お引越し
10月29日(日)
目が覚めるとお昼前だった。
カカオにご飯をあげる。修一郎の食事を用意する。ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげて水を換える。
昨日大きな水槽にお引越ししたルーちゃんは、元気いっぱい泳いでいた。ぷかぷか浮いている流木につかまって遊んでいる。可愛い。
りんごの木の様子を見る。少し庭仕事。
家に入り、契約書に記入しようとすると、カカオが契約書の上で きもちよさそうに寝ている。ぐぐっと引っ張ってパタパタ払う。カカオがちょっと迷惑そうな顔をしている。
まちがえないように、ひとつひとつ確かめながら記入してゆく。捺印。よしっできた。
郵便ポストに入れにいってお散歩しよう。と思い、上着を羽織る。そのとき、
ピンポーン。とチャイムが鳴った。
「は〜い!」と言って出ると、チャイさんと ぷりんさんが笑顔で立っていた。
ちょっとおしゃべり。ごはんさんも庭に出ていた。手を振る。
チャイさんたちは、お家を探していた。今のアパートより広い一軒家を。この近所で探していたが、なかなか見つからなかった。住宅自体が少ないのだ。
そして、家が決まった。
それは、まりこりんの家の近くの素敵な一軒家だった。広くてお庭もある。駐車スペースもある。お店や病院も近くにあって便利なところだ。そして、なんといっても近くに まりこりんのご家族がいる。
最初に話をして紹介してもらってから、とんとん拍子で進んだ。タイミングがいいときというのは、こういう感じなのだろう。
「よかったねぇ。」と言って、ぷりんさんの肩を抱いた。
ふたりとも、とてもうれしそうだった。
ポストに郵便を出しに てくてく歩いてゆく。
チャイさんは車のドライブレコーダーの調子が悪いと言って、ごはんさんに見てもらっていた。あっという間に直ったようだ。
途中で88歳になるWさんに会った。とてもお若く見える。
Wさんと ぷりんさんと、3人でおしゃべり。
ごはんさんは家に帰り、これから出かける ぷりんさんは服を着替えに帰った。
チャイさんがポストまでついてきてくれた。
チャイさんのお隣のバンブーさんたちも近いうちにお引越しをする。もともとアパートは仮住まいで町内の古民家をリノベーションしていたのだ。何年もかかったらしいが、もうすぐ完成だ。
みんなが引っ越すと寂しいかもしれないが、首を長くして待っていたお家が完成したり、ずっと探していた気にいる お家が見つかって本当に良かったなぁと思う。
みんな町内なので、それぞれの場所で楽しく暮らして、ときどき会えるといいな。と思う。
ふと、去年の今頃のことを思いだした。
かぼそい雨が降っている朝、私は傘をささずに庭仕事をしていた。
いつもワンちゃんのお散歩で出会う女性が傘をさしてやってきた。
近くのアパートに住んでいる。
名前も知らない彼女は私よりずいぶん年上。いつも にこにこ笑っている。私がワンちゃんにも「こんにちは。」と、あいさつするたび、その人はケラケラと笑っていた。
その日も にこにこしていた。そして、ちょっと離れたところから、
「来月、引越しするの。」と言った。
「まぁ、そうなんですか。」と、私。
「主人が認知症になって家を改装してたの。完成したから、帰るの。」
そう言って、泣いた。どういう涙なのか分からなかった。
ただ、新しい暮らしが始まるんだな、と思った。
雨が少し強くなってきた。寒くなかったので相変わらず私は傘をささなかった。
泣きながら、「会えてよかった。」と言ってくれた。
私も本当に会えてよかったな。と思った。
見せてくれた彼女のスマホの待ち受け画面は、わが家の黄色いモッコウバラの写真になっていた。
結局最後まで名前を聞かなかったなぁ。と思いながらタオルで髪を拭いた。
ごはんさんがお買い物に行くというので、今日も連れて行ってもらうことにした。
修一郎に話すと、「白菜漬けを買ってきて。」と言った。
道中、ごはんさんが声をあげた。
「何あれ!すごっ。」
「ん?ん?」と言いながら、ごはんさんが見ている方向を見てびっくりした。
生まれてから見た月の中で、いちばん大きな月だった。
びっくりした。たたずまいが太陽のようだった。色もオレンジ色。そして、地平線の少し上にある。
「わーっすごい!すごい!めちゃくちゃおっきい!あの色!あの場所!このおっきさ!きゃ〜すごい!」と、大興奮。
「あの色は、夕日がオレンジ色に見えるのと同じ理由ですよ。」と、ごはんさん。そして、
「いいもの見れましたね〜。」と笑顔。
「うんうん、いいもの見れた。」と、まだ興奮気味の私。
買い物をして帰るとき、行くときに見た月より小さくなってはいたが、それでもやっぱり大きくて まるくて強い光を放っていた。
自然はいつも私たちに素敵な贈り物をしてくれるなぁと思った。
家に帰り着いて、まりこりんと電話で話す。
修一郎の夕食を用意する。
私はお腹が空かないので りんごを食べてホットミルクを飲む。
宮城県のSさんが来月大分に来るので、そのとき わが家に寄りたいということ。なんと、大阪経由で車で来るようだ。すごい。
今日の満月の名前を調べてみると、ハンターズムーンというそうだ。アメリカ先住民によって名付けられたということ。
夜、庭に出る。
輝く月のそばに木星が寄り添っている。ほほえましい。飛行機が ぴかぴかしながら飛んでいった。月の輪がすごく大きくて空がいつもより広く見える。
カカオは ご飯を食べたあと、私のベッドで すやすや眠っている。
今日もいい一日だった。
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