエフィとしている。
またモータウンの設立者であるベリー・コーディー・ジュニアを基にジェイミー・フォックス演じるカーティスとしている。

この作品で最も印象的なのは、この作品でアカデミー賞助演女優賞を受賞したジェニファー・ハドソンだ。
この作品で、ジェニファーは、抜群の歌唱力を持ち、グループをリードするヴォーカルであるも、
自分よりも歌唱力が劣るビヨンセ演じるディーナに、
その商品価値としてのルックスのためにリードの座を奪われる、
という複雑な立場を負うエフィという女性を演じた。

自信に満ちたその立ち振る舞いは、
パワフルな否の打ち所のない美しい歌声そのもの。
ジェニファーの体当たりのような、歌を自在に操り自分のものにしてしまうその歌声には圧倒されるばかりだった。
心情をメロディに乗せて訴える、
そのメロディに乗った歌声は魂の叫びのように思えるほど強烈なインパクトがあるのだ。
彼女が歌う『ワン・ナイト・オンリー』は特に印象深い。

彼女はまた、一人の女の子の母親でもある。
作品終盤には母の顔としてのエフィが静かに何気なく表現されている。
それがなんともいえぬ包容力に溢れた母性で観ていて胸がいっぱいになる。

また主演のビヨンセ。
彼女はこの作品でダイアナ・ロスを基にしたディーナを演じる。
控えめな振る舞いや、ステージパフォーマンスはその存在に華を咲かせ美しい。

静かで冷静、華やかな世界にいても時に影を見せる表情が印象的だ。
それが彼女の美しさを更に印象つけているような気がする。

ダイアナ・ロスにインスパイアされた役のせいか、写真撮影、ステージで歌うビヨンセは、
そのルックスがダイアナ・ロスにとても良く似ている。

そしてもう一人印象的だったのが、エディー・マーフィー。
数々のコメディ作品に出演している彼は、この作品では、ソウルフルなシンガーを演じている。
プレイボーイでナルシストなキャラクターをユーモラスに演じるも、
その心情を静かに見せジレンマに襲われ身を崩す役柄を深く表現している。
また彼の素晴らしい歌声とパフォーマンスにはこれまた圧倒された。

ジェイミー・フォックスの常に冷静な態度を保ち自身の信念で前進のみする姿もまた印象深い。
常に名声のその姿勢に生きている姿は頼もしい反面、
人間本来の温かさが感じられず、観ているこちらが切なくなる。

彼は音楽業界でリーダーシップを取るには正しかったが、本来見るべき視点が欠けていた。
それが心だ。
だけど作品中にその心を感じるシーンがある。
それは写真撮影をするディーナに近寄りディーナの髪をふと整えるシーン。
私の主観では、この仕草にカーティスの心を見たような気がした。
このシーンはなんだかとても素敵なのに切なかった。

そしてダニー・グローヴァー。
出演シーンは少ないもののどのシーンも印象深く、
彼の渋い存在感がどんと作品に腰を据えていて見事だった。

さて、この作品は、ステージパフォーマンスがクローズアップされている他に、
普通の場面の所どころミュージカル仕立てになっている。
ミュージカル仕立てで展開されるシーンはどれも作品中重要で、
登場人物それぞれの心情が見事に表現される。
これが実に素晴らしい。

心と心が絡み合う、
葛藤、希望、愛、夢、
その全てが鮮やかにキラキラと光るステージに咲き誇る。

2006年 米
監督:ビル・コンドン
出演:ビヨンセ・ノウルズ
ジェイミー・フォックス

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