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魔法みたい

9月4日(月)のこと。
ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげて水を換える。

昨晩からアレルギー症状が出ていた。朝、症状が強くなっていた。今月から新しい病院に行く予定だったからちょうどよかった。修一郎の食事を用意して家を出て病院に向かう。道中の緑がきれいでちょっとウキウキする。

初めての病院だ。前の病院より遠く、行ったことのない町だったので、無事着けるかなとちょっと心配だった。まぁ今日中には着くだろう。私はものすごい方向音痴だ。ナビがあってもGoogleマップがあってもなぜか迷う。

ということで、18年前のナビとGoogleマップと両方設定する。なんか時間差で目覚まし時計をセットする気分だ。微妙にずれて音声の案内が聞こえてくる。

途中で、その病院は新しくできた町の中にあることに気がついた。ある地点に来るとナビが黙りこんだ。ずっと沈黙している。Google先生の声だけを頼りに走る。迷ってもそこからまた新しい経路を教えてくれてなんとか到着。ほっ。

新しい病院はとてもきれいで明るくて、先生も看護師さんもみんなとても優しかった。新しい薬をもらった。来週も行くことになった。そして、10月に改めてパッチテストをすることになった。あれこれ検査をしてきたけれど、歯科治療と連携するため もうひとがんばりだ。

夕方家に帰ると修一郎が起きていた。夕食の支度をする。これから眠るというのでお弁当仕立てに変更する。

そのあと、庭に出て水をあげる。ごはんさんが庭に出ていたので葉の色が薄くなったポトスエンジョイを見てもらう。くるっと回っている茎を見ながら、

「新しい葉っぱが出てきているから、ほら、ここ。このままで大丈夫ですよ。色が薄くなって落ちたのは古い葉が落ちただけですね。」

と言ってくれた。ほっとした。

そのあと、シャワーホースで水をあげていると、ごはんさんが

「水道の蛇口を取り替えましょう。」と言ってくれた。

「でも、まだ蛇口買ってない。」と言うと、

「オレんちにあると思います。」

と言って、ピカピカの蛇口を持ってきてくれた。今ついているのとは少し形がちがう。それと ”シール” というものとペンチのようなものを持ってきてくれた。私にはすべて ちんぷんかんぷんだ。

じっと横で見ていると、水道の元栓を止めてから あっという間に新しい蛇口がついた。魔法みたい。蛇口が ぴかぴか光り輝いていた。

「蛇口のお金…。」と言い終わらないうちに

「いらないです。」と、ごはんさん。ありがたすぎる。

新しい蛇口から水を出してシャワーホースでクローバー畑に水を撒く。蛇口からもう水は漏れていない。すごいなぁと思っていると、ごはんさんの逆のお隣のバナナさんが「みるちゃーん。」と言って手招きした。水を止めて駆け寄るとボウルにブルーベリーがたくさん入っていた。

「明日雨が降るみたいだから、今日ぜんぶ摘んだんよ。好きなだけどうぞ。」

と言ってくれた。私はブルーベリーも食べれないので修一郎の分だけ少しもらった。

ごはんさんが道具を置いて戻ってきた。バナナさんがまた手招きした。今度は ごはんさんが「少しだけ。」と言ってブルーベリーをもらいに行った。

明日雨が降るならもう水を撒かなくていいなと思っていると、ごはんさんのお隣の  にりんさんが お酒を片手にやってきた。おしゃべりする。

「みるさん、なんでクローバー畑にこだわるん?」と聞かれた。

「土地がクローバー畑がいいって言ったの。」と私。

そう言ってから『みるさん面白いこと言うよねぇ〜。』といつものゆっくりした口調で言って笑われるかなと思ったけれど、そうとしか言いようがなかった。
すると、にりんさんが真面目な顔で

「そういうことってあると思う。」

と言ったのでびっくりした。うれしかった。

ごはんさんが戻ってきた。ごはんさんの片手にもお酒。ふたりとも気分がよさそうだ。いつもよりちょっと陽気になってる感じ。みんなで話す。

わが家と、ごはんさんのお家と、にりんさんのお家の間には塀がない。三段のブロックが積まれているだけ。なので、私が玄関を出たとき、クローバー畑に出たとき、ごはんさんや にりんさんや ミャウさんが庭に出ているとお互いすぐ分かる。みんな手を振りあってあいさつする。

暗くなって家に戻ると修一郎はまだ寝ていたので先に夕食を済ませる。片付けをして遅れている絵本のラフに取りかかる。

夜遅く修一郎が起きてきて、お弁当仕立てにした夕食を仕事部屋で食べる。

「ごはんさんが水道の蛇口を取り替えてくれたよ。」と話すと、

「ごはんさんが隣にいてくれて本当によかったねぇ。」と修一郎が言った。

本当にそうだと思った。心からありがとうと思った。

眠りにつく前、外に出る。今夜は涼しい秋の空気だ。きもちがいい。星が少し出ている。カカオといっしょに眺める。

今日もいい一日だった。

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