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おっさんだけど、仕事辞めて北海道をチャリ旅するよ\(^o^)/ Vol.06 猛威

2024 0625 Tue
 
黒部峡谷鉄道のチケット売り場。観光鉄道に相応しく、対応してくれているのは感じの良い女性です。その方が申し訳なさそうに続けます。
「…一昨日の雨で。…ええ、そうなんですよ」
「(なんて日だ!) ということは、黒薙駅からは一歩も出ることができないんですか?」
「そういうことになります。申し訳ありません」
「(なんて日だ!) いえいえ、それは仕方がないんですが…。アレですかね、自己責任でってことで林道に向かったら、やっぱり迷惑ですよね?」
「…そうですね、林道自体がもう土砂崩れに巻き込まれているので…」
「(なんて日だ!) そうなんですね。…やっぱり黒部は地形が厳しいから…」
「…それもありますし、一昨日の雨は山間部では集中豪雨となりまして…」
「(なんて日だ!) あっ、そうだったんですね…」

なんというか、黒部の自然って、わたしが訪れたなかでも別格なんですよね、完全に。峻険さが段違いなんですよ。渓の深さ、山の切り立ち具合。こりゃ、マジで死にますよね、舐めとったら。


多くの渓流釣り師にとって、憧れの地である黒部の渓。釣り人が言うところの“黒部”は長野側、つまり上高地あたりから入山するルートのことであり、わたしがテント泊しているのは日本海側です。故に、釣りについては全然アレな感じで竿を振る気もなかったのですが、たまたま黒部峡谷鉄道に乗って訪れた黒薙にある露天湯で、こんな情報を入手したのです。
「ここから釣り始める人もいますよ、たまにね」
ウソ? マジ? 本気にしまっせ、オレッちは。

この景色と開放感! 黒薙温泉の露天風呂、マジで死ぬほど気持ち良かったです。わたしは露天風呂が大好きなのですが、いままでで文句なしの1位です。


いえ、わたしも素人ではありません。上流に発電所があり、しかも渓のそこここから温泉が吹き出している。ネットで調べても、出てくるのは発電所より上流のことばかり。つまり、黒薙温泉から入渓しても、釣れないのです。
しかし…。その存在を知ってから、憧れ続けた黒部の渓。『黒部の山賊』も『高熱隧道』ももちろん読んでいます。山岳国家日本。その中でも人を寄せ付けない峻険さにおいてトップクラスである黒部の渓。その渓で竿を振ることが出来るチャンスがあるのです。釣れる釣れないはこの際どうでもよい。黒部の渓を自分の脚で歩き、そして竿を奮ってみたい。その欲求に、わたしは抗えませんでした。

黒部でも無料のキャンプ場に泊まったのですが…。今回の旅のなかダントツで虫系が多く生息していました。こんな鮮やかな黄緑色のカエル、ホントにいるんですね。しかもデカいし!
リュックにくっついていたこのクモ、腹が人の顔みたいでしょ? 面白いから放っておいたら、トレッキング中ずっとくっついていました。


金曜日にその情報を仕入れ、日曜日は大雨予報。というか、もとより土日は避ける方向で考えていました。なぜなら、わたしが予定している黒薙川への入渓ポイントは、黒薙温泉の露天風呂から。人混みが予想される土日にトライするのはマナー的に宜しくないと判断したのです。土曜日は、足慣らしを兼ねて近くの山にトレッキング(あまりの暑さと意外な峻険さに敗退)。
そして日曜日は大雨。月曜の未明には止むであろう雨予報に、わたしの心は乱れました。
いえ、繰り返しましが、わたしだって素人ではないのです。夜明け前まで大雨が降り続いて、しかも黒部のようなV字渓の超本格本流で、釣りになるわけがないのです。というか、そんな日に初めての渓に入渓なんて有り得ないんですな、安全性的に。
しかし、素人ではないわたしは、雨上がりの渓の、もう1つの側面を知っているのです。
“雨上がりの渓は、渓流魚の活性が上がる”
つまり、釣れる可能性が高くなるということなのです。
考えに考えた結果、わたしはしごく当然の決断をします。
“入渓は次の日に延期する”
当然です。下手こいたら死んじゃいますからね。
 
そして迎えた火曜日の朝。冒頭の会話が繰り広げられるのです。

自然を甘く見ると、痛い目に遭います。『高熱隧道』も、基本的には史実に沿っているそうですから。というか、よくこんなところにトンネルを通したと思いますよ、ホント。


ちなみにそのあと、遊漁券を買ったコンビニに行って、訳を話しました。
「もうチケット切り離しちゃったから(システム上)返金できないんですよ」
「(なんて日だ!) ですよね…」
そして、気のいいおばさん店員にいろいろ黒部の話をお聞きし、そして黒部峡谷鉄道の店員さんも話していた“ハイサ”についても教えてもらいました。“ハイサ”とは“排砂”、つまりダムにたまった砂を特殊な排砂口から下流に流すことであり、それを行うと、数日間は渓が死んだように釣れなくなる、とのことでした。

排砂を行うと、水の色がこんな風に砂色になるんですな。こりゃ釣れないよね。


コンビニを後にし、誰もいない道路を走りながら、わたしは声を限りに叫びました。
「なんて日だ!」
 
まあ、アレですよ。今後の楽しみが出来ましたよ。
いつか黒部の渓で、岩魚を釣ってやるぜ! じっちゃんの名にかけて!
 

豪雨にもビクともしなかった我がムーンライト1。まあわたしは漫画喫茶に避難しましたけどね。んで、快活クラブ魚津店はマジでサイコー。あまりに快適なので、計2泊しちゃいました。

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