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お粥やの物語 「謙太の出会い」

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理不尽な理由で会社をクビになった謙太と、お粥やとの出会いを描いたお話です。
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2023年9月の記事一覧

お粥やの物語 第2章5-2 「魔法が使えない僕に、シンデレラを救えるでしょうか」

視線を逸らしても、冷たそうな白い足が網膜に焼き付いている。 「靴が見つからないの」という…

ユカ夫
10か月前
9

お粥やの物語番外編 第2章5-3 謙太の呟きと神さんたちの内緒話

【賢者の名言】 「他人のために頑張る人生にこそ価値があるというもの」 アルベルト・アイン…

ユカ夫
10か月前
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お粥やの物語 第3章1-1 「真夜中に、僕の部屋に突如現れた女の子は人間なのでしょう…

息ができない……。 夢にしては、妙にリアルな苦しさだ。 瞼を持ち上げると、目の前が赤色に覆…

ユカ夫
10か月前
9

お粥やの物語 第3章1-2 「いま、僕が見ているものは夢だと言ってください」

忍び足で畳の上を進み、押入れの前に立った。 「怒っていないから、出ておいで」 優しく声をか…

ユカ夫
10か月前
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お粥やの物語番外編 第3章1-3 謙太の呟きと神さんたちの内緒話

【賢者の言葉】 「夢を求め続ける勇気さえあれば、すべての夢は必ず実現できる」 ウォルト・…

ユカ夫
10か月前
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お粥やの物語 第3章2-1「謎に満ちた四人は、僕を食べるつもりかもしれません」

自分の心臓の鼓動を聞きながら、一、二、三と数える。 五十を超えたところで薄目を開けた。 目…

ユカ夫
10か月前
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お粥やの物語 第3章2-2「読心術とは思えません。それなら超能力、テレパシーの類でしょうか」

どうやら、食べられる心配はないらしい。 僕は胸を撫で下ろし、頭の中でデンと鎮座している質問を口にした。 「つかぬことを伺いますが、みなさんは何者ですか?」 「見ればわかるだろう」禿げ頭の老人が、出来の悪い生徒を叱る教頭先生のように言い返した。 見てもわからないから訊いているのだ。 細い手足の割に白髪が多い老人に、禿げた頭をテカらせた肉付きのよい老人、自称女子大生のレオタード姿(時代遅れとしか思えない)の女性、それに妙に着物が似合うおかっぱ頭の女の子。 年齢的に三代続いた家族

お粥やの物語 第3章3-1「あなたは耐えられるかしら? と美女に言われても、頷くこと…

他人の心の中が読めるのは間違いない。 そう確信した僕の前で、女の人が、エアロビのインスト…

ユカ夫
10か月前
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お粥やの物語 第3章3-2 「 助けてください。僕はシンデレラと一緒に火炙りにされて…

遠くで、馬のいななきが聞こえる。 すぐ近くで、ザワザワと何かが揺れる音がした。 足元が熱い…

ユカ夫
10か月前
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お粥やの物語 第3章4-1 「三つの約束を守らないと、僕は地獄に落ちるそうです」

チュン、チュンとスズメの囀りが聞こえる。 遠くで聞こえるエンジン音は新聞配達のバイクだろ…

ユカ夫
10か月前
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お粥やの物語 第3章4-2「苦手なニンジンを生のまま齧ると、強烈な青味と一緒に涙の味…

腕時計を見ると、時刻は午前七時二十分になるところだった。 十分以内に部屋を出ないと、会社…

ユカ夫
10か月前
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お粥やの物語 第3章5-1 「どんなに辛くても、逃げるわけにいきません」

自宅を飛び出して、地下鉄の改札口を通り抜けたところまでは覚えている。 でも、なぜかその後…

ユカ夫
10か月前
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お粥やの物語 第3章5-2 「社員たちの辛辣な言葉は、僕の心を容赦なく抉ります」

建物の入れ口の前に、数人の男女の姿があった。 井戸端会議をするように、顔を近づけていた彼…

ユカ夫
10か月前
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お粥やの物語 第4章1-1 「会社では、完全なスルー状態です」

僕は、誰もいない五階の廊下を、自分の足音を聞きながら進んだ。 昨日まで働いていた部屋の前で立ち止まり、扉を見つめる。 ドアノブを掴もうとしたが、どうしても腕が持ち上げらない。 そのまま二分ほど固まっていると、背後から足音が近づいて来た。 見知った先輩社員が近づいて来る。一礼してから、僕は飛びのくようにして脇に寄り、道を開けた。 先輩は何も言わないまま、扉を開けると部屋の中に足を踏み入れ、僕は反射的に閉まりかけた扉に体を滑り込ませた。 すでに席に着いていた社員たちが、一斉に