スフォリアテッレ 〜イタリア菓子のお話②〜
今日のイタリア菓子は貝の形をしたナポリの修道院発祥のお菓子スフォリアテッレ!パリパリの食感とオレンジの香りが詰まったフィリングが特徴!
一度食べたら忘れられないのがこのお菓子です。
最初に作られたのは17世紀のこと。
アマルフィ地方の修道院サンタローザで誕生しました。
ある日牛乳で煮たセモリナ粉の残りをどうにか出来ないかと悩んだ一人の修道女が作ったのがこのお菓子。
ドライフルーツやリモンチェッロを加えさらに美味しいクリームをパイ生地に詰めて焼き上げて作ったそう。当時の形は修行僧の円錐型頭巾〝カップッチョ〟を模して作られていました。あまりの美味しさにこのお菓子は修道院の名前からサンタローザと呼ばれるようになりました。
そこから約150年後の18世紀になって、ナポリのオステリアの主人パスクアーレ・ピンタウロが門外不出だったとも思われるサンタローザのレシピを手に入れて、貝の形にして作ったところ大人気となり、ピンタウロはオステリアからパスティッチェリアに看板を変えスフォリアテッレとして販売。現在のスフォリアテッレを伝承するお店となったそうです。
当時のオステリアは宿泊付レストラン。お菓子屋さんへの業態変更とはかなりの商売人魂です。
そんなスフォリアテッレを今回手作りしてみました。
スフォリアテッレの皮はタッピと呼ばれるのですが、蛋白質の含有量が多い粉を使うのでイタリアのマニトヴァ粉を使用。蛋白質14%を超える粉は日本ではあまり販売されていません。あとは水と塩、そしてパイ生地のように層にする為にラードを使います。
まず粉と塩、水を混ぜ合わせよく捏ねてから数時間寝かせたものを何度か折り畳みながらパスタマシンを通して滑らかにし、そこからメモリを徐々に薄くしていきます。
そのあとは手作業で1ミリの薄さに伸ばしながらラードを塗り巻いていくのです。
全て巻けたらラップをして冷蔵庫で一晩寝かします。
そして翌日セモリナ粉を炊いたものを冷まし、グラニュー糖、リコッタチーズ、卵黄を加えてよく混ぜ、最後にオレンジピールを加えて混ぜ合わせればフォリングの出来上がり。
こちらも1時間ほど冷蔵庫で寝かせておきます。
その間にタッピを1.5cmの巾にカットして、手で貝の形の伸ばしておきます。手の熱でラードが緩くなってしまったら冷蔵庫で冷やして行くと良いです。
あとはフィリングを詰めて180℃のオーブンで30分ほど焼けば出来上がり!
少し冷めてからお好みで粉糖をかけていただきます。
早速に私もいただきました。
オレンジの風味がナポリを感じさせてくれ、なんだか懐かしい気分に。
私の人生を変えることになったカンツォーネ〝帰れソレントへ〟にも♪オレンジの香り〜♪って出て来たよなぁって。それでも〝帰れソレントへ〟が作曲されたのは1902年のこと。
17世紀から18世紀は音楽でいえばバロック音楽の時代。
有名なイタリアの作曲家ヴィヴァルディはヴェネツィア生まれだからナポリのこのお菓子は食べてなかったのだろうか?
声楽の道に進む人なら誰もが歌ったことのあるイタリア古典歌曲、もちろん私もたくさんの曲を歌って来たけれど、その中でたくさんの曲を作曲しているのがアレッサンドロ・スカルラッティ(1660年〜1775年)。彼はシチリア生まれだけどナポリに渡り、ナポリでも作曲活動をしナポリで没している。ひょっとして私が歌ったことのあるイタリア歌曲もスフォリアテッレの原型であるサンタローザを食べながらメロディが浮かんできて作曲していたのかもしれないなぁと想像しながら食べていたらお腹いっぱいに!
ホント食べ過ぎ注意のお菓子!今回のイタリア菓子のお話はスフォリアテッレでした。
次回はヴェネト州のお菓子ザレッティを紹介したいと思っています。ぜひお楽しみに!