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✡️❶ 恋煩いのゆくえ-ブラックオリーブ病


❶ ブラックオリーブ病の謎 ー 恋煩いのゆくえ

*ひとめぼれって聞いた*
*うん、そう言っていたよね*
*ひとめぼれってさアレだよね
一目見て恋に落ちるってことでしょ*
*そうじゃん*
*だとしたら、
よっぽど綺麗な人ってことにならない?*
*絶世の美女だって言ってた*
*え〜?ハハハ何いってんの?ウケる!*
*わけわかんねーあれが絶世なんだ?*

**…。え?でも…**
そう言いかけて言葉を飲み込む
この状況では言いづらい(超絶可愛いよね?)

表情を読んで誰かが言う。

*あー、まぁ綺麗なほうだとは思うよ。
けど…言うほどではないよね?*

***え?相当綺麗だと思うけど?***

*はぁ?*
*えぇ〜?*
*えー?*

数人からの不満そうな声!
眉間にシワを寄せて本気で驚いているようだ。
今日の休憩は蜂の巣をつついたような大騒ぎ。
それもそのはず女子達のアイドル…那由多が
「一目惚れをしたから協力してください」
と爆弾発言をしたのだ。

☕️☕️☕️

那由多がアルバイトで入ってきた時
(端正な顔立ちをしている人を初めて見た)
そう思った人は多いはずだ。
曖昧な好みの別れるハンサムでは無く
非常に整った*彫刻のような顔*
それに加えて姿勢や物腰、言葉使い、
どれをとっても育ちの良さが滲み出ている。
上流感というのか。
明らかに周りとは雰囲気が違う。
本人の自分のことを話したがらない所が
より周りの思い込みを強くした。

*絶対ボンボンだよねー*
*でも大学生じゃないでしょ?*
*シフトびっちりはいっているよね*
*浪人生?*
*ただの高卒じゃない?*
*アメリカの大学なら9月入学だよ*
*あー!っぽい。英語ペラペラだしね*
*そういえばこの間の給料日さぁ、
皆に大盤振る舞いしたってー*
*知ってる。
一緒に食事に行った全員の分払ったらしいよ*
*え?すごい多人数じゃなかった?*
*バイト代無くなっちゃうじゃん。
何のためにバイトしてるの?*
*社会勉強とか?親がこの会社系列の
トップの御曹司だったりして*

一瞬の沈黙の後一気に騒がしくなる。

*そっかー!そういうこと!*
*納得〜!*
*有り得るよね*
*どう見てもお金持ちだしね*

次々と肯定の声が聞こえてくる。
皆はようやく腑に落ちたとばかりに
すっかり彼の素性を決めつけてしまった。

女性たちが騒ぐのには他にも理由がある。
那由多は涙もろい。感情を素直に出す。
だが気性が激しい感じはなく
単純に純粋に見える。
少年のような笑顔の那由多は
簡単に口説き落とせそうに見えた。
那由多のシフトの時は、人が余るほどに。
仕事熱心な女性たちが増えた。
誰が玉の輿に乗れるのか?
那由多と付き合えるのか?
休憩中はいつもそんな話で盛り上がる。
そんな日が続いていたところに
那由多が爆弾発言をしたのだった。

☕️☕️☕️

「僕、好きな人が出来ました。
協力してください。何でもします。」
那由多の話しによると一目惚れらしい。
どうやら絶世の美女のようだ。

☕️☕️☕️

(あの子??だったらまだ私の方がマシだわ)

ほとんどの女性はそう思い、そして
それを口にした。

*どうにもこうにも納得いかない。
絶世の美女でなくても構わない。
ただせめて…誰もが認めるほどの
美貌か知性かオーラがあっても良い筈なのに
拍子抜けするほど影が薄い。
ただの普通の人だ。
どういうこと?わたしと何が違うの?*

女性達の驚きが怒りに変わるまで
時間はかからなかった。
納得していない玉の輿候補をよそに
那由多のベタ惚れぶり。
そしてそれに気づいていないかのような
その女性の無頓着ぶりが、
より不快感を煽った。
那由多の居ない所では
わかりやすいイジメが始まり
常に彼女の悪い噂が流れるようになった。

反面…
一部には熱烈に彼女を崇拝する者達もいた。
那由多と同じように絶世の美女だと言う者達。

状況が変わったのは
見かねた役職の一人が
彼女の親衛隊を作ってからだ。
女性達の嫌がらせは仕事全体へと影響が
出はじめていて、
下手に注意も出来なくなっていた。
親衛隊とは表向きで仕事に支障が出ないよう
にするのが目的だった。
初めのうちは…。

☕️☕️☕️

とても目立つアイドルのような男性に
*絶世の美女*と言わせる女性。
そして親衛隊まで出来た。
ただそれだけの事。

だが、それだけの事では無かった。

徐々に周りは
彼女の *美女* である部分を探すようになり、
*親衛隊が出来る程の魅力的な部分* を
探すようになった。

強者の価値観
我々はいつもそれに影響される。

それは彼女に対してだけでは無かった。
*絶世の美女*という強力なワードや
*親衛隊*というワードは
皆を非日常のロマンスへと誘った。

小さかった波がいつの間にか大きくなり
周りの価値観が急激に変わっていく。
最初は笑っていた者達も次第に
その波に呑まれていった。

特に若い男性達への影響と急激な変化は
まるで流行り病に感染したかのようであり、
ひとつの現象として奇妙に見えた。

ブラックオリーブ病
誰かがそう呼ぶようになった。
熟成した癖の無いブラックオリーブ。

何か…物事を達観したような、
ひっそりとした佇まい。
その者達をブラックオリーブに
なぞらえた隠語。

彼らが今、注目を浴びるようになるのは
偶然のことなのか?





🌸🌸🌸
ここまで読んで下さり有難うございました
(❀ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾ペコリ

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