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一生停滞していたい、恋心(麒麟♡タイム/MAPA)

仕事でもタスクでも自己啓発でも、物事が前に進むことはうれしい。
ただ、恋愛においては、ずっと今のままでいることを望む。きのうに戻りたいとさえ思う。

恋愛している時のテンションを振り返ってみると
これは私の場合だけれど、相思相愛であることがわかった時点がピークである。そのあとは落ちていくだけ。

これは、だんだん特別感がなくなるからだと思う。
はじめての誕生日、はじめてのクリスマス、はじめての記念日、はじめての…etc
一度“はじめて”を経験してしまうと、2回目以降はそのはじめての経験を超えられなくなってしまう。”はじめて”の特別感を味わってしまうと、親密度が上がるたびに”はじめて”を超えられない相手にがっかりする。

「きのうのほうがもーっとすきだったなぁーーー」

恋愛における停滞について考えるきっかけとなったのが、
2022年5月24日にリリースされたMAPAの「麒麟♡タイム」より以下のセリフである。

「きみのことがすきです。でも…
きのうのほうがもーっとすきだったなぁーーー」

麒麟♡タイム/MAPA

とんでもねぇセリフなんだが。
成長、発展が大好きな自分でさえ認めざるを得ない停滞への憧れ。
それを突きつけられたような気がした。

関係が深化していくことによって、相手にがっかりすると前述したが
この曲では、停滞しきれなかった自分に対する仕打ちも歌われている。

「到底叶わないあの娘じゃなくて 去年の私みたいな娘でモヤる」

麒麟♡タイム/MAPA

すこし言葉を補うと、これはたぶん恋人に新しい好きな人ができて
その人が自分じゃ到底叶わないような人じゃなくて、今より成長していない「去年の私」みたいな人(この曲を作詞されている大森靖子は日々変化進化する方なので、去年の私より今の私が良いに決まってるでしょ、という前提でお送りしております)でモヤモヤするということだと解釈しているのだが、きっと私だったらモヤモヤ程度じゃない、絶望するだろう。

この歌を聴いて思い出したのが、藤原さくらの「赤」という曲。
この曲にも、自分の好きだった過去の日を繰り返していたい、といった感じで関係の停滞を望む表現がある。
特に2番のAメロが、理不尽でいて、でもそれがかわいくて大好きな歌詞である。

「魔法つかって あたしの好きな あなただけ繰り返していたい」

赤/藤原さくら

ずっと、はないけれど ずっと特別でいたい。

好きな人とは仲良くなりたいのに、
でも親密になっちゃうと好きじゃなくなってしまうから

変わってほしくない
慣れてほしくない
成長したくない

停滞していたい恋心。

「ずっと 出会ってから付き合うまでのあの感じでいよう わかっているふりなんて 100年後もいらない」

出会ってから付き合うまでのあの感じ/SHE IS SUMMER

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