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きれいな三日月だった


11月18日(土)
朝起きると、ピンポーンとチャイムが鳴った。

ぐしゃぐしゃの髪をして、よろよろっと玄関へ。翌日の洋服を着て寝ているので、こういうとき本当にいいな。と、思う。

玄関の引き戸を開けると、風がびゅうびゅう吹く中、お向かいのIさんが立っていた。朝からすごい元気な笑顔だ。

「おはよう!」と、溌剌としているIさん。

「おはようございます。」と、寝ぼけまなこの私。

「あのね、今日廃品回収あるかね?朝、町内放送があったろ。聞き取れんかったんやけど、回収おやすみって言ってた?」と、Iさん。

今日が廃品回収の日だということも、町内放送があったことも知らなかった。

「私、寝てたから放送してたの全然気がつかなかった。」と、私。

「そっか、Tさんが たくさん缶とか出したんだけど、誰も出してなくて。風が強いし、朝の放送聞き取れんかったから、もしかしたら今日は回収お休みじゃないかって心配してて。公民館の電話番号が分からんのよね。」と、Iさんが言った。私も外に出る。

Iさんのお隣のTさんが、心細げにほほえんでいた。

「WEBサイト見てみます。」と、私。

サイトには載っていなかった。
そこへパジャマさんが車で帰ってきた。Iさんと私が待ち伏せする。パジャマさんは車を止めてキョロキョロしている。Iさんが説明して、パジャマさんが公民館長さんに聞いてくれることになった。

Iさんは、私よりだいぶ年上の女性で、とても頼もしい。

以前、宅急便の方がうちに来たとき、

「Tさんの玄関の前に、昨日から荷物が置かれたままなんですよ。車あるんですけど。」と、おっしゃった。

心配になり、Iさんに相談した。そして、ふたりでTさんの家のチャイムを何度も押したり、玄関の戸をノックして「Tさん!Tさん!」と叫んだり、裏に回ってガラス戸を叩いて呼びかけたり、障子の隙間から中を除いて「Tさん!Tさん!」と叫んだことがある。

Iさんは、とてもテキパキしていて冷静だった。私は心配になり、近くに大きな石があったのでそれを指差して、

「ねぇ、窓ガラス割って入った方がいいんじゃないかしら?」とIさんに言った。

「それ、ダメ。」と、Iさん。

そして、しっかりした口調でテキパキと順序立てて、行動した。そのおかげで、数日後にTさんと連絡が取れて、無事だということが分かった。突然の入院だったということ。もうしばらくしたら帰れるということだった。無事だということが分かるまで、車の音がするたびにIさんと私は外に飛び出して出あっていた。

その間に、ごはんさんもTさんのことをとても心配していた。ミャウさんもTさんの気配がないということで何度もポストを見に行っていたということだった。

ある夕方、ごはんさんのお庭でチャイさんたちとおしゃべりしていると、ご近所のYさんがTさんの様子を見に来ていることもあった。説明すると、大きな笑顔になって「よかった〜。」と胸を撫でおろしていた。

みんな心配しているんだなぁと感じて、胸があたたかくなった。

そういうことがあったあと、ご近所の人たちとLINEや携帯番号を交換した。

結局、廃品回収は行われることになった。ので、私もダンボールとペットボトルを回収所にせっせと運んだ。

カカオにご飯をあげる。
ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげて水を換える。

仕事をする。

修一郎が起きてくる。食事の支度をする。

仕事をする。

夕方、夕食の支度をする。

電話が鳴った。Kさんだ。
noteを書いていて、私のまわりに “Kさん“ が多いことに気がついた。
来年の春に行われるイベントと展示の件だった。毎回、朗らかなKさん。お仕事はきっとハードなんだろうな。と思うのだけれど。

庭に出て、りんごの木の様子を見る。風が びゅうびゅう吹いても、紅い実はびくともしていない。しっかりと枝についている。

りんごの木も、クローバーも、クローバー畑を歩いてできた りんごの木までの道もぜんぶ可愛い。ときめく…。

ごはんさんに借りていた傘を返しに行く。今日もお買い物に行くということで便乗する。

帰り道、大きな三日月がすごくきれいだった。

「ここんとこ、月が見えなかったでしょう。オレ、朝3時過ぎに空見たとき、あの辺りの低い位置に月が出てたんですよ。だから、夕方見えないはずだって思ったんですよ。」と、ごはんさんが言った。そして、

「これくらいの三日月だと、その頃、ほんと真っ暗ですよ。」と、続けた。

「そうだったんだ。だから見えなかったんだね。」と、私。

そして、いつものように ”三日月” を歌う。

帰り着いて夕食の仕上げをする。
出かける前に寝ていた修一郎が起きてくる。

今日も ほくほくのカリフラワーを食べた。おいしいなぁ〜♪

片付けて、仕事をする。〆切が今月いっぱいだ。がんばるぞ。がんばるぞ。

夜、庭に出る。
空気が冷たい。そして、ほとんどのお家の灯りが消えていて真っ暗だ。家が夜の色に溶けこんでいて境目が分からない。こういうとき光の力を感じる。色を生みだしているんだなと思う。

星は少し出ていた。可愛らしい煌めき。もっと遅い時間に出ると星がたくさん見えるかもしれない。これから仕事をして、夜眠る前にもう一度出てみよう。と思う。

カカオはいつもの椅子で ぐーぐー眠っている。

今日もいい一日だった。

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